巻き戻った王子は幸せを掴む【三章完結】

そろふぃ

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4章 惆悵と本懐

8話 

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あの村を出て2週間ほど経った。それまで追手が来る気配はなかった。後少しでアレリア国に入ることができる、国に入ってしまえばこちらが有利になるはずだ。

「ラン、もうすぐで国に入るが、城に着くまでは正体がバレないようにしよう」

「うん」

「後少しだ」

「うん!」

まだ城まで数日はかかるとしても目的は果たしたようなものなので浮かれてしまうのはしょうがないだろう。

「アレリア国へようこそ!入国証はございますか?」

「いや、旅人なんだ。この国も初めて来るんだ」

「そうなんですね!そちらは、、、奥さんですか?いいですね~夫婦で旅ですかぁ!あ、入国は銀貨1枚です!どうも!じゃあ、我が国をずいぶんに楽しんでくださいね!」

怒涛の勢いで話され、気づいたら国へ入国を遂げていて、訂正する暇もなかった。ロイドとふ、夫婦なんて、、、ロイドに申し訳ない。ちらっと横を見てみるとロイドは一切気にしていないようだった。なんか少し残念がっている自分に首を傾げながら視線を元に戻した。ロイドの耳が赤いことには気づかずに、、、。

「まずは先に進もう。できる限り中心部に行ってから憲兵でも騎士でも捕まえよう」

「うん」

フードを被ってひっそりと移動する。ロイドもここではフランよりも顔を知られている有名人なので顔を隠していかなければいけない。どちらかといえば髪さえ隠していればフランがばれることはないだろう。

ある程度進んだあと、人気がなくなった先にある古びた宿で一泊することとなった。

「今日はここで休もう」

「うん」

古びた宿ではあるが人は少なくもいてみな、お酒を飲みながら世間話をしていた。宿をとってとりあえず夕飯を食べることにしてあまり人の視線が集まらない場所に腰掛けた。

「そういえば、まだ見つかってないらしいよな」

「あぁ、早く見つけて、さっさと罰せられればいいんだ」

ふと、聞こえてきた話が耳に入ってきた。一番近くにいた3人組の男たちが酔っ払いながら難しそうな顔をして話していた。

「殺された中には俺の友人の子もいるんだ。許せねぇよ。最近おとなしいと思ってたが、やっと本性を表したんだな」

「あぁ、通りのよく行く酒場のマスターの兄さんも殺されているし、流石の皇帝陛下でももう許しはしねぇだろうな」

「あぁ」

皇帝陛下の言葉にロイドも反応したようで彼らの話に耳を傾けて入るらしい。ここまであまり国の話を聞いていなかったため、ここにきて詳しい話が聞けるのはありがたいのだろう。

「でもよ、指名手配は出せれてねぇんだろう?あんな細っこい手でやれるのかよ」

「あぁ?どうせお綺麗なあの顔で誘惑してその隙に殺しでもしたんだろう?頭も良くなくて剣も魔法も使えないあいつにはもってこいの方法じゃねぇか」

「それは、、、そうなんだがなぁ」

二人の話を何か釈然としないように聞いてた男が口を開いた。何か思うところがあったのかいまだになんとも言い難い顔をしている。

「なんだよ、お前、あいつの噂聞いてないのか?」

「聞いてるさ、聞いてるけどさ、確かに綺麗な顔をしていると思うけど、、、。あいつまでもが誘惑されるなんてのがどうにも釈然としなくてな、、、。国だって何か言ってるわけでもなくて捜索隊が出てるだけなんだろう?」

「陛下とて子供には甘いってことなんだろう」

フランは嫌に心臓がドクドクとなに打つのを感じた。なんの話をして要るのか判らないはずなのに冷や汗が止まらないのだ。

「とにかく、あいつは裏切り者さ!噂じゃ魔族と手を組んでこの国を手に入れようとしているそうじゃないか!さっさと見つかって処刑でもなんでもされればいいんだあんなくそ王子なんて」

「そうだそうだ、元々第三王子なんていてもいなくてもかわらねぇんださっさといなくなっちまえばいいのさ」

「!?」

ガタッと咄嗟に立ち上がってしまい、話していた人たちは急に音の下方に目線を向けた。

「ラン、いこう」

そんな目線も気づかないほど呆然としていたフランが咄嗟に上の部屋までひっぱってくれていた。
あの人たちの話から察するに、フランたちが消えた時に死んでいた騎士たちを殺したのがフランと言うことになっていて、今、隣国との関係が悪いこと、それに魔族が関係していることがどこからか漏れてしまったのだろう。今姿がないフランがその全てを手引きしたとそんな噂が国に広まっているのだろう。国の端ですらこんな噂が立っているのだから中心部はすごいことになっているはずだ。

噂もとは国中心部、おそらくフランが行方不明となり、捜索隊が出たところを民が勘違いして色々なことが他人に漏れて歪んでいったのだろう。

「、、、っ、、、ふ、ぅ」

「ラン、、、」

ここまで頑張って国ために、みんなのために情報を共有するために頑張ってきたことが無駄だと言われたような、心に直接剣を刺されたようにすごく痛かった。

それにもし、そんな噂をアリアや父様が、兄様たちが信じてしまったら、、、、そうしたらどうしたらいいのだろうか、、、。
もうなにもわからない。

感情がぐちゃぐちゃになってしまって過呼吸になりそうになった時急に体を強く、暖かく包まれていた。

「っ、、、ろぃ」

「大丈夫。陛下も、お兄様がたもみんな優しいお方だ。根も葉もない噂を信じるような人はいない」

「!、、、、」

「皆、必死にあなたを探している。捕まえるためじゃない、またあって抱きしめるために探しているんだ。なのに、諦めてしまうのか?」

すっと心に通る声に興奮していた気持ちがどんどん萎えていき落ち着いていった。

「ぅうん、、、、俺も、、、会いたい、、、」

「じゃあ、頑張ろう。噂なんて気にしなくていい。こういうところで聞く噂は8割型脚色されているんだ」

「ぐすっ、、、そう、なの?」

「あぁ、あの男たちの1人も納得いってない様子だっただろう?みんながみんな間に受けているわけじゃない、、、だから気にしなくていい、、、もし嫌なことが聞こえてきたら俺が耳を塞いでやる」

「、、、ふ、ふふ、、、ありがと」

照れているのか少し耳が赤くなったところを初めてみて、ロイドを可愛いと思ってしまう。今までかっこいいとしか思ったことなかったから新鮮な気分だ。ロイドはあった時もそうだけどやっぱり優しい。どんどん心があったかくなってきて溢れてしまいそう。彼の優しさが苦しい記憶に縛られた自分を溶かしてくれるようだった。

まだ小さく儚い炎がフランの中でその存在を主張するように大きくなっていく。その存在を知るのはまだ先だろう。
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