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一冊目 キス魔はどっち!? ~キスしないと眠れない?男の話
……③
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(あれ……?)
風呂から上がってきたものの、リビングでゲームでもしているだろうと思っていた光がいない。
自室か、と思ってそのドアを開けてみると、電子キーボードの上に指を置いたまま、座って居眠りしている光がそこにいた。
しかも髪の毛はまだ濡れたまま。
よれたTシャツ一枚とトランクスのみで、演奏中のポーズのまま寝ている光に唖然としてしまう。
「またお前は……風邪ひくぞ」
子どもだけで好き放題に暮らしているけれど、彼は心臓と肺に持病を抱える病弱な身体の持ち主だ。熱を出して寝込むのは日常茶飯事。放っておくとすぐ肺炎になったり喘息発作で倒れ、そのまま数日入院してしまう。
「こら光、そんな恰好で寝るな」
「――ん……?」
勝行に叩き起こされ、寝ぼけ眼で空中を見つめた光は、時間差でふにゃりと笑い抱きついてきた。
「てめー風呂なげーんだよバカ……女子かよ……」
間延びした声で、でも言っていることとやっていることは正直めちゃくちゃだ。
自分が風呂から上がってくるのを待っていてくれたのは何となくわかる。わかるのだが。
(か、可愛い……ワンコか……って絆されたらダメだ、しっかりしろ俺)
「ちゃんと髪の毛乾かせ!」
「かわいた……」
まだ中がじっとり濡れている髪をタオルでガシガシ拭き直しながら、勝行は嘘つけ全然じゃないか、と文句を連ねる。
その間、光は大人しく頭を差し出し、されるがままだ。
少々乱暴気味にされても全然気にせず、気持ちよさそうに目を閉じながら、彼は勝行の腕の中でぼんやり呟いた。
「おやすみのキスはぁ……」
「は? ――もう寝てるくせに……」
睡魔に勝てない眠り姫は既にウトウト船をこいでいる。こんな状況でキスなんかしたら、ベッドに行かないまま即寝落ちるのは確定だ。
タオルを置き、甘ったるい声でお休み、と言いながら耳朶に息を吹きかけたら、「んンッ……」と鼻から抜ける喘ぎ声が漏れてきた。そのまま優しく唇を重ねてやると、完全に落ちた気持ちよさげな寝息がすぐに聴こえてくる。
「はぁ……可愛い。こんな甘ったれ義弟が同い年だなんて……信じられない」
その猫のような寝顔を見つめながら、勝行はその頬に、首筋に、何度となく口づけしては吸い付いた。
同じシャンプーと石鹸を使ってるはずなのに、なぜか光だけ甘い蜜の香りがする。普段甘いものは苦手な勝行でさえ、思わず食べたくなるような、不思議な香り。
どうしてこんなに美味しそうなんだろう。そもそも人間を食べようだなんて、猟奇的な思考もいいところだ。だから勝行は都合のいいように解釈して、これも全部『好きだから』なんだと思うことにしている。
もうすっかり熟睡しているのをいいことに、勝行はその身体中に無限のキスを落としては撫で、半渇きの髪を指で梳いた。
『俺、お前になら抱かれてもいいよ』
『じゃあ俺、もう勝行としかセックスしないって約束する』
光のことが好きだ。
そう告白したら、彼はあっさりこんな返事をくれた。
それは数か月前のこと。
合意ではないにせよ、複数の男と何度も交わり凌辱された身体だと暴露した彼が、何の気なしに言ったその一言が、勝行の人生をじわり狂わせていく。
(俺……男は好きじゃないのに……)
どうしてこいつがいいんだろう。
光にはさわりたい。
その衝動が、どうにも収まらない。
再び身体が熱くなり、股間に全身の血流が集中していく感覚に襲われる。折角風呂上りだったのに気づけば汗ばんでいた。
自分に抱きついたまま眠る光に風邪をひかせるわけにいかない。そっと抱き上げ、ベッドに下ろしながら、また何度もあちこちに唇を這わす。
はっと気づけば、光の身体は赤い痣だらけになっていた。
「うわ……ヤバ……い……」
(あれ……?)
