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第三章 建国

第十六話 冒険者

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「やっと、アステリアへ帰れる...」

 僕はアステリアへ向かいながらため息をつき胸を撫でおろした。コクエンには堀を固める指示をしておいたので堀は大丈夫だろうけど建物を任せていたお父様が心配でならない。景観を考えず全部同じ建物でも立てているのではないかと。

 ジーニの予想は当たっていた。昨日のうちにアステリアで十軒の同じ建物が建ってしまっている。アステリアに着くとジーニは肩を落とすだろう。

 そんなことを考えていると前方の方から魔物の群れが土煙を起しながら僕たちの下方を通ろうとしている。

「ジーニちゃん、何か追いかけてるみたいだよ」

 本当だ。今にも後方の大型の犬のような魔物に食いつかれそうになっている。馬車の後方で剣や槍で抑えているけど分が悪そうだ。

「助けてあげる?」
「そうだね。出来るだけ助けられる人達は助けてあげなくちゃね」

 フローラちゃんが可愛く首を傾げて質問するものだから僕はちょっとドキッとしちゃった。という事なので馬車の人達を助けてあげよう。

「ちょっと、そっち来ているわよ」

「わかってるっての!。お前は槍なんだからもっと牽制しろよ」

「二人共こんな時に喧嘩してもしょうがないでしょ。とにかく全力で逃げるのよ」

「あ~ん、折角新しく国を作るって聞いたアステリアに行けると思ったのに~~」

「泣くなよ。俺も泣きたくなっちまう」

 冒険者のような革鎧を着た男女が泣き喚いている。御者と合わせて5人だろうか。

 アステリアのお客様みたい。通りかかってよかった。じゃないとこんな群れと出くわしていたらひとたまりもないもんね。

 改めて魔物の群れを見据える。馬車を追って一直線に土煙を起しているその群れは一目で50以上いる事がわかる。魔物達は基本はぐれ以外は群れで活動している。その為違う魔物同士の衝突も多々起こり今回のような馬車を襲う事もよくある事である。

 なので馬車という物には大抵魔物避けのおまじないの魔法がかかっているものなのだがこの冒険者達のようにけちるものも多くその土地を統治している者達を困らせるのであった。何せ逃げてきて城壁辺りで群れを対処しなくてはいけないのだから大変である。大抵の冒険者はたどり着く前にこと切れてしまうが。

「じゃあ、行こうか?。ってフローラちゃん?」

 さっきまでフローラちゃんがいた方向を見て話したがフローラちゃんの姿はもうそこには無かった。

「すごいすご~い。やっぱり私って強くなってるんだね。ジーニちゃんとかボルケーノとかイカじゃわかんなかったけど」

 フローラちゃんはとてもいい笑顔で犬の魔物を狩っていく。ちぎっては投げちぎっては投げと言った感じなんだけどなんだかおもちゃで遊ぶ子供みたいである。絵面はあまりお見せしたくないけど何だか妖艶だよ。

「は~。じゃあ僕は馬車を守ろうかな」

 フローラちゃんは群れの丁度中央付近に舞い降りたので僕は今正に追いつかれそうになっている馬車の方へと飛ぶ。馬車を見るとすでに御者席に魔物が襲い掛かっている。

「ありゃ、悠長にしてたらあぶなくなってる。仕方ない。[マナバレット]!」

 僕は鉛筆ほどの魔力の塊を放った。折角なので名前を付けた。やっぱり技の名前は叫ばなくちゃね、ムロフ〇さんのように叫べば威力が上がるはずだ。まちがいない。

 普通の魔法だと強力になり過ぎるので考えたんだけど成功しちゃった。

 その魔力の弾は見事に御者を襲っていた魔物の胴体に当たる。馬車から魔物が吹き飛んだ。ちょっとこの後は僕も驚いたのだけど[マナバレット]を受けた魔物がはじけちゃった。まさかリアルできたねえ花火を見る事になるなんて思わなかったよ。

「何だ?今のは」
「それより、ウィーリーさん大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫です。皆さんも大丈夫ですか?」
「何とかと言った感じですが」
「このままでは馬が限界を迎えてしまう。どうにか街までいけないか?」

 冒険者達は思案しあっているがこの位置から一番近いのはせいぜい村である。魔法による結界はついているがそれはとても弱くこの量の魔物を退けられるものではないという事らしい。

「お助けしますから安心してください」

 ピョコ!

