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第2話
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マーガレットは二人にそう告げた後、ある良いことを思いついた。
「お二人が恋仲であり、裏切り者同士お似合いだとわかったので、グレンヴィル伯爵家からの要求はお二人のそれぞれの家からの慰謝料とお二人の婚約とさせて頂きますわ」
「え……!? マーガレット、いいの? 私がジョセフと婚約しても?」
「おい、やめろ! 俺は絶対嫌だ!」
マーガレットの言葉にシシリーとジョセフの反応は正反対だった。
ジョセフはガードナー伯爵家の長男ではなく、二男なので、立場的に婿に行かなければ、貴族として生きていくのは難しい。
しかもジョセフはプライドが高いので、自分の実家である伯爵家よりも爵位の低い家に婿に行くなんて真っ平御免だと思っている。
先程、シシリーと二人の世界にいた時の”マーガレットなんかじゃなくてお前と結婚したい!”というジョセフの言葉は本心ではなく、その場の雰囲気を盛り上げる為の言葉である。
一方、シシリーは成人済みの兄がおり、その兄がブラウン子爵家を継ぐ為、シシリーが子爵家を継ぐことは出来ない。
もし、シシリーがジョセフと婚約した場合は、家を継げない者同士の婚約になる為、事実上平民になるという宣言に等しい。
シシリーはジョセフが伯爵家の二男であることはすっぱり頭から抜け落ち、これで自分は伯爵夫人になれるのだと勘違いしている。
「私のことは気にしないでいいわよ、シシリー。愛し合っている者同士が婚約する方が幸せですものね」
マーガレットは上辺だけの笑顔をシシリーに向ける。
よく見たら、その目は全く笑っていない。
「ありがとう、マーガレット! 優しいマーガレットと幼馴染兼友人で私、嬉しいわ!」
「マーガレット! やめてくれ!」
「二人がそんな仲だったのに早く気づいてあげられなくてごめんなさいね」
マーガレットの言葉にジョセフはがっくりと膝をつく。
もう婚約解消は不可避だと彼女の言葉で悟ったからだ。
「シシリー。今すぐ荷物をまとめていらっしゃい」
マーガレットはそれまでの作り笑顔を消して、冷たく言い放つ。
「え……? どうして……? 私とジョセフのことを認めてくれたのでしょう? これからもこのタウンハウスで私達の逢瀬を許してくれるんじゃないの?」
「よくもそんなことが言えますわね。あなたの面の皮の厚さに驚きますわ。どうして裏切ったあなたを引き続きタウンハウスに住まわせなければならないのですか? あなたが学園の寮生活は嫌だけれど、王都に子爵家のタウンハウスはないから、我が家のタウンハウスに住まわせて欲しいとお願いしてきたから幼馴染のよしみで居候させてあげただけ。しかも私の婚約者との逢瀬場所としても利用していたようですし、私があなたをこれ以上ここに置いておく理由はないですわ」
「じゃあ私はこれからどこに住めばいいのよ?」
「さぁ……? まず、学園の寮に空きがあるか確認してみては如何? 空きがない場合はジョセフに何とかしてもらいなさいな。とにかくシシリーには今日中で退居して頂きます」
「そんなぁ……。学園の寮なんて二人部屋でゆっくり出来ないし、洗濯や掃除も自分でやらなきゃいけないのに……」
「自分が蒔いた種でしょう? そんなこと、私は知りませんわ。最後に一つだけ言わせて頂きますわ。私はもうジョセフともシシリーとも縁を切らせて頂きます。学園でも話しかけないで下さいませ」
マーガレットはそれだけ言うと、くるりと背を向け、部屋から退室する。
「お二人が恋仲であり、裏切り者同士お似合いだとわかったので、グレンヴィル伯爵家からの要求はお二人のそれぞれの家からの慰謝料とお二人の婚約とさせて頂きますわ」
「え……!? マーガレット、いいの? 私がジョセフと婚約しても?」
「おい、やめろ! 俺は絶対嫌だ!」
マーガレットの言葉にシシリーとジョセフの反応は正反対だった。
ジョセフはガードナー伯爵家の長男ではなく、二男なので、立場的に婿に行かなければ、貴族として生きていくのは難しい。
しかもジョセフはプライドが高いので、自分の実家である伯爵家よりも爵位の低い家に婿に行くなんて真っ平御免だと思っている。
先程、シシリーと二人の世界にいた時の”マーガレットなんかじゃなくてお前と結婚したい!”というジョセフの言葉は本心ではなく、その場の雰囲気を盛り上げる為の言葉である。
一方、シシリーは成人済みの兄がおり、その兄がブラウン子爵家を継ぐ為、シシリーが子爵家を継ぐことは出来ない。
もし、シシリーがジョセフと婚約した場合は、家を継げない者同士の婚約になる為、事実上平民になるという宣言に等しい。
シシリーはジョセフが伯爵家の二男であることはすっぱり頭から抜け落ち、これで自分は伯爵夫人になれるのだと勘違いしている。
「私のことは気にしないでいいわよ、シシリー。愛し合っている者同士が婚約する方が幸せですものね」
マーガレットは上辺だけの笑顔をシシリーに向ける。
よく見たら、その目は全く笑っていない。
「ありがとう、マーガレット! 優しいマーガレットと幼馴染兼友人で私、嬉しいわ!」
「マーガレット! やめてくれ!」
「二人がそんな仲だったのに早く気づいてあげられなくてごめんなさいね」
マーガレットの言葉にジョセフはがっくりと膝をつく。
もう婚約解消は不可避だと彼女の言葉で悟ったからだ。
「シシリー。今すぐ荷物をまとめていらっしゃい」
マーガレットはそれまでの作り笑顔を消して、冷たく言い放つ。
「え……? どうして……? 私とジョセフのことを認めてくれたのでしょう? これからもこのタウンハウスで私達の逢瀬を許してくれるんじゃないの?」
「よくもそんなことが言えますわね。あなたの面の皮の厚さに驚きますわ。どうして裏切ったあなたを引き続きタウンハウスに住まわせなければならないのですか? あなたが学園の寮生活は嫌だけれど、王都に子爵家のタウンハウスはないから、我が家のタウンハウスに住まわせて欲しいとお願いしてきたから幼馴染のよしみで居候させてあげただけ。しかも私の婚約者との逢瀬場所としても利用していたようですし、私があなたをこれ以上ここに置いておく理由はないですわ」
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「そんなぁ……。学園の寮なんて二人部屋でゆっくり出来ないし、洗濯や掃除も自分でやらなきゃいけないのに……」
「自分が蒔いた種でしょう? そんなこと、私は知りませんわ。最後に一つだけ言わせて頂きますわ。私はもうジョセフともシシリーとも縁を切らせて頂きます。学園でも話しかけないで下さいませ」
マーガレットはそれだけ言うと、くるりと背を向け、部屋から退室する。
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