上 下
88 / 252
第四章 ルインズガル大陸

第二十六話 お医者さんからキューピット

しおりを挟む
 僕はアドスバーンの娘と言っていたアウローラちゃんを助けて北上する。

 アドスバーンはアステリアから歩いて10日ほどでアウローラちゃんがいた所からは三日ほどの距離にあるのだが僕らは20分くらいでついた。

 その間魔物に襲われている馬車などは見受けられなかったけど道沿いで魔物を狩る冒険者などはいくらか見かけられた。アドスバーンにも冒険者ギルドがあるからその依頼なのかな?。

「僕も冒険者登録したいな~」
「え?ジーニ様が?確か登録は12歳から...」

 僕の呟きにララさんが答えた。

 12歳からか~....あと9年は待てないね。9年たったらどうなっちゃうんだろう?。

「ジーニちゃんが12歳になったら全大陸の覇者になってそうだね~」
「「・・・」」

 無邪気なフローラちゃんの言葉に僕とララさんは言葉に詰まる。今でも十分覇者になってもおかしくないステータスなのに9年なんて経ったら・・・よし考えるのはよそう。

「あ!アドスバーンが見えたよ~」
「わ~カッコいいお城~」

 指さすとフローラちゃんが無邪気に反応した。確かにとてもカッコいいお城がそびえてる。同じ黒いお城でもヘンダークの城とは違いとても明るい印象を受けた。

「じゃあ、門の前に降りるよ」
「は~い」
「ジーニ様が12歳....」

 フローラちゃんは元気に返事したんだけどララさんはとても上の空だった。何でか頬を赤く染めてる。

「ララさんも大丈夫?」
「あ!、はい。大丈夫」

 ララさんは正気に戻ったみたい。無表情なララさんもいいけど、あんな感じに頬を染めてる姿もとっても可愛いな~。

「ジーニちゃん早くいこ~」
「わ~、そんな引っ張んないでよフローラちゃん」
「12歳のジーニ様、いい!」

 ララさんが何だか僕の名前を呼んだみたいだけど何でもないみたい、僕が振り向くと首を横に振ってる。

 僕らは仲良く門の前に着くと門番のおじさんが僕らを見てお辞儀をしてきた。

「これはこれはジーニ様とフローラ様それにララ様まで。ようこそアドスバーンへ」
「へ?僕らの事知ってるの?」

「ええ。アドスバーン様に教えてもらっていますので」
「ジーニ様!あれ!!」

 門番のおじさんの視線の先にポスターのような張り紙があった。でかでかと門の横の壁に僕の顔が、そしてみんなは名前だけで容姿を知りたいものは兵士に聞けと書いてある。これはどういう事?。

「ちょっとおじさん。こんなもの外してよ。肖像権侵害だよ!」
「肖像?何ですかそれは?。外すと言われてもアドスバーン様が自分で張った物ですからわたくしたちでは...」

 あう~。これは早急にアドスバーンに抗議しないと。

「じゃあ、アドスバーンを呼んでください」
「呼び捨て!!。いや、ジーニ様が来られた際はお城に案内しろと言われています」

 門番のおじさんはそう言って僕らをお城へと案内してくれた。

 ガヤガヤガヤ

 アドスバーンは朝だというのにとても賑わってる。この光景はアルサレムよりも凄いかもしれない。

「どうですかアドスバーンは?」

 門番のおじさんは優しい笑顔で僕らに感想を求めた。正直に凄く良い街ですねって言ったら弾けた笑顔でありがとうございますだってさ、とってもこの街を誇りに思ってるんだね。

 ララさんとフローラちゃんもキョロキョロと辺りを見回して楽しそうにしてる。

 お城の正面に着くとそこにはジェイラさんが待ってた。

「ようこそジーニ様」

 僕らはおじさんにお礼を言ってバーン城の中へと案内されて行く。

 




