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第六章 学園都市ブラウディア

第二十九話 ご立腹

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「お前いいと思ってるのか?」

 僕とエルダートレントの会話に割り込んできた少年が叫んだ。彼はまだマナで覆ってるので身動きはできない。

「いいに決まってますよ。だって話せばわかる魔物でしたもん」
「どの口が言ってんだ?最初魔法を撃たれてたじゃねえかよ。だから俺は反対したんだ」

 あら?最初から見ていたのね。僕はこの人を知らないけどたぶん桃花会の事を言ってるのかもしれない。

「先輩は桃花会の人なの?」
「あ?そうに決まってんだろ。じゃなきゃここにいねえよ。エンカを負かしたって聞いたから期待してきたら甘々ちゃんじゃねえか、ったく」

 身動き取れないくせに偉そうにする少年。髪はブロンドで背にはにかわしくない戦斧を背負っている。

「それで?この後はどうすんだ?あいつらはこのまま放置するのか?」
「うん、だってダンジョンを案内してくれるって言うんだよ」

 僕はこの世界にダンジョンがある事を初めて知って浮足立つ。屋敷にあった本にもそんな情報が無かったので新発見でドキドキしちゃった。

「ダンジョンが珍しいってお前、田舎者だな。それよりも早くこの拘束を解けよ」

 少年の要求を聞き入れて僕はマナをしまう。すると少年は僕に切り掛かってきた。

「欲求不満なんだよ。お前を切らせろ」
「そうですかって切らせる人はいないよ。桃花会の人にもこんなに素行の悪い人がいるんだね。お仕置きしてあげるよ」

 少年の戦斧を掴み天に掲げる。少年はすぐに戦斧を手放すと僕に火炎放射器のような[インフェルノブレス]を放った。

「本当にエンカの言った通りだ。すげえ丈夫、手を出すなといったのはこういう事か」

 僕は風を受けるかのように火炎放射を浴びると少年は喜んでる。

「どんな攻撃でも大丈夫なんだろ。じゃあ今度はアブッ....」

 [ヒーリングプニプニ]発動、こんな危ない人の相手はしたくないから先輩だろうがお腹の餌食さ。

 全く、エルダートレントが寛大だったから良かったけど、本当は攻撃されても仕方ない状況だったよ。仲間を燃やされたんだからね。

「ジーニちゃんこの子埋める?」

 フローラちゃんはそう言いながら穴を掘り始めた。

 ちょっとちょっと発想がヤの人みたいになってるよ。僕はそんなことしないよ天使だもんね。

「砦に置いて行こうか。何だか連れて帰ってもめんどくさい事になりそうだもん」
「じゃあジーニちゃん帰ろー」

 少年を浮かせてフローラちゃんの手を取り空を飛んでいく。

 結局この子は名乗りもしないで攻撃してきたね。

 エアリアさんに聞けばわかるかな。







「[鴉]の4人がやられたか」
「ええ、六から一は別の任務に出ています。当分は派遣できないと思われる」
「そうか、しかしジーニの周りの者達も強いとは。続けて調査して穴を見つけるのだ」
「畏まりました。ザライノフ様」

 エグバンの街のエグバン城の円卓の間にて声があがった。返事をした男はすぐに部屋をあとにし調査部隊へと連絡を入れた。

 [鴉]のような精鋭は送りこめないが雑魚は送り込める。情報を得るのに強さはいらない。
 
 グラーフ・ザライノフは不満顔で腕を組み椅子に座りなおした。

「[鴉]に資金を回すのはやめるか?」
「ザライノフ様それは早計かと」
「しかし、何の成果もなくましてや寝返るなど」
「報告では呪いによる忠誠らしいので彼らには問題はなかったはずです」
「馬鹿者、暗殺者が見つかるだけでも問題なのだ。それも精鋭が4人もまんまと捕まっているのだぞ。金の無駄といわずに何という」

 グラーフの言葉にぐうの音も出ない部下の男は汗を掻いて俯いた。ガタガタと体を震わせる部下は今にも倒れそうになっている。

「これ以上の失態は許さんぞ」
「は!はい~」

 叱咤された男は部屋から一目散に逃げ出して扉を強くしめていった。

「全く、部下に恵まれんな。そして息子にもな、あのような子供を私も欲しいものだ」

 ジーニの情報がかかれた書類を見て呟く。

 グラーフは自分の息子を傷つけられたという大義でルインズガル大陸と戦争を起こそうとしたのだがジーニの情報を調べると恐ろしい事がわかったのだった。

「まさか、Sランクを越える存在が現れるとはな。迂闊に手は出せんがエグバンの沽券にかかわる。しばらくは様子を見るが次には必ずエグバンの恐ろしさを思い知らせてやる」

 グラーフは高笑いを円卓の間に響かせた。






「エアリアさ~ん」
「あら?ジーニ、もう戻ってきたの?」

 学園に戻ってすぐにエアリアさんを探してトレントの事を報告、ついでに少年の事を聞いていく。

「トレントは倒さなかったのね。それに無用な伐採とトレント狩りの抑制、これは冒険者ギルドと要相談っと。それでブロンドの少年、って事はアルベルトかしら、彼は戦闘狂だからね。でも悪い子じゃないのよ」

 エアリアさんは擁護してるけど魔物は全部狩っていいっていう考えはどうかと思うよ。僕はちゃんと食べる為に狩ってたのに彼は違う、戦闘事態を楽しんでた。

「これから気をつけた方がいいわよ。彼はあなたを狙うはずよ。よかったわね」
「ええ~」

 エアリアさんが不敵に笑ってる。でも何だかエアリアさん怒ってる?

「エアリアさん怒ってる?」
「・・いいえ全然怒ってないわよ」

 エアリアさんは否定してるけど眉がヒクヒクしてる。僕何かしたかな・・・。

「僕何かしちゃいました?」
「だから怒ってないって言っているでしょ。授業はみんな終わってるわ。早く帰りなさい」

 僕の疑問には答えてくれないエアリアさんは僕に帰るように促して来た。やっぱりなにかしちゃったみたい。

「ごめんなさい、エアリアさん・・・ではまた」

 ヒラヒラとエアリアさんは不満顔で僕ら手をふって見送ってくれた。僕は何をしちゃったんだろう。




「帰ったか?」
「ええ、全くあの子ときたら」

 部屋の奥の扉からエンカが入って来てエアリアに声をかけた。エアリアはため息をつく。

「トレントを全員始末しないとはな」
「ええ、でも追い返したのだから今回は良しとしましょう。それに彼ならダンジョンに入れるみたいだからね」
「俺達の目的通りではあるか」

 桃花会はダンジョンに潜りたかったようだ。そして意図せずに守っていたエルダートレントを始末しようとしたようだが失敗に終わった事でぐちをこぼした。

「まあ、いいんじゃないか?これで生徒達もレベルが上がって。街の強化につながる」
「そうね。グロリア様の為に」

 エアリアの思考はすべてグロリアの為である。それ以外の考えは微塵もない。





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