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番外編 フレンドガチャを回そう
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『フレンドと一緒に引く無料ガチャが登場!』
アップデート後のFCOにログインした途端、こんな更新情報バナーが大きく映し出された。
圭太は思わず「よっしゃキタアア!」とガッツポーズを決めた。秒で「うるさい、圭太」と頭をスパンと殴られる。
「いってえ。暴力やめろ」
「あんた、最近ゲームしながら独り言多すぎ。うるさい。自粛しろ」
「家でまで自粛したくねえよ」
殴ってきたのはリビングで同じくスマホを触っていた姉の碧依だ。漫画を読むのに集中しているから黙れと言う。なんという理不尽な責め。だったら自室で読めよ、と文句を言ってもまた叩かれるだけ。そのくせ反撃でもしようものなら「女に暴力振るうとか、最低じゃない」と最強に理不尽な攻撃用語を発してくる。
というわけで、いちいち姉の機嫌をとるのも面倒だ。圭太は誰にも聞こえない小声で文句を呟きながら再びFCOの画面に視線を戻した。待ちに待った久しぶりの神イベント。無料でレアキャラクターを手に入れることができるかもしれない、ビッグチャンスがやってきたのだ。
早速ラインに画面を共有する。送信相手はもちろん、『肉食べいこ』こと、安藤太一だ。
「明日から二人で引くガチャが復刻するんだ。一緒にやろうぜ」
「何それ、どんなやつ?」
「一日一回、無料で引けて、二人で同時に引くとそれぞれの引いたキャラどっちももらえるんだ。だから実質、無料で二回分のガチャができる。しかも過去レア復刻版」
「すげえ。それはお得だな!」
太一もすぐに食いついてくれた。初心者の太一は知らないシステムだし、始めたばかりの彼がまだもってないキャラばかり実装されているので、メリットしかない。レベル違いの圭太もまだ持ってないキャラを手に入れられる可能性が高いし、被ったとしても素材に変えられる。何より無料で、フレンドと二人で仲良く引けば、より一層得をするという、FCOならではの仲良しシステム。リアル友人兼ゲームフレンドがいないとできない仕組みだ。
ソロで遊んでいたときは「なんだこのクソなイベントは」と悪態ばかりついていたが、今となっては訂正したい。
友だちと一緒に挑戦し、片方だけがレアを引き当てても、相方に同じキャラが届くから、喜びを分かち合えるのだ。一人だけ爆死して落ち込む必要もないわけで。こんなガチャならいくら回してハズレを引いても、幸せでいられるに違いない。
明日電車の中で一緒に引こう。そう約束しただけで、圭太の表情筋は緩みまくりだ。
「うわ、きっしょ。圭太ラインみてニヤニヤしてる。なんなの、彼女?」
「違うわ!」
「ああ、じゃあ彼氏?」
「なんでそうなるっ、キモイのは姉ちゃんの方だろ」
「はーん? 隠したがるとか、怪しすぎるんですけど?」
そういう貴様はさっきまで濃厚くんずほぐれつなBLを読んでニヤニヤしてたくせに!
この姉、腐女子なり。太一や滝沢とのやりとりを見られたら、絶対おかしな方向に解釈されて揶揄われるに決まっている。トーク画面を覗かれそうになった圭太は、急いでスマホの画面を消してトイレに引き籠った。
**
ガチャ一日目。太一とスマホを突き合わせ、いっせーので引いた。
太一の画面にはそこそこ強い恒常キャラが一体。圭太の画面にはサポートのレアキャラが一体。
太一はどちらも新規排出キャラだったので、一度に二体も増えて大喜びだ。圭太の方でもよき強化素材になった。
「これがフレンドガチャか。すげえな、やり方が随分アナログだけど」
「だろう? 前あった時も、この時ばかりはネットでぼっち仲間を必死に探したよ」
フレンドなしには遊べないクソゲーってそういうことか。太一は本日の成果とガチャの真実を知って、なるほどなと何度も頷いていた。
そういえばその時に知り合ったのが、配信者Vチューバ――のサナだったなと思い出す。ふとディスコードに未読通知が一件ついていることに気づいて、圭太はそちらのアプリを開いた。
「……あ、サナ」
トーク画面を開いてから、しまったと圭太は眉をひそめた。そこには『フレンドガチャ、一緒に回そうぜ』と書いてあったのだ。
もう終わってしまったことは仕方ない。サナには申し訳ないが、彼女には他にもフレンドがたくさんいるだろう。
『悪い、もう回した』
するとまだ早朝だというのに、珍しく秒で返事が返ってきた。『嘘だろマジかよ、誰とやったんだよー裏切者め!』と半ギレな様子だ。
もしかすると夜中からずっと配信していて、寝ていないのではないだろうか。女のご機嫌とりは面倒だというのに。思わずはああとため息をついた。
アップデート後のFCOにログインした途端、こんな更新情報バナーが大きく映し出された。
