上 下
59 / 252
第三章 建国

第二十五話 水車が来た①

しおりを挟む
 あのアステリア城壁戦から五日経ち、僕はシュミットにベンジャミンを迎えに行く。

 ベンジャミンとフェリアさん、デシウスを連れて僕はアステリアへと飛んでいます。

 ソフィアさんとソーアさんは流石にシュミットを留守にするのはよくないと言って残った。何かあった場合すぐに連絡するように言ったので大丈夫だろう。

「凄い!」
「気持ちいいわね~」
「流石はジーニ様」

 三人はそれぞれ感想を述べて空を楽しんでいる。僕はそれに気をよくして少し上昇。

「おおお、どこまで上がるんだ」
「雲の上なんてお伽話でしか語られていないわよ」
「流石はジーニ様」

 ベンジャミンとフェリアさんは感動をして頬を高揚させている。デシウスは流石はジーニ様と納得しているみたい。何だか恥ずかしい。

 雲の上に上がると太陽がだけしかない晴天が広がる。どこまでも続く青い空が地平線で遮られるのが見える。

「あと少しでアステリアですよ~」
「もう!?」
「もっとこの空を楽しみたいわね」
「流石はジーニ様」

 二人は残念そうにしているがデシウスは目を瞑って頷くのみ。デシウスってまさかして高所恐怖症かな?。

 僕はデシウスの弱点を把握しておく為にデシウスの前へ。

「デシウス?」
「流石はジーニ様」

 壊れたレコーダーのように同じ事を言って目を瞑るデシウス。やはりおかしい。

「目を開けてデシウス。そうじゃないと綺麗なデシウスの顔が台無しだよ」
「流石....!?」

 デシウスは僕の言葉に反応して壊れたレコーダーを発動させようとしたが僕の言葉を理解した時、目を見開いた。

「ああ~~~、こわひ」

 デシウスは僕と下を交互に見てすぐに僕へと抱き着いた。どうやら思った通り高所恐怖症のようで涙を流して怖がってる。

 ふむ、いつも強気でいるデシウスがこうなると可愛いな。そう思って僕は抱きつかれたままアステリアへと降下していく。







 ベンジャミンをアステリアに向かえてすぐにアドスバーンから水車が届いた。

 やった~やっと水を引き入れられる~。と喜んでいたんだけど....。

「お~ジーニ~、会いたかったぞ!!」
「アウ?」

 僕を見ると残像が残るほどの速度で僕に近づき抱き上げるおじさん。僕は首を傾げているとおじさんの横に控えていた女の人が腰に手をあてて呆れた様子でおじさんに話す。

「アドスバーン様..落ち着いてください。まずは自己紹介をするのが礼儀でしょ....」
「お~そうだったそうだった」
「アドスバーン!?様」

 ツヴァイお父様がその名前に驚愕する。

 僕を抱き上げていたアドスバーンは僕を降ろしてツヴァイお父様の前へとあるく。そして名乗りを上げた。

「私がアドスバーンだ。これからアステリアと仲良くしていくのだ。その、様と言うのはやめてくれ」
「え?あ?」

 ツヴァイお父様は困惑してお姉さんとアドスバーンを交互に見て差し出された手を握ろうか戸惑っている。

「はっはっは、そう緊張するな。今までは敵同士であったがこれからは味方なのだ」

 ガシッとアドスバーンが戸惑っていたツヴァイお父様の手を無理やり握って握手をかわした。ツヴァイお父様は困惑したままであった。

 アドスバーンは握って一呼吸入れると手を離して僕をみやる。

「この子がジーニでいいのだな?さっきは興奮してしまって申し訳ないな」
「え?ええ、やっぱりジーニが目的だったんですね」
「そうよ。アドスバーン様はジーニ様が欲しいみたいなんです。ああ、私はジェイラよ」

 横に控えていた女性はジェイラと名乗った。この人がベンジャミンを助けてくれた人かと僕は確認しているとジェイラが僕を見降ろしてクスリと笑った。

「ずっと見ていたけどやっぱり子供なのね。可愛らしいわ。いっそ今すぐにジーニ様をくれるのならば簡単なのだけど」
「そうせくな。....この国は今からスタートする。いや正確に言うと4か国会議からだな。それから国が安定してから話し合おう」

