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第四章 ルインズガル大陸

第三十三話 漢のロマン

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 僕らは元族長の部屋に泊まることになった。面接で賢者を探す手間も省いたつもりなんだけどそれらしい人はいなかったから調べています。そして僕らはドーザの書いていたであろう日記を見つけてしまう。

「....最低最低と思っていたけどここまでとはね」

 その日記は褒められる物ではないものだった。

「毎日毎日別々の女。そして外へと獣人を売りつけて贅沢三昧。更に人種の奴隷の買い付け....」

 獣人は人種よりも子供ができにくいと言われていた。だがそれは女性の話である。女性は人種を使えば簡単に身籠るらしい。

 種族繁栄の為に人種を使い増やしていって、更にそれを売っていく。苛立ちすぎて頭が痛いよ。

 人種もそれほど素晴らしい事をしていないけどこの町は外と隔離されている為こんなことが横行していたんだね。

「ジーニ様お話ししたいことが!」

 僕が頭を抑えてため息をついているとドルザ君が話があるみたいで僕を呼んでいる。

「どうしたの?僕はこの日記の事で君に聞きたいけど」
「あ、その日記ですか....そんなことよりも賢者の事ですよ。探しているんでしょ?」

 おっと日記から探ってみようと思ったけどドルザ君がなんか知っているみたい。

「西の方に離れがありまして。そこに住んでいた獣人が海を渡りガザードにいたと親父が言っていました」
「やっぱりドーザは知っていたんだね」

 僕はため息をつきながらドルザ君が案内してくれるという事で夜も遅いけど向かうことにした。フローラちゃんは眠ってしまっていたので家に置いて行きます。

 しばらく歩いているとそこには小さな小屋と塔が建ってた。ドルザ君に小屋の鍵を開けてもらい中に入ると嫌な感じがした。

「何だか不思議な感じだね。賢者がいたっていうのもうなずけるかも」
「そうだろうな、馬鹿が!」

 ドルザ君の口調が強気な物に変わった。そして小屋が光だした。

「はは!、やってやったぞ。どうだ!これでお前は出られないだろ!!」
「え?ああ、なるほど....確かに頑丈そうだね」

 光の壁をつんつんつついてみるととても固い感じ。ドルザ君はとても愉快な顔で僕へと暴言を吐いて行く。

「へへへ、あの女はもらっておくぜ。それにモウザの奴もぶっ殺してやる。俺の部下達は俺についてくるはずだ。俺も親父のように甘い汁をすって生きていくんだ!」

 とても身勝手な発言をするドルザ君。ロクーデの言っていたことを思い出すね。確かにこういう輩は死ななくちゃわからないかも。

「へへ、じゃあな。死ぬまでこの小屋に居やがれ!」
「ここには居られないよ。だってやる事はいっぱいあるもの」

 僕は天雷の剣をアイテムバックから取り出すと光の壁を切りつけた。鉄の堅さの光の壁はまるで水に触れているように抵抗がなく裂けていく。

「そんな、馬鹿な!あの賢者の奴も抵抗出来ずに死んでいったのに。くそ!」

 ワナワナしながらドルザ君は塔の方へと駆けこんでいく。僕は小屋を見渡した。そこには変わり果てた鳥人の死体があった。さっき言っていた賢者の物だろう。僕は祈りを捧げてドルザ君を追いかけた。

「確か塔の方に行ったよね」

 小屋を出て塔を見上げる。マンション5階位の高さの塔。塔にしては横幅がでかいような気がする。

「はっはっは、まさか結界が効かないとは思わなかったが俺にはこれがある。賢者の野郎から奪いとったこれが!!」

 ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!

「何だ?」

 ドルザ君が喋り終わると地面が揺れ出した。そして塔が変形していく。

「わ~、わ~!!。カッコイイ~~~」

 なんと塔が人型のゴーレムに変形していった。僕は目を輝かせてそれを見る。賢者って凄いな~。こんなものを作っちゃうのか~。あの賢者さんには生きているうちに会いたかったな~。

 僕が感動してゴーレムを見上げていると無情にもゴーレムの拳が僕へと振り下ろされた。

「ははは!これでお終いだ!。どんな奴でもこれには勝てねえ。賢者の野郎が戻ってきた理由だからな。戦争利用しようとする奴に狙われて帰ってきたらしいが俺がもっといい事に使ってやるぜ」