圭太は思わず「よっしゃキタアア!」とガッツポーズを決めた。秒で「うるさい、圭太」と頭をスパンと殴られる。
「いってえ。暴力やめろ」
「あんた、最近ゲームしながら独り言多すぎ。うるさい。自粛しろ」
「家でまで自粛したくねえよ」
殴ってきたのはリビングで同じくスマホを触っていた姉の碧依だ。漫画を読むのに集中しているから黙れと言う。なんという理不尽な責め。だったら自室で読めよ、と文句を言ってもまた叩かれるだけ。そのくせ反撃でもしようものなら「女に暴力振るうとか、最低じゃない」と最強に理不尽な攻撃用語を発してくる。
というわけで、いちいち姉の機嫌をとるのも面倒だ。圭太は誰にも聞こえない小声で文句を呟きながら再びFCOの画面に視線を戻した。待ちに待った久しぶりの神イベント。無料でレアキャラクターを手に入れることができるかもしれない、ビッグチャンスがやってきたのだ。
早速ラインに画面を共有する。送信相手はもちろん、『肉食べいこ』こと、安藤太一だ。
「明日から二人で引くガチャが復刻するんだ。一緒にやろうぜ」
「何それ、どんなやつ?」
「一日一回、無料で引けて、二人で同時に引くとそれぞれの引いたキャラどっちももらえるんだ。だから実質、無料で二回分のガチャができる。しかも過去レア復刻版」
「すげえ。それはお得だな!」
太一もすぐに食いついてくれた。初心者の太一は知らないシステムだし、始めたばかりの彼がまだもってないキャラばかり実装されているので、メリットしかない。レベル違いの圭太もまだ持ってないキャラを手に入れられる可能性が高いし、被ったとしても素材に変えられる。何より無料で、フレンドと二人で仲良く引けば、より一層得をするという、FCOならではの仲良しシステム。リアル友人兼ゲームフレンドがいないとできない仕組みだ。
ソロで遊んでいたときは「なんだこのクソなイベントは」と悪態ばかりついていたが、今となっては訂正したい。
友だちと一緒に挑戦し、片方だけがレアを引き当てても、相方に同じキャラが届くから、喜びを分かち合えるのだ。一人だけ爆死して落ち込む必要もないわけで。こんなガチャならいくら回してハズレを引いても、幸せでいられるに違いない。
明日電車の中で一緒に引こう。そう約束しただけで、圭太の表情筋は緩みまくりだ。
「うわ、きっしょ。圭太ラインみてニヤニヤしてる。なんなの、彼女?」
「違うわ!」
「ああ、じゃあ彼氏?」
「なんでそうなるっ、キモイのは姉ちゃんの方だろ」
「はーん? 隠したがるとか、怪しすぎるんですけど?」
そういう貴様はさっきまで濃厚くんずほぐれつなBLを読んでニヤニヤしてたくせに!
この姉、腐女子なり。太一や滝沢とのやりとりを見られたら、絶対おかしな方向に解釈されて揶揄われるに決まっている。トーク画面を覗かれそうになった圭太は、急いでスマホの画面を消してトイレに引き籠った。
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ガチャ一日目。太一とスマホを突き合わせ、いっせーので引いた。
太一の画面にはそこそこ強い恒常キャラが一体。圭太の画面にはサポートのレアキャラが一体。
太一はどちらも新規排出キャラだったので、一度に二体も増えて大喜びだ。圭太の方でもよき強化素材になった。
「これがフレンドガチャか。すげえな、やり方が随分アナログだけど」
「だろう? 前あった時も、この時ばかりはネットでぼっち仲間を必死に探したよ」
フレンドなしには遊べないクソゲーってそういうことか。太一は本日の成果とガチャの真実を知って、なるほどなと何度も頷いていた。
そういえばその時に知り合ったのが、配信者Vチューバ――のサナだったなと思い出す。ふとディスコードに未読通知が一件ついていることに気づいて、圭太はそちらのアプリを開いた。
「……あ、サナ」
トーク画面を開いてから、しまったと圭太は眉をひそめた。そこには『フレンドガチャ、一緒に回そうぜ』と書いてあったのだ。
もう終わってしまったことは仕方ない。サナには申し訳ないが、彼女には他にもフレンドがたくさんいるだろう。
『悪い、もう回した』
するとまだ早朝だというのに、珍しく秒で返事が返ってきた。『嘘だろマジかよ、誰とやったんだよー裏切者め!』と半ギレな様子だ。
もしかすると夜中からずっと配信していて、寝ていないのではないだろうか。女のご機嫌とりは面倒だというのに。思わずはああとため息をついた。
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圭太君がこれからどんどん話せる子が増えていって最終的にはどれくらい友達が出来るのかな?とワクワクしておりますw
続きが楽しみです☺️
流風さん感想ありがとうございますー!
当時は大変でしたよね…でもなんだかんだで楽しい青春の日々を過ごされたようで何より!
圭太のフレンドリスト、現実も枠いっぱい埋まるといいですねえ(*'▽')応援してやってください!