異世界転生！ハイハイからの倍人生

第四章 ルインズガル大陸

第九話 悪人退治の末

「おうおう、うちにてを出してタダですむと思うなよ！」

　複数の男達が応接間に入ってきた。ローズさんは今日武器を持っていないため素手で構える。

　素手でも強いローズさんは大丈夫だけどシリカさんは普通の人だ。僕は支援魔法をシリカさんにかけておく。

「みんなやっちまえ！！」

「ジーニ、シリカを頼む」

　男達は一斉に僕らに飛びついてきた。それに合わせてローズさんも男達をのしていく。掌底という奴だろうかそれを腹や顎にヒットさせていく。腹にくらった男は胃の中物をもどし顎にくらったものはそのまま前のめりに倒れていく。

　僕やシリカさんにかかってきた男達は見えない壁に阻まれて気絶した。

　勢いつけすぎでしょ。ズルズルと地面に倒れていったよ。

　僕は支援魔法と一緒に[バリア]の魔法を唱えていたんだ。シリカさんには指はもちろんの事、息すらかけてほしくないからね。

　全員を気絶させて辺りがしずかになった。

「喧嘩っぱやい奴らだ。しかしどうしたものかな」
「この人達ローズさんの事わかってなかったみたいだね」

「ん？ああ、たぶんこのピアスでまさかと思ったんじゃないか？下手な変装よりも効果がありそうだ」

　ローズさんは自分の耳を僕に突き出して話す。加護なしのピアスをしている人がまさかＳランク冒険者のローズさんだって思わなかったみたい。

「でも困ったね。全員のびてるからまた忘れて借金を取りたてに来るんじゃないかな？」
「ですね....」
「....」

　僕ら三人は俯いて考え込む。このまま孤児院の問題をそのままにしていたらシスターの身が危ないよね。

「ジーニ、私のお願いを聞いてくれるか？」
「うん、いいよ。たぶん僕が思っている事だと思うから」
「いいのか？」

　ローズさんは驚いて目を見開く。ローズさんは孤児院に残ってこの問題を解決したいみたい。

　人死にがでないようにお金で済ませようと思うんだ。こんな人達でも命だからね。でもローズさんには本当に危ない時は命を取るように告げておいた。こんな人達よりローズさんの方が大事だから。
　
　そういったらローズさんはまた女ったらしなセリフを...って言って頬を赤く染めてた。とても可愛かったけどその時、僕の頬はシリカさんにつねられてとても痛かった。

「ん？この家の地下に誰かいるよ」
「何！」

　穏便に済まそうと思ったけどそれを思い返すモノが見つかっちゃった。

「お姉さんたち、誰？」

　兎人族の少女が鎖に繋がれて牢獄に入れられていた。僕らは優しく微笑んだ。

「君を助けに来たんだ」
「え！」

　兎人族の少女は喜んだ。本当は違うけどそう言ったほうが安心するもんね。

　でもすぐに俯いて悲しい顔になっちゃった。

「ダメだよ。この牢から出たら体がビリビリってなっちゃうの」
「...奴隷紋のようだな」

　兎人族の少女は怯えている。また奴隷紋かと僕は[ピュア]を唱えて兎人族の少女の奴隷紋を消した。更に火傷も治しておく。

「え？」
「君は....どこまで、でたらめなんだ？」

　兎人族の少女とローズさんは驚いている。ローズさんには若干呆れられているようで僕はちょっとションボリ。

「君は可愛いな。すぐに抱きしめたくなる」
「ちょっとローズ今はそんな事言ってる場合じゃ」

　ローズさんはうっとりと僕を見つめた。そんなローズさんをシリカさんは叱ると今度はローズさんがションボリした。

　兎人族の少女を救出して僕らは孤児院へと帰っていく。まだ借金の返済はすましていないので必ずまた来るだろう。

　ローズさんは孤児院に残りシスターの護衛と子供達の世話を手伝うみたい。何かあればすぐに連絡を入れてくれるだろう。

　兎人族の少女はニーナちゃんって名前なんだって。孤児院に預かってもらうと要らぬ疑いをかけられそうなのでアステリアに連れて行くことにした。

　この奴隷紋を消した情報はすぐにヘンダークへと伝わった。

「今度はグリンベイルンだと....」
「アステリアだけではないのか？」

　ヘンダークにて外套を被った年寄りが口ぐちにこぼす。そして我慢がならなかったのかダークに断りもなく出立の準備をしていくのだった。






「ジャンヌ？ジャンヌ～、も～どこに行ったのかしら」

　メリアはアステリアにてジャンヌを探していた。しかし見つからない。それもそのはず、

「キャッキャ！」

　ジャンヌは風の巨人の背に乗って上空を縦横無尽に飛んでいる。彼女に恐怖などないなぜかというとこの世界のすべてに愛されているからである。その証拠に、

「キャウ～」

　風の巨人の背から落ちたジャンヌは上空から地面へと落ちていく。しかし落ちる速度はある一定の速度から上がらずに綺麗にハイハイの形で地面へと降り立った。

　親方！空から少女が！を地で行くジャンヌであった。

　しかし何故落ちる速度が上がらずに降下したのか。それは最初水に落ちた時を思い出してほしい。

　彼女ジャンヌは手のようなもので浮いていた。これは水の巨人のものなのだがこれを風の巨人で今回はやったのだった。

　すなわちジャンヌは何もやっていない巨人たちが自分からやっている事なのだ。

　彼女を襲ういかなる事情も巨人たちに防がれる。

　ジャンヌに勝てる者はジーニくらいしかいないだろう。しかしジーニは彼女を襲う事はないので実質ジャンヌに勝てる者はいないのだった。