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4章 惆悵と本懐

5話 

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準備を着々と進めていきとうとう城から脱出する時が来た。
窓から外を伺うと、出発の合図の馬車が城外へ出て行くのが見える。

「、、、いきましょう」

「うん」

緊張する心をどうにか落ち着け、静かに行動に移した。
部屋にある脱出用の抜け道を通っていけば近場の林に出た。

「半日ほど歩きっぱなしになります。お疲れになられた時はすぐに言ってくださね」

「う、うん」

森の中、色々な音がしていた。その中でただロイドとフランの草木を踏む音が周りに響いていた。この周辺に魔物は比較的いないと言っていたが全くいないわけではないので慎重に進んでいった。

「フラン様、大丈夫ですか?」

「ぅ、うん、だ、大丈夫」

3時間ほど歩き続けてフランはすでに息が切れている状態だった。走っているわけではないが、道が悪く、上がったり下がったりと変わり続けて行くため余計に疲れてしまうのだろう。

「少し休憩しますか?」

「だい、大丈夫、は、早く行かないと、、、」

ただでさえ帰るのに時間がとてもかかる上に追っ手が来るまでにできるだけあの城から離れたいのだ。それにできれば早くこの国を出たいのだ。

「そう、ですか、、、もう少ししたらこの森を出られると思います。そこまで頑張ってください」

「うん」

足をなんとか動かし、汗を拭いながらどうにか前へ前へと進んでいく。チラリと横にいるロイドを見ると、汗も出しておらず、息も切れていない。全然余裕そうなロイドにすごいなっと思う。確かにいつもただ本を読んでいるだけでほとんど動いていないから当たり前なのかもしれないが、、、少し運動をした方がいいのかもしれない。

そしてさらに3時間ほど、城を出て6時間とうとう限界を迎え足がもつれ倒れてしまった。

「フラン王子!」

「ご、ごめん、すぐ、たつから、、、」

「、、、先に謝っておきます。申し訳ありません。失礼します」

「?、、、あっ、わぁ」

どうにか立ちあがろうとするのだが足がプルプルしてうまく立ち上がれない。そんな時、両脇に手を差し込まれヒョイっと体が宙に浮きそのままロイドに抱き上げられていた。

「あ、ろ、ロイド、俺、自分で、、、」

「いえ、フラン様はよく頑張りました。あとは私に任せてください。もう少しすれば一番近い村に着きます。そこで馬を借りられればもっと早く着くことができるでしょう」

「で、でも、、、」

「フラン様、少し早めに走りますので、下を噛まないようにしていてください。怖かったら目を瞑っていてくださいね」

「え」

何?っという言葉は口から出ることはなかった。一瞬にして景色が変わっていく。空気を切る音が聞こえるほどのスピードで言葉を失ってしまった。

どんどん変わっていく景色に驚きながらも、こんなことならもっと早くロイドに従っていればよかったんじゃっと少し思ってしまう。

そして本来あと6、7時間かかる道を1時間ほどで着いてしまった。

「フラン様、どこか痛いところは、、、フラン様?」

「、、、ごめん、なさい」

「!?フラン様?な、何を謝ることがあるのですか」

「も、もう少し早く、ロイドに頼んでいればもっと早くついたのかもしれないのに、、、」

「いえ、そんなことはありません」

「、、、」

「フラン様、あれは魔法ですよ」

「魔法?」

「えぇ、ブーストです。身体能力をあげいつもより早く動くことができたのです。私の魔力量は一般的な平民よりは多いですが、貴族様と比較するとそこまで多いわけでもないのでブーストは持ってせいぜい1時間少しほど、だから、フラン様があそこまで頑張ってくださったから私はここまで一度も止まらずに来れたのです。フラン様の頑張りのおかげですよ」

「!、、、本当?」

「えぇ」

暗い気持ちが少しずつ晴れていく、でも、やっぱりと、まだ思ってしまうけれどロイドの優しい眼差しに少し自分に自信を持つことができる。村を少し近づいてみると、ここにはまだ魔族が来ていないのか、小さな村に興味がないのか、村びとに変化はない。大きくもなく小さすぎない村だった。

「では、フラン様ここから私たちは旅人です。私のことはロイと呼んでください。私は、ご無礼を承知の上でランと呼ばせていただきます。すこし乱暴な言い方をしてしまうかもしれませんがどうかお許しください」

「うん」

「それと、少し失礼します」

「?」

手を伸ばし頭に触れられ少しドキッとするがロイドが酷いことをしないとわかっているので大人しく従った。数秒待っていると温かい感覚がスーッと引いていく。

「?何かした?」

「髪の色を少し変えました。これは一日ほど持つので効果は切れますが、フラン様の髪色は少し特殊ですので、、、」

「?」

はらりと落ちる髪色は今までのように黒色ではなくベージュのような色合いになっていた。

「ではいきましょ、、いえ、いこう」

「う、うん」

少し緊張しながら村へと足を向けた。
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