風呂から上がってきたものの、リビングでゲームでもしているだろうと思っていた光がいない。
自室か、と思ってそのドアを開けてみると、電子キーボードの上に指を置いたまま、座って居眠りしている光がそこにいた。
しかも髪の毛はまだ濡れたまま。
よれたTシャツ一枚とトランクスのみで、演奏中のポーズのまま寝ている光に唖然としてしまう。
「またお前は……風邪ひくぞ」
子どもだけで好き放題に暮らしているけれど、彼は心臓と肺に持病を抱える病弱な身体の持ち主だ。熱を出して寝込むのは日常茶飯事。放っておくとすぐ肺炎になったり喘息発作で倒れ、そのまま数日入院してしまう。
「こら光、そんな恰好で寝るな」
「――ん……?」
勝行に叩き起こされ、寝ぼけ眼で空中を見つめた光は、時間差でふにゃりと笑い抱きついてきた。
「てめー風呂なげーんだよバカ……女子かよ……」
間延びした声で、でも言っていることとやっていることは正直めちゃくちゃだ。
自分が風呂から上がってくるのを待っていてくれたのは何となくわかる。わかるのだが。
(か、可愛い……ワンコか……って絆されたらダメだ、しっかりしろ俺)
「ちゃんと髪の毛乾かせ!」
「かわいた……」
まだ中がじっとり濡れている髪をタオルでガシガシ拭き直しながら、勝行は嘘つけ全然じゃないか、と文句を連ねる。
その間、光は大人しく頭を差し出し、されるがままだ。
少々乱暴気味にされても全然気にせず、気持ちよさそうに目を閉じながら、彼は勝行の腕の中でぼんやり呟いた。
「おやすみのキスはぁ……」
「は? ――もう寝てるくせに……」
睡魔に勝てない眠り姫は既にウトウト船をこいでいる。こんな状況でキスなんかしたら、ベッドに行かないまま即寝落ちるのは確定だ。
タオルを置き、甘ったるい声でお休み、と言いながら耳朶に息を吹きかけたら、「んンッ……」と鼻から抜ける喘ぎ声が漏れてきた。そのまま優しく唇を重ねてやると、完全に落ちた気持ちよさげな寝息がすぐに聴こえてくる。
「はぁ……可愛い。こんな甘ったれ義弟が同い年だなんて……信じられない」
その猫のような寝顔を見つめながら、勝行はその頬に、首筋に、何度となく口づけしては吸い付いた。
同じシャンプーと石鹸を使ってるはずなのに、なぜか光だけ甘い蜜の香りがする。普段甘いものは苦手な勝行でさえ、思わず食べたくなるような、不思議な香り。
どうしてこんなに美味しそうなんだろう。そもそも人間を食べようだなんて、猟奇的な思考もいいところだ。だから勝行は都合のいいように解釈して、これも全部『好きだから』なんだと思うことにしている。
もうすっかり熟睡しているのをいいことに、勝行はその身体中に無限のキスを落としては撫で、半渇きの髪を指で梳いた。
『俺、お前になら抱かれてもいいよ』
『じゃあ俺、もう勝行としかセックスしないって約束する』
光のことが好きだ。
そう告白したら、彼はあっさりこんな返事をくれた。
それは数か月前のこと。
合意ではないにせよ、複数の男と何度も交わり凌辱された身体だと暴露した彼が、何の気なしに言ったその一言が、勝行の人生をじわり狂わせていく。
(俺……男は好きじゃないのに……)
どうしてこいつがいいんだろう。
光にはさわりたい。
その衝動が、どうにも収まらない。
再び身体が熱くなり、股間に全身の血流が集中していく感覚に襲われる。折角風呂上りだったのに気づけば汗ばんでいた。
自分に抱きついたまま眠る光に風邪をひかせるわけにいかない。そっと抱き上げ、ベッドに下ろしながら、また何度もあちこちに唇を這わす。
はっと気づけば、光の身体は赤い痣だらけになっていた。
「うわ……ヤバ……い……」
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