墓守の荷物持ち 遺体を回収したら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)

文字の大きさ
上 下
11 / 19
第一章 誕生

第11話 ゴブリン

しおりを挟む
 ラーシアと契約した次の日。久しぶりにギルドにやってきた。ツィンさんが迎えてくれて、早速依頼を受けることにした。

「ゴブリンの依頼でいいのか?」

「はい。銅の冒険者ですから」

「……銅ね~」

 無難にゴブリンの依頼を選択。ツィンさんにジト目を向けられるけど、顔を出すだけだからね。それにマジックバッグにはサラマンダーとかリザードマンとかカイザースケルトンが入ってるんだよね。

「銅ですよ。じゃあ、行ってきます」

「行ってらっしゃい。金みたいな銅の冒険者さん」

 嫌みっぽく見送るツィンさん。からかわれてばかりの僕であった。
 ギルドを出るまでピッツァさん達に睨まれていたけど無視してた。あの人たちは依頼をしないでサボってるのかな。まだ何か言い足りないのかな?

「旦那様! おはようございます!」

「え? ラーシア?」

 ギルドを出てゴブリンが目撃された場所である森へと行こうと思ったらラーシアが挨拶してきた。昨日みた貴族みたいな服じゃなくて、魔法使いみたいな服になってる。まさか……

「今日からよろしくお願いします!」

「……どういうこと?」

「ふふ、旦那様をお守りするために冒険者となったのです。もちろん、解体も致しますよ。私の部下たちが」

 ちょこんと隣に並ぶラーシア。なぜか顔を赤くさせている。パーティーを組むつもりはないので撒くことにした。

「だ、旦那様~!」

「ダンナじゃないし、パーティーメンバーじゃないよ!」

 どんどん遠くなっていくラーシアが叫んできた。否定の言葉を置いて城壁の外へと飛び出す。門を守る兵士達が目を真ん丸にして驚いてる。ってそんなことはどうでもいいんだ。変なことになっちゃったな~。

「は~。このくらい離せば大丈夫かな」

 ゴブリンが目撃された森にたどり着いて一息つく。元借金取りとパーティーなんてごめんこうむる。ラーシアと組むならリコさん達とパーティーを組んだ方がいい。

「当分は一人で過ごす。そして隠居生活を送るのだ」

 仕事を済ませて家に直帰。そして、昼寝するんだ。怠惰に過ごすぞ~。

「さて、それをするにはゴブリンゴブリン」

 仕事してますっていう体裁は整えないとね。まあ、墓守の仕事はしているからいいと思うんだけどね。

「おっと、いたいた」

 街から走って一分の森。と言っても僕のステータスなので馬で一時間のところだな。僕のステータスはじいちゃんのせいでぶっ壊れになっちゃったからな~。全部じいちゃんのせいってことで。

「あれ? 先客かな?」

 リコさん達と同じくらいの年齢の男の子達がゴブリンと戦っているのが見える。三人のパーティーで回復魔法が使えそうな子はいないな。

「ヴァン! 気をつけろ!」

「分かってるエヴィン。弓で援護してくれポルン」

「ほい」

 剣を持つ二人の少年と弓の三人。弓の少年が上手くゴブリンを牽制できてるけど、背後は疎かみたいだ。今にも弓の子に飛ぶつこうとしてるゴブリンがいる。木の上にいるからポルンって言われた子は気が付いてないな。

「ギャギャ!」

「え!? わ~、って!?」

 後退しながら弓を射っていたポルン。とうとうゴブリンが飛びついてきて驚きの声をあげた。獲物を横取りするようで助けるのを躊躇っていたけど、命に関わることだから文字通りの横やりを入れさせてもらった。マジックバッグからリザードマンの槍を放り投げてゴブリンを仕留める。驚いて僕を見据える三人。