「ふ~ん。なるほどね。確かに戦争に利用すれば負ける事はないかもね」
「何!」

 僕はゴーレムの拳を両手でガードしていた。地面はおもさに耐えられずに陥没したけど僕はまだまだ余裕だよ。

「何なんだよお前はよ。なんでこいつの攻撃に耐えられるんだよ」
「う~ん。何でって言われてもね。だけど覚悟してね」

 僕は掴んでいる塔のゴーレムの拳を殴りつけた。塔のゴーレムは大きく上空へと吹き飛ばされる。

 あ~塔のゴーレムの腕が取れちゃったよ~、僕で治せるかな?。ワンジさんに見せてみればいけるかもしれない。

「そろそろ落ちてくるかな?」

 とても小さくなっていった塔のゴーレムがどんどん落ちてきて大きくなっていく。このまま落ちたら中のドルザ君が死んじゃうだろう。

 う~んどうしようかな。助けてもいいんだけど.....。

「助けてくれ~。何でも言う事を聞くから~」

 ん?今なんでもっていった?、ととそんな事言ってる場合じゃなかった。じゃあ何でもやってもらおうじゃないか~。

「わ~~~ぁぁぁぁ....?」

 塔のゴーレムは落ちる速度が和らぐ。そして安全に地面へと着地。

 いつもの僕の飛行術の応用でゴーレムを包んだんだ。この程度の大きさならまだ大丈夫。

「助かったのか?・・・」
「じゃあ何でもしてもらおうか?」

「ぎゃああぁぁぁぁ!!!....ポクッ」
「ありゃ?驚いて死んじゃった?。そんなわけ....脈がないだと!!」

 どうしよう、人工呼吸なんてしたくないよ。はっきり言ってそんなことするくらいなら見殺しにするよ僕は。

「ゴホ!ゴホ!....死ぬかと思った」
「....」

 僕はドルザ君の首根っこを掴み引きずっていく。3歳の身長で運んでいる為ほぼ寝そべったまま引きずられるドルザ君はジタバタと抵抗してる。観念しなさい!まったく。

「このチビ!。お前なんか馬鹿だバ~カ!」
「はいはい。馬鹿に馬鹿って言われてもね。それで?ドルザ君は何をしてくれるのかな?」

「お前にしてやることなんてね~よ」

 捕まれているのに逃げようとするドルザ君は宙を舞う。塔のゴーレムのように僕の魔力で浮かせてる。彼は宙でジタバタと抵抗してる。

「じゃあ。お終いだね....あの世で親子仲良く閻魔様に謝って来てね」
「閻魔って誰だよ!。わ~!!待ってくれ。そうだ!これをやるよ」

 ドルザ君は僕へとオーケストラの指揮者が持つ指揮棒のような物を手渡してきた。僕は首を傾げているとドルザ君が説明し始めた。

「これはあの賢者が俺達に助けを求めてきた時に奪い、じゃなかった、渡してきた物だ。あの塔のゴーレムを動かすための鍵になっているんだ。結界もこれで起動させた」
「わ~~。やった~。あのゴーレムは僕の物になるんだね!」

 僕は無邪気にピョンピョン跳ねて喜ぶ。ロケットパンチつけようか、3種類の形態に変形できるようにしたりしようか迷う!。コクピットの飛行機もつける!これは絶対!。

「それで..あの~。僕はどうなるのでしょうか」
「え?ああ!君は今日からアステリアの鉱山奴隷さ」
「えぇぇぇ~~~~.....ポクッ」

 あ、また死んだ。どうせまた生き返るだろ。たぶんトカゲの死んだふりみたいな能力があるんだろうと勝手に解釈。

 ドルザ君を宙に浮かせて僕はひとまずモウザさんの所へと飛んでいく。

 夜分遅くだったのでモウザさんは寝てたんだけど急遽起こすと目を大きく開けて事の詳細を求めてきた。

 説明を聞いたら納得してドルザ君を牢に入れておいてもらうことになった。そして僕は大きくあくびをかきフローラちゃんの眠る家へと帰っていく。

 僕は3歳だよ。眠らないとお肌に悪いし、教育上悪すぎるよね。ささ、寝ましょ。

 次の日の事を考えながら眠る僕はとてもにこやかだった。だってあんな大きなゴーレム、もといロボットを手に入れられたんだよ。最高だよ。

 先走る心を落ち着かせて眠りについていく。
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