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第六章 学園都市ブラウディア

第五十六話 深淵の森②

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「ルーザー、下がって。私達だけじゃ厳しい」
「アスハ!みんなを連れて入口まで戻れ!。ここは俺が」
「何カッコつけてるのよ。それよりもみんなで何とかする方法を考えるのよ!」
「三人共落ち着いて!、出来たわよ!上級魔法[アイシクルストーム]!」

 ルーザーを先頭に魔物の群れを相手にしていた4人の冒険者、彼ら[ルーザーシフト]の面々は今日も深淵の森の間引きをしている。

 しかし急に魔物の量が増えて戸惑っていたのだが今しがたエルサの上級魔法によって一掃できた。ハイゴブリンの群れは刃物のようにとがったツララの嵐によって切り裂かれ切れた部位から凍っていった。さながら魔物の氷像の出来上がりである。

「ふ~、姉さん助かったよ」
「お礼はあとあと、上級魔法は時間もかかるし後一発が限度よ」
「エルサさんの言う通り、私達にはここは早かったのよ。入口らへんではぐれを狙いましょ」
「アスハ姉の言う通りだよ」

 ルーザーは今の自分達ならば少し奥でも大丈夫だと思っていたのだが予想以上の魔物の量によってその考えを改めることになった。魔物のランクも上がっているのでまだアステリア人になっていない彼らにはまだ早かった。

「じゃあ入口に帰りましょ」
「ああ、そうだな」
「って後一戦しないと行けなさそうね・・・」

 アスハは後方を見やりため息をついた。とめどなく流れてくるハイゴブリンの鳴き声が聞こえてきたのだ。その声は徐々に数を増やし大きくなっていく。

「姉さん!」
「わかってるわよ![アイシクルストーム]!」

 さっきとは違い広範囲に放ったツララの嵐はハイゴブリンを仕留めていく。しかし残ったハイゴブリン達がルーザー達に襲い掛かった。

「ルーザー、私はMPほとんどないからよろしく」
「ああ、姉さん助かったよ。やるぞ!アスハ、ウスハ!」
「「了解!」」

 ルーザーを先頭に三角形に陣形を取る。

 相手はハイゴブリン、人数は同じ3匹である。

 ルーザーは後方に下がりつつ待ち構える。3匹のハイゴブリンは薄ら笑いをうかべている、ルーザー達が後退している事に余裕を見せたようだ。しかしルーザー達も場数を踏んでいる冒険者である、ただ単に後退していたわけではない。

「ギャギャギャ!!」
「ギャギャ?」
「よし!今だ!」
「は~あっ![パワートラスト]!」
「そこ![ファストスラッシュ]」

 ハイゴブリンの一人がウスハの作っておいた頭一個分の落とし穴に足を滑らした。その隙をついてアスハの力強い突きとルーザーの高速の水平切りが炸裂。

 アスハは胸に風穴を開けたハイゴブリンを、そしてルーザーは首のないハイゴブリンを作った。残りの一匹は戸惑っている所をウスハの矢が脳天に直撃して息絶えた。

「うし!、同じ数なら負けないってーの」
「そんなポーズ取ってないで早く帰りましょ」
「いくらでも湧きそうだしね」
「ええ、早く体拭きたいわ。ルーザー森の入口に着いたら拭いてね」
「「ええ!?」」

 ルーザーは勝鬨を上げてガッツポーズをしていたのだが双子にめんどくさがられてしまった。

 エルサは汗を拭って問題発言を放つと双子は唖然として声を張り上げた。

 兄妹であるエルサとルーザーだから問題はないと思っていてもやはりルーザーにそんなことはさせられないと思っている。

 双子はルーザーに恋い焦がれているのだから。

「そそそうだ!私が拭きますよエルサさん」
「え?」
「そそそうですよ。女性同士仲良く体を拭き合いましょ」
「え?何?どうしたの二人共、・・・・ハハ~ン」
「「・・」」

 双子はついつい墓穴を掘るような事を言ってしまった。エルサはある程度二人の心に気付いていたのだが決定的な証拠がなかったのでそっとしていたのだが今回の事で確信に変わる。

「あ~鈍感な弟でごめんね~。だけど二人が何もしないなら・・・ルーザー、うふふ」
「何だよ姉さん・・・そんなに胸を押し付けてきて」

 エルサは小声で二人に忠告を言った。そしてルーザーに近寄り胸を腕に押し付けている。

「何?ルーザーまさか、実の兄妹じゃないからって私に欲情しているの?。ふふふ」
「「ええ~」」

 衝撃のカミングアウト、そして二人は肩を落とす。実の兄妹ではない事でエルサとのアドバンテージに差がついてしまった。

 自分達よりも長くルーザーと一緒のエルサに勝てる気がしないのだった。

「二人共大丈夫か?とりあえず入口に急ごう」
「「・・・」」
「ウフフフフフ」

 ルーザーを先頭に入口の方へと歩いて行く4人、そのうちの二人は俯いて口から魂が出かかっている。エルサはその姿を見て不気味な笑みを浮かべるのだった。

 そんな[ルーザーシフト]を狙っていた魔物が一匹茂みから今にも4人を襲わんと溜を作っていた。しかしその魔物は一瞬で氷ついた。

 魔物の名はヴァジュラーザ、レリックナイトと同じくSランクの魔物である。ヴァジュラーザは犬のような魔物であり、色は青く目が蜘蛛のような多眼になっていて獲物の動きがスローに見える能力を備えている。

 Sランクの魔物はどれもこれも一匹で町を落とせるほどの戦力を有しているのだがそれが一瞬で倒されている。ライがレリックナイトを仕留めたという事はこちらはレイの仕業であろう。

 レイの[コキュートスブレス]によってヴァジュラーザは一瞬で凍ってしまったようだ。

「ダ~ア~」

 レイは上空から降りてきてヴァジュラーザの体を砕く、するとヴァジュラーザの体から魔石が現れて綺麗な光を放った。

 レイはそれを回収するとまた上空へと飛び上がる。

 ライとレイは魔石を集めてアステリアに貢献しているのだった。
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