「前から来てるよ。集中して」

「「「は、はい!」」」

 僕の声で気を取り直す三人。僕の手伝いは最初だけ、自分たちの倍以上のゴブリンを屠っていく。
 静かになると僕へとお辞儀をしてお礼を言って来た。

「ありがとうございます」

「助けてくれなかったらポルンが怪我して僕らも危なかったです」

 ヴァンとエヴィンのお礼に手を振って答える。怪我はしたかもしれないけど、この子達なら何とかなっただろう。

「ありがとです。助かりましたです」

「あ、いやいや」

 ポルンが僕の手を両手で持ってブンブン縦に振るう。ポルンはウサギの獣人だろうか? 身長が極端に低い。

「見ての通りおいらは兎人です。二人とは故郷が一緒で幼馴染ってやつです」

「まあ、腐れ縁ってやつ」

「腐ってないです。新鮮です」

「そういう意味じゃないって」

 ポルンの言葉に二人が交互につっこむ。仲がいいな。

「ゴブリンを人数分倒そうと思ったら仲間を呼ばれちゃってあなたが来なかったら危なかったです。えっと、お名前を聞いても?」

 エヴィンに名前を尋ねられる。名を名乗ると頷いて『アレアさん』と呟いた。三人で呟くもんだから面白くてつい笑ってしまった。

「アレアさんは凄い人です。ゴブリンが一瞬で消えたです」

「ははは、そうかな? 助けようと必死だったからわからないな」

 ポルンが褒めてくれる。とりあえず、ごまかしておこうかな。

「金の冒険者ですよね。凄いな~」

「あっ、いや」

「僕らも早く銅にならないと」

 ヴァンがしみじみ呟くとすぐにエヴィンが声をあげた。訂正しようと思った遮られちゃったな。

「じゃあ、僕らは数こなしたので」

「アレアさんの邪魔にならないうちに帰ります」

「ありがとうですアレアさん」

 三人はそそくさと街へと帰っていった。金の冒険者の邪魔になると思ったのかな。君たちと同じ銅なんだけどね。

「しかし、あんな大量のゴブリンは珍しかったな~。木の上に待機してるゴブリンも変だったし」

 単純にゴブリンと言っても指揮系統の上位種と言われる魔物がいる場合がある。そういう場合はさっきみたいに背後からとか、罠があったりとか戦術を使ってくる。もしかしたらここら辺に上位種のゴブリン、ジェネラルやキング、ロードなんかがいるのかもしれないな。

「ってまさかね。こんな街の近くでゴブリンが生き残るなんて無理だし」

 新人の冒険者でも倒せる魔物の代表であるゴブリン。町に近ければ近いほど狩りつくされる存在だ。生き残らないと強くなれないこの世界は魔物も一緒。普通は街にこんな近い森じゃ上位種なんて絶対に無理。
 まあ、絶対なんてないんだけどね。僕がおかしな存在になったみたいに。

「……ウォーリアかな?」

「グルルルル」

 まさかね~。なんて言っていたら目の前に大剣を担いだゴブリンが子分を引き連れて現れた。上位種の前の段階の職業もちの魔物だ。ゴブリンの一個上の存在だな。ウォーリアからジェネラルやマジシャンへと派生して行くんだけど、普通はここまでのはずだ。冒険者もいっぱいいる土地だしね。

「まずは子分を!」

 手裏剣を取り巻きゴブリンの額に放つ。ゴブリン達は何をされたのかわからずに絶命していく。ウォーリアゴブリンは驚いて大剣を掲げて駆けてくる。
 振り下ろされる大剣、紙一重で躱すと地面を揺らす。龍光を鞘から放つと光を放ちウォーリアゴブリンの目を潰す。
 
「はっ!」

 大剣を駆け上がり龍光がウォーリアゴブリンの首を狩り落とした。

「ふぅ。冒険者のみんなは何やってるんだ? 上位種になるゴブリンなんて滅多にないはずなのに」

 経験を詰めるほどここら辺は冒険者は少なくない。城壁のない村なんかがおそわれればすぐにでも冒険者がやってくるし、ゴブリンが生き残れるはずないんだよな。

「手裏剣はちゃんと回収してっと。心配だからここら辺を探索するか。ウォーリアよりも強化されているゴブリンがいたら危険だしね」
 
 ウォーリアの上のくらいまで強化されると罠なんかを多用してきて新人冒険者なんかが犠牲になっちゃう。そんなことが続くとキングやロードなんかが生まれて町を襲うほどの規模に膨れ上がる。
 特にロードって言うのは危険だ。トロールとか場合によってはゴーレムなんかも引き連れるようになるとか言われてる。トロールはゴブリンをもっと馬鹿にして大きくした感じでHPが高いだけだけど、ゴーレムは剣なんか弾いちゃって大変。城壁用のバリスタを多用して倒すとか聞いたことがあるな。
 
 ゴブリンの危険性を考えながら森を探索しているとゴブリンの死体の山が作られているのが見えた。人が作ったのなら後は燃やすだけだけど……

「!? 隠れよう」

 何もいなかったから山に近づいていたけど、気配を感じて木陰へと隠れる。
 松明を持ったゴブリンに導かれるように魔法使いみたいな帽子をかぶったゴブリンがやってきた。マジシャンだ!
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

処理中です...