フレンドコード▼陰キャなゲーマーだけど、リア充したい

さくら怜音/黒桜

文字の大きさ
5 / 33
Lv.1 ゲームフレンド ≧ リア友

5 勝ち組陽キャの襲撃

しおりを挟む
**

 季節はあっという間に秋を駆け抜けていく。
 徐々に通常の学校生活が戻ってきたクラス内では、あちこちで雑談が聴こえてくるようになった。
 それでも中学校の頃を思うと、随分静かだ。代わりにリア充発案のライングループができているらしい。だが圭太はまだ誰とも連絡先を交換したことがないので、実情を知りえない。別に知りたいとも思わなかった。
 
「なあサエ。お前、二組の安藤太一あんどうたいちと仲いい?」
 
 昼休み。一年三組の教室で一人弁当を食べ終え、鞄からスマホを取り出した矢先のことだ。最初は誰のことを言っているかわからなくて、圭太は首を傾げた。すると質問してきたクラスメイトの滝沢幸一たきざわこういちは「電車で」とニヤニヤしながら圭太の肩に腕を絡めてきた。
 
「こんぐらいの至近距離で、仲良さそうにしゃべってんの見かけたけど」
「……はあ」
 
 滝沢はクラスの中でもダントツの陽キャで、誰彼構わず近い距離で話かけてくる輩だ。そのくせ無駄に顔がいいし友人も多い。
 
(あいつに似たタイプだけど、もひとつチャラい感じがするっていうか、馴れ馴れしいな)
 
 過去の経験からいくと、大抵こういう人間にはうざいほど絡まれるか、嫌われるの二択なのだが――。返事に困っていると、
 
「三枝に浮気してんじゃねえよ、滝っち」
「密集密接密着!」
 
 後ろから誰かにドカッと蹴りを入れられ、滝沢がウシガエルみたいな奇声を発した。捕まっていたせいで一緒に圭太の身体も揺れて、スマホを落としそうになる。
 蹴ったのは黒縁眼鏡のよく似合うクラス委員長。名前は覚えていない。その後ろで「滝沢と三枝って……もしかして、デキてんの?」と腰をくねらせ演技がかった発言をするのは多聞歩夢たもんあゆむ。滝沢と最も仲がいい、腰巾着のような男だ。た行が苗字の二人は、出席番号で並んだ最初の席の隣にいた連中だった。
 
「ほれ見ろ、滝っち一筋の歩夢が泣いてるぞ」
「いやこんなの浮気じゃねーし。俺は八方美人だからクラスみんな好きだよ」
「きゃはは最低!」
 
 こんな女子受けするBL茶番劇が始まるのは今に始まったことではない。
 
(クッソうるせえ。陽キャはこれだから嫌いだ)
 
 いじめられるよりはマシだが、人を勝手につまらないネタに仕込まないでほしい。
 だが曲がりなりにもこの連中とはあと二年半は一緒に生活しなければならない。逆らうと後が面倒なので無視することにした。
 滝沢は授業が再開してすぐ「恋愛は男女どっちでもイケる」とカミングアウトしていて、瞬く間にクラス全員からの支持を獲得した。まさに高校デビューに成功した覇者のような存在だ。
 こんな男から勝手に「サエ」と呼ばれるのも気に食わないが、つまらない嫉妬で事を荒げたくないので質問には答えておく。
 
「安藤太一……って、肉食べ野郎のことか」
「? 肉がどうした」
「なんでもない。あいつとは登校中にゲームやってんだよ、いっつも電車で一緒になるから」
「へえ、なんのゲーム?」
「FCOっていう……お前らは知らないと思うけど」
「うん、知らん。それ可愛い女子いる?」
「は? まあ一応……」
 
 潔く「知らない」と言いつつも、興味を示してくれたことが嬉しい。
 ここは賭けに出るかと思い、圭太はFCOの中で最も人気な美少女キャラの立ち絵を画面に表示した。もちろん、圭太の推しキャラだ。
 さあどう出る。二次元好きのオタクを罵倒するか、興味ないと嘲笑うか、それとも――。
 