「こちらです。まずは早急にガイアの手当てをしていただきたい」

 ジェイラさんが案内してくれたのはガイアさんの寝ている部屋だった。とても大きなベッドに寝そべるおじさんはとても大きくてびっくりした。

 肩幅と身長がでかい!。本物のバッ〇ァローマンがいたらこんな感じだろうか。とついつい好きな漫画を持ち出してしまう。

「ガイアは3部隊の攻撃から隊を守ったのですが集中的に攻撃されて片腕片足をなくしてしまったんです」

 ジェイラさんは残念そうに俯く。

 とても痛そうだ。僕は包帯のような布を巻かれているガイアさんの足と手を見て顔を歪める。

「はは、すまんな。子供にこんなものを見せてしまって」

 さっきまで寝込んでいたガイアさんが起きたみたい。

「ううん。街を守った勲章だもん。大丈夫だよ、むしろ見せて」
「うはは、アドスバーン様が欲しがるわけだな。俺も気に入った」

 ガイアさんは豪快に笑った。僕はすぐに[ヒール]の魔法をガイアさんいかけていく。

「何か、かゆいな」

 [ヒール]をかけるとガイアさんは欠損部分を手で掻きだした。双子の時はそんな事言ってなかったけどこっちは雑な魔法で受けたからかなと勝手に解釈した。

「素晴らしい!!」
「ん、ジーニ様は最強」

 ジェイラさんとララさんが声をもらす。

「ありがとう、これでまた戦える」
「まったく、部下を守って前線に出るなんて指揮官失格でしょ」

「うはは、面目ない。ジェイラには毎回面倒をかける」

 ガイアさんが僕にお礼をいうとジェイラさんが呆れたようにガイアさんを叱る。

 どうやら指揮官自らしんがりを勤めたみたいだ。カッコよすぎだよ~。僕が女の子だったら惚れちゃう...。

 そう思ってジェイラさんを見ると何だか言い合いしているのを楽しんでるみたい。ふむふむこれは...。

「二人共とってもお似合いだね~。私とジーニちゃんみたい」
「「!?」」

 フローラちゃんの無邪気爆弾が炸裂。僕が思っていた通り二人は相思相愛なのに何にも進展していなかったみたい。

 だから僕を最初にガイアさんの所に案内したんだと納得した。

「なな、何を」
「そうよ。私達はそんなんじゃ」
「ん、往生際悪い。今度は命が危ないかもしれないんだから今日から恋人」

 二人はララさんに手を取られ握り合わされる。手が触れた瞬間目と目が合い恥ずかしいのかそっぽを向いた。

 でもララさんの手が離れているにも関わらず手は離れない。

 むふふ、何だか青春してるね~。

「あのガイア...」
「待ってくれジェイラ。俺から言わせてくれ」
「え!?」

 ガイアさんが両の手でジェイラさんの手を掴む。ガイアさんの真剣な目にジェイラさんは頬を赤く染める。

「俺は馬鹿だ。いつ死ぬかもわからない。だけどこれだけは言える。俺はお前が好きだ。俺の魂のよりどころになってくれ」
「ガイア....」

 ジェイラさんとガイアさんは見つめあう。僕らの事は見えていないかのように辺りにピンクのキラキラが見える。

「だめ....」
「ジェイラ?」

 ジェイラさんがガイアさんの言葉に頬を赤く染めて俯いた。僕は成り行きを見守る事しかできないけどドッキドキ。ララさんが僕の手を強く握ってるんだけど汗ばんでる。緊張してるみたい。フローラちゃんは僕らの後ろを指を咥えながら二人を見てる。

「...魂のより所じゃダメよ。私はあなたに生きてほしいもの。あなたの帰る場所ならいつでもなってあげる」
「ジェイラ!」

 ガイアさんはジェイラさんの言葉を聞いてジェイラさんを強く抱きしめた。

 二人は見つめ合い唇を重ねる。

 キャ~、ドラマみたい。僕は顔を手で隠して隙間から覗く。

 ララさんとフローラちゃんは何故かそんな僕に抱きついてきた。嬉しそうだからいいけど強く抱きしめ過ぎだよ。

「「・・・・・」」

 しばらくして二人が僕たちがいた事を思い出して僕らを見て俯いた。二人共耳まで顔を赤くしてとても可愛らしい。

「あの。何だその~。...ありがとう」
「私からも。ありがとうございます。おかげで私達一歩踏み出せました」

 二人は恥ずかしそうにお辞儀をして僕らにお礼をいった。僕はも何だか恥ずかしくなって俯く。

 僕らはガイアさんにお辞儀をして部屋を後にした。

 ガイアさんはまだ本調子ではないみたいなのでジェイラさんが僕らをアドスバーンさんの所へ案内してくれるみたい。

 
しおりを挟む
感想 179

あなたにおすすめの小説

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

ラストダンジョンをクリアしたら異世界転移! バグもそのままのゲームの世界は僕に優しいようだ

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はランカ。 女の子と言われてしまう程可愛い少年。 アルステードオンラインというVRゲームにはまってラストダンジョンをクリア。 仲間たちはみんな現実世界に帰るけれど、僕は嫌いな現実には帰りたくなかった。 そんな時、アルステードオンラインの神、アルステードが僕の前に現れた 願っても叶わない異世界転移をすることになるとは思わなかったな~

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

最強の赤ん坊! 異世界に来てしまったので帰ります!

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
 病弱な僕は病院で息を引き取った  お母さんに親孝行もできずに死んでしまった僕はそれが無念でたまらなかった  そんな僕は運がよかったのか、異世界に転生した  魔法の世界なら元の世界に戻ることが出来るはず、僕は絶対に地球に帰る

墓守の荷物持ち 遺体を回収したら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアレア・バリスタ ポーターとしてパーティーメンバーと一緒にダンジョンに潜っていた いつも通りの階層まで潜るといつもとは違う魔物とあってしまう その魔物は僕らでは勝てない魔物、逃げるために必死に走った だけど仲間に裏切られてしまった 生き残るのに必死なのはわかるけど、僕をおとりにするなんてひどい そんな僕は何とか生き残ってあることに気づくこととなりました

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた

砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。 彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。 そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。 死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。 その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。 しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、 主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。 自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、 寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。 結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、 自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……? 更新は昼頃になります。

処理中です...