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Lv.2 濃厚接触ゲーム
1 生存脱出をかけて
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「まあ俺は最初から白だと思ってたけどな。もし本当に安藤が感染者だったなら、サエは絶対濃厚接触者っつって保健所から連絡くるじゃん」
「あーうん、確かに」
「でもさあ。濃厚接触って一体どんくらいを言うんだ?」
「んー。ディープなキスとか?」
「そりゃあめちゃくちゃ濃厚だ!」
「おい滝沢、お前は馬鹿か? 現実あり得ないだろうが!」
「ええ、なんでよあり得なくないだろ?」
滝沢が寒い冗談で空気を和ませてくれようとしているのは分かるが、正直なところそのノリは今いらない。
(太一ドン引きしてんだろうが!)
だが圭太が噛みつくたび、滝沢はひょいと躱して何事もなかったかのように笑い飛ばす。座る太一の前を囲うように立ち、吊り革にぶら下がって諍う二人のやりとりを見ていた太一が、けらけらと笑いながらとんでもない爆弾発言を落とした。
「滝沢とケイタって、仲いいよね。夫婦みたい」
「「はあああ⁉」」
高校生活二度目の春がやってきた。
一年目は始まるや否や休校・オンライン授業になり、高校生としてのお楽しみは何一つ味わえないまま終わった。一年経った今、ようやく友人と過ごせる日常が戻りつつある。それでもまだ感染者数は右肩上がりのパンデミックワールドだ。マスクありの生活にも、儀式のような検温・消毒タイムにもすっかり慣れてきた。
散々な人間不信感や恐怖心を植え付けた一年二組の感染症騒ぎは、結局のところ知らない数人だけで流感し、休校には至らなかった。誰がそうなったのかわからないままだが、教師たちや大人が必死に隠し続ける理由もわからなくもない……と思えるようになった。感染疑惑が浮上しただけで村八分に合うと分かった以上、罹患したことは隠蔽したくもなるだろう。
「でもさあ、濃厚接触の可能性があるのかどうかくらいは教えてほしい。試合の前とかに会場で検査していきなり陽性って言われたら、もう逃げ場なくない? ダブルスだったらチームメイトに迷惑かかるし。マジで勘弁してほしい。濃厚接触があったって自覚してたら最初っから対策できんじゃん」
そう愚痴る太一の意見もごもっともだ。実際に同居の家族以外が新型ウイルス感染症に罹ったとして、どのように「感染の可能性」を提示してもらえるものなのか、同級生はおろか親たちも「知らない」と口を揃える。情報が不明瞭過ぎるせいか、ツイッターやフェイクニュースなんかがバズっていて、ネットだけには正確な情報が読み取れない。
(どれも怪しくて信用ならんな。ゲーム攻略みたいに、経験者の投稿まとめを見るしかないって感じか……)
そう思って新型ウイルス感染症に罹患した人の経験談やドキュメンタリーを調べ、いくつか視聴したのち、圭太はそっとブラウザを閉じた。
あまりにも衝撃的なニュースばかりで、手の震えが収まらない。ちょうど今日は彼岸で、親と寺院内の墓参りに来ていたから、場所も悪い。春一番のような冷たい突風が圭太を襲う。
「みんな死んでるかヤバい後遺症残ってるし……怖すぎだろこの病気。マジで世界は滅ぶのか。やっぱ滅ぶんじゃないのか!」
やはりここは令和のディストピアだ。ゆるゆると病原菌に侵されていくパンデミックの恐ろしさを知った圭太は、このデスゲームからの生存脱出を本気で願った。
とりあえず境内でパンパンと祈るところから。
「圭太、お寺では手を叩いたらダメって言ったでしょ。バチ当たりよ」
「あ……ごめんなさい」
「まあ俺は最初から白だと思ってたけどな。もし本当に安藤が感染者だったなら、サエは絶対濃厚接触者っつって保健所から連絡くるじゃん」
「あーうん、確かに」
「でもさあ。濃厚接触って一体どんくらいを言うんだ?」
「んー。ディープなキスとか?」
「そりゃあめちゃくちゃ濃厚だ!」
「おい滝沢、お前は馬鹿か? 現実あり得ないだろうが!」
「ええ、なんでよあり得なくないだろ?」
滝沢が寒い冗談で空気を和ませてくれようとしているのは分かるが、正直なところそのノリは今いらない。
(太一ドン引きしてんだろうが!)
だが圭太が噛みつくたび、滝沢はひょいと躱して何事もなかったかのように笑い飛ばす。座る太一の前を囲うように立ち、吊り革にぶら下がって諍う二人のやりとりを見ていた太一が、けらけらと笑いながらとんでもない爆弾発言を落とした。
「滝沢とケイタって、仲いいよね。夫婦みたい」
「「はあああ⁉」」
高校生活二度目の春がやってきた。
一年目は始まるや否や休校・オンライン授業になり、高校生としてのお楽しみは何一つ味わえないまま終わった。一年経った今、ようやく友人と過ごせる日常が戻りつつある。それでもまだ感染者数は右肩上がりのパンデミックワールドだ。マスクありの生活にも、儀式のような検温・消毒タイムにもすっかり慣れてきた。
散々な人間不信感や恐怖心を植え付けた一年二組の感染症騒ぎは、結局のところ知らない数人だけで流感し、休校には至らなかった。誰がそうなったのかわからないままだが、教師たちや大人が必死に隠し続ける理由もわからなくもない……と思えるようになった。感染疑惑が浮上しただけで村八分に合うと分かった以上、罹患したことは隠蔽したくもなるだろう。
「でもさあ、濃厚接触の可能性があるのかどうかくらいは教えてほしい。試合の前とかに会場で検査していきなり陽性って言われたら、もう逃げ場なくない? ダブルスだったらチームメイトに迷惑かかるし。マジで勘弁してほしい。濃厚接触があったって自覚してたら最初っから対策できんじゃん」
そう愚痴る太一の意見もごもっともだ。実際に同居の家族以外が新型ウイルス感染症に罹ったとして、どのように「感染の可能性」を提示してもらえるものなのか、同級生はおろか親たちも「知らない」と口を揃える。情報が不明瞭過ぎるせいか、ツイッターやフェイクニュースなんかがバズっていて、ネットだけには正確な情報が読み取れない。
(どれも怪しくて信用ならんな。ゲーム攻略みたいに、経験者の投稿まとめを見るしかないって感じか……)
そう思って新型ウイルス感染症に罹患した人の経験談やドキュメンタリーを調べ、いくつか視聴したのち、圭太はそっとブラウザを閉じた。
あまりにも衝撃的なニュースばかりで、手の震えが収まらない。ちょうど今日は彼岸で、親と寺院内の墓参りに来ていたから、場所も悪い。春一番のような冷たい突風が圭太を襲う。
「みんな死んでるかヤバい後遺症残ってるし……怖すぎだろこの病気。マジで世界は滅ぶのか。やっぱ滅ぶんじゃないのか!」
やはりここは令和のディストピアだ。ゆるゆると病原菌に侵されていくパンデミックの恐ろしさを知った圭太は、このデスゲームからの生存脱出を本気で願った。
とりあえず境内でパンパンと祈るところから。
「圭太、お寺では手を叩いたらダメって言ったでしょ。バチ当たりよ」
「あ……ごめんなさい」
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