墓守の荷物持ち 遺体を回収したら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)

文字の大きさ
上 下
2 / 19
第一章 誕生

第2話 脱出するには

しおりを挟む
「じいちゃんはそんなこと教えてくれなかった。じいちゃんは僧侶だったからかな。それにしては身軽だったけど」

 荷物持ちのマジックバッグを持っていないとこれには気づけないよな。死体を墓に入れる時に少し体が軽くても気にならないだろうし。

「墓守の継承者の力に気づけたのはいいけど、ここはダンジョンのどのくらいの位置にいるんだろう」

 赤い光の漏れ出てきている穴をくぐりながら呟く。この後の不安で勝手に言葉が口から出てしまう。
 生きて帰ることが出来るのかな、残念ながらその不安は的中する。

「!? 赤い光の正体はこれか……」

 赤い光を発している物体はマグマだった。剥き出しのマグマ、マグマのないところが道になっている階層だ。ダンジョンでもかなり深いところにこんなところがあるってギルドで話してた人達がいたな。
 
「白骨死体がなんであそこに集まっていたのかがわかった……。出たくても出れなかったんだ」

 職業で強さの変わる冒険者。みんな戦士や魔法使いといった初期の職業だった。
 魔法使いと僧侶の二つよりも強い職業の賢者や、戦士と剣士よりも強い侍なんかの強い職業の人だったら出れたかもしれない。
 下層のダンジョンではかなりレベルを上げないといけない、初級と言われる職業では勝てないはずだから……。

「……僕も出られないかもしれない」

 見渡せる限り魔物は見えないけど、下層のダンジョンは魔物も強力だからな~。
 周りを見渡しながら不安が次々と口から出てくる。その時、大きなため息が出るのと同時にマグマが大きく盛り上がってきた。

「な、なんだ!?」

 マグマがただれて何が出てきたのかが見えてきた。僕は息を飲んで口を開く。

「サラマンダー……」

 魔物はランクで区別されてる。Eから始まってD、C、B、A、Sと上がっていく。サラマンダーはBランクの魔物、場合によってはAにも匹敵する魔物だ。レベルでいうと50レベル程の魔物で場合によるというのは地形の話だ。そう、まさにこの今の状況がピッタリ。

「こ、こんなマグマだらけの場所で!?」

 サラマンダーは火を操ることが出来る魔物。火の元となるマグマだって例外じゃない。ゆらゆらと水のように揺れるだけのマグマがサラマンダーの視線で僕へと迫ってくる。

「わ~!?」

 鋭く迫ってきたマグマを避ける。ステータスが上がっていたおかげで避けれたけど、戦うのが得意じゃない僕がいつまで持つかわからない。

「そうだ! マグマは冷めると固まるはず! 【ウォーターボルト】」

 サラマンダーに向かってウォーターボルトを放つ。周りのマグマを固めるために放った水の塊はサラマンダーを貫いて屠っていった。

「え!? 何この威力……」

 サラマンダーの胴体に大きな穴を作ったウォーターボルト。初級魔法であるこの魔法でサラマンダーを倒すなんてあり得ないと思うんだけど。

「ま、まあ、倒せたんだからいいか……。あっ、まものを倒したことになったんだよね。ってことは」

 魔物を倒したんだから経験値が入ったはず。僕はワクワクしながらステータスを開く。ステータスの載った透明な板が目の前に展開される。

アレア・バリスタ 14歳

 LV11 荷物持ち(戦士・剣士・魔法使い・僧侶・狩人・盗賊)

【体力】90+800
【魔力】46+1200



【筋力】65+550

【生命力】58+600

【命中性】88+500

【敏捷性】80+550

【知力】46+700

【精神力】46+700

 スキル

 【墓守の継承者】×6

「!? 10も上がってる!?」

 10も上がっているってことはあれがサラマンダーじゃないなんて言うことはないはず。ってことはBランクの魔物を僕は一撃で仕留めたことになる。6人の力を合わせることが出来ればこんなことが出来ちゃうんだな。

「とりあえず、サラマンダーの死骸をマジックバッグに入れてみよう」

 魔物の死骸も力に変えられるなんてことが出来たら最高だと思ってマジックバッグにしまって行く。

「よし、どれどれ? あれ? 変わってない……そうか、墓守の継承者の影響だから人の死体でしか強くなれないのか」
 
 お墓を作るのは僕ら人間だけ、魔物がお墓を作るなんて聞いたことないもんな。
 サラマンダーの死骸は外に出れた時にお金に変えよう。
 色々と考え込んでいると周りのマグマから更にサラマンダーが現れた。僕はすかさずウォーターボルトをばらまいて倒していく。

「【ウォーターボルト】【ウォーターボルト】【ウォーターボルト】【ウォーターボルト】」

 何度も何度も魔法を放ってサラマンダーを屠っていく。ズシンと倒れていくサラマンダー達。僕はどんどんレベルが上がって40レベルになってしまった。

アレア・バリスタ 14歳

 LV40 荷物持ち(戦士・剣士・魔法使い・僧侶・狩人・盗賊)

【体力】470+800
【魔力】320+1200



【筋力】210+550

【生命力】200+600

【命中性】230+500

【敏捷性】250+550

【知力】190+700

【精神力】190+700

 これでやっと白骨死体の人たちと同じくらいの強さになったのかな。
 でも、そんな人たちが外へと出ずに死んでいったのに僕は普通に戦えてる。僕は異常に強くなってしまったらしい。

「全部、しまえたっと。じゃあ、帰ろう……」

 仕留めたサラマンダーをしまって帰路にたつ。といっても帰り道はわからない。

「ダンジョンなんだから階段があるはず」

 このダンジョンは階段で次の階層に潜れる。下への階段じゃなくて上への階段を登れば帰れるはずだ。
 僕がこの階層に転移した時にいた階層は第3階層。下層と言われるここはたぶん15階層くらいのはず……遠いな。
 12階層は上っていかないと帰れない。食料はもともとマジックバッグに入ってるもので十分持つと思う。ダメでもサラマンダーを食べれば大丈夫。サラマンダーはもともと生で食べられるで有名な魔物だからな~。マグマに住んでいるだけあって、寄生虫とかそういったものがいないのがいいところ。食べる機会はなかったから楽しみではあるな。

「とにかく、この階層から上がらないと」

 独り言呟いて、ため息をつくと新たにサラマンダーがマグマから現れる。相手にしていられない、素早く回避して階段を探す。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

うどん五段
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。 ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。 ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。 時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。 だから――。 「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」 異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ! ============ 小説家になろうにも上げています。 一気に更新させて頂きました。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

処理中です...