 ジェイラの言葉にアドスバーンは笑い言葉を加えた。その笑いにツヴァイお父様は嫌そうな顔を向けていた。狙っていることに変わりはないのでそれが嫌なんだろうね。僕としてはそう思ってくれることが嬉しく思う。だって大事って事だもんね。

「我らの駐屯場所は北の位置だ。会議までは外で待っていよう」
「家はたくさんありますよ」
「いえ、さすがにまだ我らは信用されていないでしょう。戦争で死んだ者もいるのです。無用な争いは避けたいと思います」

 ツヴァイお父様の言葉に手を出して否定したジェイラさん。確かにあまりいい印象は受けていないみたいでアステリアの人達から少しそういう視線を感じた。殺気ではないけどいやな視線だ。

 流石に戦争したばかりの国にいい印象は受けないよね。

「では、ジーニ殿。依頼通りの水車だ」

 さっきから気になっていたんだよ。アドスバーンが指さすその馬車。布で覆われたその馬車は3台。

 アドスバーンはニヤッと笑い一台の布をはぎ取った。
 
 
しおりを挟む
感想 179

あなたにおすすめの小説

ラストダンジョンをクリアしたら異世界転移! バグもそのままのゲームの世界は僕に優しいようだ

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はランカ。 女の子と言われてしまう程可愛い少年。 アルステードオンラインというVRゲームにはまってラストダンジョンをクリア。 仲間たちはみんな現実世界に帰るけれど、僕は嫌いな現実には帰りたくなかった。 そんな時、アルステードオンラインの神、アルステードが僕の前に現れた 願っても叶わない異世界転移をすることになるとは思わなかったな~

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

墓守の荷物持ち 遺体を回収したら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアレア・バリスタ ポーターとしてパーティーメンバーと一緒にダンジョンに潜っていた いつも通りの階層まで潜るといつもとは違う魔物とあってしまう その魔物は僕らでは勝てない魔物、逃げるために必死に走った だけど仲間に裏切られてしまった 生き残るのに必死なのはわかるけど、僕をおとりにするなんてひどい そんな僕は何とか生き残ってあることに気づくこととなりました

最強の赤ん坊! 異世界に来てしまったので帰ります!

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
 病弱な僕は病院で息を引き取った  お母さんに親孝行もできずに死んでしまった僕はそれが無念でたまらなかった  そんな僕は運がよかったのか、異世界に転生した  魔法の世界なら元の世界に戻ることが出来るはず、僕は絶対に地球に帰る

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた

砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。 彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。 そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。 死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。 その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。 しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、 主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。 自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、 寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。 結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、 自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……? 更新は昼頃になります。

転生した社畜は異世界でも無休で最強へ至る(旧題|剣は光より速い-社畜異世界転生)

丁鹿イノ
ファンタジー
【ファンタジア文庫にて1巻発売中!】 深夜の職場で人生を終えた青桐 恒(25)は、気づいたらファンタジーな異世界に転生していた。 前世の社畜人生のお陰で圧倒的な精神力を持ち、生後から持ち前の社畜精神で頑張りすぎて魔力と気力を異常に成長させてしまう。 そのうち元Sクラス冒険者である両親も自重しなくなり、魔術と剣術もとんでもないことに…… 異世界に転生しても働くのをやめられない! 剣と魔術が存在するファンタジーな異世界で持ち前の社畜精神で努力を積み重ね成り上がっていく、成長物語。 ■カクヨムでも連載中です■ 本作品をお読みいただき、また多く感想をいただき、誠にありがとうございます。 中々お返しできておりませんが、お寄せいただいたコメントは全て拝見し、執筆の糧にしています。 いつもありがとうございます。 ◆ 書籍化に伴いタイトルが変更となりました。 剣は光より速い - 社畜異世界転生 ~社畜は異世界でも無休で最強へ至る~ ↓ 転生した社畜は異世界でも無休で最強へ至る

処理中です...