 そんな効果音がなるような錯覚が起こるほどの呑気な感じに僕は馬車へと降り立った。

 みんな度肝を抜かれて放心状態。危ないよ後ろ後ろ。

「[マナバレット]!」
「「「「「!?」」」」」

 馬車の中は再度静まり返った。

 もうっ、緊張感のない人達だ。僕は黙って馬車の中にあった剣を二本取り出した。御者のおじさんがあっ!、と言った感じだったが無視してそのまま馬車の後方から魔物を蹴散らしながら降りた。

 ブゥン!ブゥン!

 そんな効果音がなるような感覚になる。そう、まるであの星戦争の緑のお爺ちゃんのように舞っています。剣はずぶの素人なので適当に振っていますが剣の腹側で当たると骨の砕ける感触が、刃が当たると抵抗が少ししてから魔物はその部分からさけていきました。

 わ~これは他の人からの視点でみたいな~なんて呑気に思っていると大半の魔物を蹴散らす事に成功。やっぱり赤子の体躯だと美味しそうに見えるのかな?。馬車には数匹しか向かっていかなかったよ。冒険者の人達はそのおかげか魔物を倒して、馬車を止めてこちらに駆けよってきた。

「君は....。加護なしのピアスの赤ん坊....」
「まさかジーニ様ですか?」

 わ~、僕ってだいぶ有名人なのかな。冒険者さん達は僕の名前を口に出した。僕は借りた剣を返してニッコリ笑う。

「はい、僕はアステリア・ジーニだよ。危なかったね。今度からはちゃんとおまじないをしなくちゃダメだよ。みんなの迷惑になっちゃう」
「え!?あ、はい。どうもすみませんでした」

 槍を持っていたお姉さんが申し訳なさそうに謝った。僕は再度微笑む。

「この子がジーニ様。この目で見ても信じられないわ」
「ああ、だが本当のようだ。こりゃアステリアには人が殺到しそうだな」

 剣を持った男の人と魔法職なのだろうか、杖を持ったお姉さんが話している。何のことだろう。

「私達は今、アステリアへ行こうとしていました。私はアスハ」
「私はウスハです」
「俺はルーザだ」
「私はエルサよ」
「見ての通り、男一人に女三人のPTさ」

 一人一人自己紹介をしてくれた。律儀な人達だな~と思ったんだけど御者の人は馬車から降りてこないみたい。

「あ~、あの人はウィーリーさん。私達の雇い主の商人さんよ。彼も私達と同じでアステリアで一旗建てようって来たんだけど」
「まさかの魔物の群れにあたっちゃって大変だったわ」

 槍のアスハさんと魔法使いのエルサさんがため息をついて話した。まさかウィーリーさんがまじない料をケチっていたとは知らなかったみたいで少し嫌そうな顔をウィーリーさんに向けている。

「いやいや、助かりました。聞きましたよ。あなた様がジーニ様ですか」
「はい、そうですよ」
「そうですかそうですか。いやー噂ではとても強いと聞き及んでいましたがまさかこれほどとは思いもよりませんでしたよ」

 ウィーリーさんは僕に対してとても低姿勢でゴマを擦ってくる。何だろうこの感じ僕は何だか嫌な予感がしたので立ち去ろうとする。フローラちゃんの方も終わっただろうしね。

「では皆さん安全な旅を。アステリアへの道にまた群れでもいたら片付けておきますので」
「ちょ!、魔物達の素材はいいの?」
「え?いや~流石に量が量なのでよかったらどうぞ」

 僕は魔物の素材に興味がなかったのでみんなにどうぞと促して飛び去る。レアバックのアイテムバックを持っていないのでとても持っていけないもんね。

 すぐに魔物を倒し終わったフローラちゃんと合流してアステリアへ。

 途中いくらかの魔物を狩っておいたけど魔石を持っていそうな大型の魔物はいなかった。残念。

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