異世界転生！ハイハイからの倍人生

第五章 兄妹の絆

第八話 ツヴァイとライの訓練

　我獣の戦いからしばらくしてアステリアではツヴァイとライの訓練が執り行われた。これはジャンヌが、経験者から学んだ方がいいと思いツヴァイを引っ張ってきた結果である。

　ツヴァイはツインディアを取り出し本気の様相である。

「息子でも俺は本気で行くぞ。どうせジャンヌにパワーレベリングされてるだろうからな」
「バブ！」

　ライは右手にショートソードの片手剣、盾はもっていない。しかし四つん這いで剣を持つとはあまり言えないような気がする。

「冗談みたいな試合だな。しかし先に仕掛ける！[スラッシュ]」

　ツヴァイが先に動いた。速さを重視するツヴァイはいつでもカウンターを取れるとふんだのだろう。しかし横なぎの飛ぶ斬撃[スラッシュ]は空を切る。そしてツヴァイの側面から同じ[スラッシュ]の斬撃が襲ってきた。

「うお！？何だ、何で横から！」
「バブバブ！」

　今まで確かに正面にいたライ、いつの間にか横に回り込んでいたのだ。そしてツヴァイの剣技を見て使ってきた。[剣王]のスキルは確かに有能だが技を知らなければ使う事はできない。ジャンヌはそれも考えて今回の訓練をツヴァイに持ちかけたのだ。

「どうなってんだ。しかし親として負けるわけには[身体強化]！」

　ツヴァイは魔法による身体強化を施しライに迫る。

「バブ！バブ！」

　ライは膝立ちの状態でツヴァイの剣戟を捌く、しかし後退できない状況ではきついらしく飛び上がった。

「ライ！、戦闘中にはあまり飛び上がるな！、出ないとこうなるぞ！[スパイラルブリット]！」

　アルスも使った剣技[スパイラルブリット]がライを襲う。螺旋を描いた斬撃をみたライは同じ斬撃を放ち受け止める。

　ツヴァイは唖然としていたがすぐに正気を取り戻しライの着地を狙って動いた。

「あとは着地だ。飛び上がると二回攻撃されるチャンスが出来ちまう。だから戦闘中は飛び上がっちゃダメだ！[スラッシュストーム]！」

　ツヴァイはライの着地するエリアに無数の斬撃を放つ。[スラッシュストーム]は斬撃の嵐。辺り一面に斬撃のあとを残した。

　砂埃が舞う中ツヴァイは気配を消した。そしてまだ"無傷"のライの背後に回り[スパイラルブリット]を放つ。

「どうだ、今のは手ごたえが....って。負けだ負けお父さんの負けですよ」
「バブバブ～～」

　確かに王手を取ったと思ったツヴァイだったがライはツヴァイの背中に剣先を突きつけた。砂埃の中ツヴァイに回り込まれ[スパイラルブリット]を確かにくらったライだったが擦り傷程度の傷をおって、すぐに動きツヴァイの背後に気配を消して回り込んだのだ。

　何とも恐ろしい子供だろう。そう思うツヴァイだったが同じくらい誇らしく思った。なんせ自分の子供達なのだ嬉しくないはずはない。

「ライ、お前は強いな。俺も頑張んないとな。言葉遣いを冒険者の時のようにしても昔には戻れないか....」

　ツヴァイは自分の弱さに涙を流すが子供達に励まされ屋敷にとぼとぼと帰っていった。

　ツヴァイはジーニに助けられてから自分の弱さを呪った。そして昔のような強い自分を取り戻そうと思って一人称を俺に戻して頑張ったのだ。しかしジーニ達に勝てるはずもない。

「メリア、俺は弱いか？」
「うんん...。あなたは強いわ。誰よりも」
「しかしライにすら勝てないんだぞ」
「ふふ、あの子達は特別なのよ。たぶんジーニの御業だわ。あの子、私が衰弱していた時に毎日会いに来て暖かい魔法を私にかけていたの。その影響であの子供達が生まれたのよ。ジーニったらおかしいのよ。魔法をかけているのがばれてないと思っていたのだもの」
「はは。それは面白いな。...そうか、あの時にそんなことが」

　メリアの膝枕で落ち込むツヴァイにメリアは励ましの言葉をかけた。

　メリアの考察はほぼほぼ正解である。メリアに魔法で元気づけたジーニだったが更に力をつけていき魔力をばら撒いていたのだ。最近では制御して[マナパック]などと言っているが昔はそのまま垂れ流しであった。その影響が出たのがジャンヌである。彼女は全精霊に愛された子供として生まれたのだ。特別以外のなにものでもない。

「俺もジャンヌのパワーレベリングに参加するか....」
「ふふ、それがいいわね。私も行こうかしら、最近太っちゃって」
「おいおい、それ以上綺麗になってどうするんだ」

　ツヴァイは上体を起こしてメリアとおでこをつけ合い笑った。ツヴァイの気持ちは前向きのものになっていく。

　ツヴァイとメリアの夫婦仲はとてもいい傾向である。更に子供が生まれるのも近いかもしれない。

　もしかすると英雄の子を１ダース保有する王国になってしまうのではないだろうか。

　ジーニとジャンヌが子供達を教えていくのであれば心配はないだろう。