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はじまりのお話
運命の出会い、きっとこれだ!
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どうやら絡んできた人間を吹っ飛ばしたのは、ロップイヤーのウサギ獣人のようだ。
見た感じ、ぼくと年齢は変わらなさそうだけど、すごくやせ細っていて……羽が、ボロボロに折れている。
「えっ、君、大丈夫?」
「は? それ、おれのセリフじゃね?」
みれば全身どろまみれで、服もところどころ破れてる。丸見えだけど胸はぺたんこだし、男の子かな。
でも目がすごくきれいだ。エメラルドグリーンの、澄んだ宝石色。黄金の装飾みたいな髪の毛がさらさら風に揺れていて、漆黒のたれ耳が隙間から時々見える。
ボロボロの恰好なのに、どうして彼はこんなに綺麗なんだろう。
――不思議。
ぼうっと見とれていたら、お前生きてる? と言われ、ぼくははっと我に返った。
「はっ、オメガ獣人、隠れてたくせにのこのこ出てきやがったな! こら、今度こそ大人しく言うことを聞け……!」
「いってえっ、やめろ!」
派手に吹き飛ばされた人間の男が、頭を抱えながら起き上がり、今度はさっきの黒耳の少年を無理やり連れて行こうとした。ぼくは咄嗟に走り出して、その手をめいっぱい引っ張った。
「やめろ! その子、嫌がってるじゃないか」
「いたたたた! くそっ、てめえも道連れにするぞ!」
「いやだ! はなせ!」
男と少年を取り合ってもみ合ううちに、ぼくの白い帽子が風に飛ばされ、お忍びで見せてはいけない白い兎耳があらわになった。
「おっ、お前……アルファうさぎの王族か!」
途端、人間の目の色が変わった。こいつは見ただけで僕が何者なのか察したようだ。「ボスへのいい手土産ができた」とくつくつ笑いながら、ぼくたちの腕をさらに掴み上げる。逃げようとしたけれど体格差がありすぎてびくともしない。ついに、ぼくと黒耳の少年の足は宙に浮いた。
「わああっ」
「カツユキ様!」
じいやの真剣な声が、すぐそばで聴こえてきた。
よかった、もう大丈夫だ。あの強いじいやが、こんな悪い人間なんてすぐにやっつけてくれる。
大の男同士のバトルに巻き込まれ、振り飛ばされそうになりながら、ぼくは一生懸命黒耳の少年に手を伸ばした。少年は、不思議そうな顔をしながらぼくの手を取った。
「大丈夫、おいで! ぼくのお城に連れて行ってあげる」
その時、ぼくの中で誰かがそっと囁いたんだ。
――きっとこれが、運命の出会い。
見た感じ、ぼくと年齢は変わらなさそうだけど、すごくやせ細っていて……羽が、ボロボロに折れている。
「えっ、君、大丈夫?」
「は? それ、おれのセリフじゃね?」
みれば全身どろまみれで、服もところどころ破れてる。丸見えだけど胸はぺたんこだし、男の子かな。
でも目がすごくきれいだ。エメラルドグリーンの、澄んだ宝石色。黄金の装飾みたいな髪の毛がさらさら風に揺れていて、漆黒のたれ耳が隙間から時々見える。
ボロボロの恰好なのに、どうして彼はこんなに綺麗なんだろう。
――不思議。
ぼうっと見とれていたら、お前生きてる? と言われ、ぼくははっと我に返った。
「はっ、オメガ獣人、隠れてたくせにのこのこ出てきやがったな! こら、今度こそ大人しく言うことを聞け……!」
「いってえっ、やめろ!」
派手に吹き飛ばされた人間の男が、頭を抱えながら起き上がり、今度はさっきの黒耳の少年を無理やり連れて行こうとした。ぼくは咄嗟に走り出して、その手をめいっぱい引っ張った。
「やめろ! その子、嫌がってるじゃないか」
「いたたたた! くそっ、てめえも道連れにするぞ!」
「いやだ! はなせ!」
男と少年を取り合ってもみ合ううちに、ぼくの白い帽子が風に飛ばされ、お忍びで見せてはいけない白い兎耳があらわになった。
「おっ、お前……アルファうさぎの王族か!」
途端、人間の目の色が変わった。こいつは見ただけで僕が何者なのか察したようだ。「ボスへのいい手土産ができた」とくつくつ笑いながら、ぼくたちの腕をさらに掴み上げる。逃げようとしたけれど体格差がありすぎてびくともしない。ついに、ぼくと黒耳の少年の足は宙に浮いた。
「わああっ」
「カツユキ様!」
じいやの真剣な声が、すぐそばで聴こえてきた。
よかった、もう大丈夫だ。あの強いじいやが、こんな悪い人間なんてすぐにやっつけてくれる。
大の男同士のバトルに巻き込まれ、振り飛ばされそうになりながら、ぼくは一生懸命黒耳の少年に手を伸ばした。少年は、不思議そうな顔をしながらぼくの手を取った。
「大丈夫、おいで! ぼくのお城に連れて行ってあげる」
その時、ぼくの中で誰かがそっと囁いたんだ。
――きっとこれが、運命の出会い。
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