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第五章 兄妹の絆

第二話 ライとレイ

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「ダ~ダダダ」
「ブ~バブブ」
「ダダダダ~?」

 ここは深淵の森最深部。何故かこんな危ない森に赤子が3人。赤ちゃんにしかわからない言葉で話し合っているその姿はとてものほほんとするが...。

「ガウ?ガウガウガ」
「ワウ?ワウワウワ?」

 コクエンの子供達も集合して一緒にパワーレベリング中である。そしてその周りには死屍累々。

 最初の被害者は前と同じハイゴブリンであった。

「ギャ?ギャギャギャ~」
「バブ?」

 おとりとして一人放置されていたライに気付いたハイゴブリンはとても喜んで近寄っていったのだ。そしてそのままかぶりつこうとした時。

「アギョ?」

「ビエ~ン...」 
「ダダダ~」

 ライは泣いてしまった。目の前でゴブリンの顔がはじける姿を見せられているのだから泣いちゃうよね、しょうがない。

 ゴブリンを潰したのはおなじみの木の巨人である。こんな感じで囮が変えられるだけで同じことを繰り返している。この世界の経験値の分配は敵のターゲットになった物ももらえることになっている。なのでライとレイを代わる代わる囮に使っているのだ。

 ある程度繰り返した時にライとレイがジャンヌに抗議を始めた事で今に至る。

「バブ!バブバブバ~」
「ダ~ヨ!ダ~ダダ~」
「バブバブバ~」

 何とも微笑ましいが内容はこうだ。

「何で僕らばっかり囮なの!。お姉ちゃんもやってよ」
「私はもうレベルアップしているもん。ライとレイだけやればいいのよ」
「姉ちゃんの嘘つき。精霊で倒してるからお姉ちゃんにも入るじゃない」

 といった感じでライとレイは不満をもらしていた。ライとレイもジャンヌのように特殊な能力を持っているのだがジャンヌやジーニほどの物ではない。なのでレベル上げは必須である。

 そう考えたジャンヌはいち早くライとレイをパワーレベリングすることにしたのだった。今でも十分レベルは上がっているのだがジャンヌはジャンヌ自身やジーニを見ているのでまだまだ足りないと二人を説教していく。

「ダダダ~(ジーニお兄様に追いつくにはこんなもんじゃ足りないのよ。私達はジーニお兄様を支える大切な柱なんだから)」
「バブバババ(そんな事言っても僕じゃ)」
「バブブブババ(ライは弱虫だものね。しょうがないわよね)」

 ライはとても気弱である。そしてレイは気が強い。しかしライの方がお兄ちゃんなのでもっとしっかりとしないと。
 
「バブ(どうせ僕なんか)」

 ライはまた泣き出してしまう。しかし普通の子供ならばゴブリンなどを目の前でみたらとてもじゃないがまともでいられるはずもない。

「バ~ブ(もう、なんでお兄ちゃんは....ジーニお兄様を見習ってほしいな~)」

 兄妹たちはジーニの武勇伝をメリアお母様から聞いている。なのでみんなジーニを慕っているのだ。そしていつの日かジーニと肩を並べてこの世界を良い世の中に変えようと誓って、レベリングを実行していく。

「バブ(僕だってもう40レベルだよ。もう大丈夫だよ)」
「ダ!ダダダ!(何言ってるの!まだまだ普通の達人にも負けるレベルよ!少なくとも100レベルはいかないと!)」

 ライの弱音に鬼軍曹のジャンヌがまだまだと説得していく。ライは涙と鼻水で顔がグチャグチャである。

 そして強制的ともいえるパワーレベリングは実行されて行く。

 この深淵の森はとても優秀なレベル上げ場所である。しかし通常の冒険者では入るまでに一苦労である。

 アステリアからの入口にはBランクの魔物が軽く5匹は目視できる。そして中に入っていく、するとマナだまりがいくつも見られる。そのマナだまりから魔物が湧くのだがその湧く魔物はC~Aランクといったメンバーである。ジャンヌ達はそんな所でレベリングをしている。最強の精霊たちを持っているジャンヌにとっては最高の場所であった。

「ダダダ?(ライはそろそろ剣を使って一人で戦ってみなさい)」
「バ?バブバブ!(え?無理だよ無理~あんなコワイものと一人で戦うなんて)」

 ライは手を顔の前で交差して×を表現した。しかしジャンヌは風の女神から剣を受け取りライに渡す。いやいやしていたライだったがライは剣を取ると湧く魔物を一人で狩っていく。その姿はまさしく星戦争の緑のお爺ちゃんの動きだった。これはジーニを彷彿とさせるモノだ。

 ライは[剣王]のスキルを所持している。ジーニ達と比べるととても弱いものだが剣に関しては右に出るものはいなくなるほどのスキルである。今もそれを体現するようにゴブリンやトレント、またまた泥人形の魔物のドロンゴを引き裂いている。

 さっきまで怖がっていた赤子とは思えない動きで最後の一匹を屠ると力なくその場に座り込んで泣き出した。

「ビエ~ン!!」
「バブバブ~(よくできました~。流石お兄ちゃん、まるで映画見てるみたいだったよ)」

 レイは優しくライの頭を撫でている。しかしその姿は姉の様相であった。そして今度はレイの出番である。

「ダダダ~(はい!レイにはこれね)」
「バブ~(ハ~イ、私のスキルなら楽勝よね)」

 レイは余裕でジャンヌから渡された杖を振り回している。そして魔物を見据えると無詠唱で魔法を無数放っていった。

 レイは[多重キャスト]のスキルと[無詠唱]スキルを所持している。これだけではまだまだ[剣王]よりも劣るものだが更に[杖の女王]のスキルも持っているので魔法が凄い事になっている。

「バブ![ファイアボール]×5」

 魔物に向かってジーニの魔法のようなフェニックスが襲う。魔物は一瞬で炭になり消えていく。6属性の魔法を全部使って見せたレイは得意気にジャンヌを見やるとジャンヌはレイの頭を撫でてあげている。とてもお姉ちゃんしているジャンヌであった。

 こうしてジーニの兄妹たちは逞しく成長していく。そしてジーニの留守のアステリアやルインズガル大陸を守護していくのだった。








「ふふふふ、大量大量、とってもいい素材達だわ~」

 ここはヘンダークより北の墓地、アダマイオスと一緒にアステリアを攻めようとした死霊術士、オークレが不敵に笑いながら墓地に討ち捨てられたヘンダークの元幹部達を掘り起こしている。

「これだけあればキメラも思いのまま、オークキングはうどの大木になってしまったし。怨念を持ったこの子達なら生きている時よりも多くの人間を葬り去る事ができるわ~」

 オークレは歓喜の舞を踊る。その間もゾンビ達が死体を掘り起こしていく。そのゾンビの中にはあのアダマイオスだった死体もあった。

「ふふふ、アダマイオスもいい感じに怨念を帯びてきたわね。ふふふ、恨みはないけれどアステリアの子達を私の配下にしたいのよね。だからこの子達に頑張ってもらわないとね」

 オークレは着々とアステリア攻略の為の軍を作っていく。

 死霊術の怖い所は配下にした死体をいつでも地面から召喚できるところである。

 ジャンヌ達がいかに強くとも油断してはいけない。アステリアの者達には弱いものもいるのだ。

 ヘンダークの墓地に死体が一つもなくなり一人の女が去るのが確認された。しかしだれも気にはしなかった。自分達を迫害してきた者達の死体などどうでもよかったのだ。

 またここに戦の種火が
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