「うはあ! これはよき!」
 
 すると滝沢はスマホを奪い取って食い入るように見てくる。取り巻きの二人は呆れた様子。
 
「お胸のラインがエッチでよいですな」
「ええ、お前……その言い方はちょっと」
「いやあ、ちっぱいは正義だろ。サエはどっち派?」
 
 もしやこの男、美少女オタクか。綺麗な顔をしておきながら意外な趣味をお持ちのようだ。圭太は思わず肩をすくめた。クラスの女子がその発言を聞いたらドン引きするに違いない。既に取り巻きの二人が、気持ち悪そうな顔をしてこちらを見ていた。
 
「そういや滝っちって二次元女でもヌケるって言ってたよな。特にロリ」
「守備範囲広すぎだろ」
「何言ってんだ。ロリは現実に手を出せないから二次元を愛でるんだよ」
「うわあ」
 
 取り巻きと滝沢の間で交わされる会話はよく配信で聞くようなネタだ。そして圭太はこの場合、滝沢に一票投じる。わかりみが深い。
 擁護せずとも滝沢は己の主張を堂々と声に出して、それがさも正義かのように語り続ける。周りはすっかり気圧されているようだ。クラスの人気者パワーはなかなか侮れない。黙ってみていると、急に会話の矛先が自分に向けられた。
 
「三枝もそうなん? 美少女ゲーってあれだろ、エロいやつだろ」
「べ……別にそういうのやってるわけじゃない」
「歩夢ーそれは偏見だぞ。誰しも美少女キャラが好きとは限らねえ」
「滝沢……」
 
 コイツいいこと言うなと思った途端、滝沢はへらっと笑って圭太のスマホを皆の前に突き出した。
 
「サエはどっちかっていうとゲーム廃人じゃん。見ろよこいつのスマホ、こんなにゲームのアプリ入ってる。やっば、すげくね?」
 
 滝沢はいつの間にかスマホをホーム画面に戻していたのだ。
 圭太は思わず滝沢の腕に掴みかかり、「やめろ、人のスマホ勝手に見るな!」と怒鳴った。拍子でガタガタッと椅子が倒れ、昼休みの雑談で盛り上がっていたクラスが一瞬、しんと静まり返る。
 すると「誰だー教室でスマホ使ってる奴」と冷たい声が返ってきた。ぎょっとして振り向くと、そこには担任が仁王立ちしていた。
 
「滝沢、三枝。放課後先生のとこに来なさい」
「はーい……」
 
 スマホは滝沢の手から担任教師に没収されてしまった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】『80年を超越した恋~令和の世で再会した元特攻隊員の自衛官と元女子挺身隊の祖母を持つ女の子のシンクロニシティラブストーリー』

M‐赤井翼
現代文学
赤井です。今回は「恋愛小説」です(笑)。 舞台は令和7年と昭和20年の陸軍航空隊の特攻部隊の宿舎「赤糸旅館」です。 80年の時を経て2つの恋愛を描いていきます。 「特攻隊」という「難しい題材」を扱いますので、かなり真面目に資料集めをして制作しました。 「第20振武隊」という実在する部隊が出てきますが、基本的に事実に基づいた背景を活かした「フィクション」作品と思ってお読みください。 日本を護ってくれた「先人」に尊敬の念をもって書きましたので、ほとんどおふざけは有りません。 過去、一番真面目に書いた作品となりました。 ラストは結構ややこしいので前半からの「フラグ」を拾いながら読んでいただくと楽しんでもらえると思います。 全39チャプターですので最後までお付き合いいただけると嬉しいです。 それでは「よろひこー」! (⋈◍>◡<◍)。✧💖 追伸 まあ、堅苦しく読んで下さいとは言いませんがいつもと違って、ちょっと気持ちを引き締めて読んでもらいたいです。合掌。 (。-人-。)

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

N -Revolution

フロイライン
ライト文芸
プロレスラーを目指す桐生珀は、何度も入門試験をクリアできず、ひょんな事からニューハーフプロレスの団体への参加を持ちかけられるが…

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...