巻き戻った王子は幸せを掴む【三章完結】

そろふぃ

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3章 不識と無情

9話 

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ベルリアの元にはそれから数日はいたが描くものがあるからとなかなか会えずに終わってしまった。なので今日からフランが行くのは皇太子のもとへ行くことになる。

流石に皇太子の仕事に一人で行くわけにはいかず、護衛もつけることとなった。そこで護衛に選ばれたのがロイドヴァルトだった。面識があり、初めからフランに対しても一貫した態度し、変えたりしないのは彼ぐらいだった。それに加え、彼の強さと忍耐力は王族が目に欠けるほどだ。彼が民を近くで守りたいためとその信念から騎士団に入っており、大抵は城下で民の安全を見守っている。もし今も城内にいれば、王族の護衛に選ばれていたはずだろう。

何よりも最近のフランの漂う色気にも彼ならば大丈夫だろうと陛下及び兄妹たちから多大なる信頼をよさられていたのも大きい。

「参りましょう」

「うん」

フランもロイドならばあまり怖くなく、それ以上にロイドヴァルト=カレーパンをくれた人=いい人・優しい人、と覚えているためフランにとっては今のところ美味しい食べ物を教えてくれた親切で優しい人としか思っていない。

「本日よりフラン殿下には皇太子殿下の付き添い及び代理人として隣国に赴いていただきます」

「?代理人?」

「はい。時間がないため私から説明しますが後に皇太子殿下からもご説明はいただくと思います。近頃、隣国との連絡が取れず交易に支障をきたしています。なので、隣国、ガンディラス国の王と友である皇太子殿下が直接出向くことになったのです。フラン殿下は今回、皇太子殿下の付き添い、そして陛下の代理となります」

「!?俺が?陛下の、、、代理?」

「はい。急遽決まったことのため、陛下が出向くことができないのです」

「、、、、」

ロイドが言っていることを疑うわけではないが、フランが陛下の代理になるとは思わない。おそらく何かフランがついていくにたる理由が欲しかったのだろう。それに陛下の代理などと大きな信頼をよさられているのだろうかと心がポカポカと温かくなってくる。

「フラン殿下?」

「!な、なんでもない」

「そうですか。それと今回はルディアン殿下もご一緒に赴きます」

「ルディアンも?」

「はい。連絡が取れないということは、ガンディラスと中間地点にある監察館に何かあったということ。加え、最近のガンディラス国には悪い噂が多いのでルディアン殿下は護衛として一緒に行くのです」

「そう」

監察館とは同盟国を結んだ国との中間地点においた建物だ。もし何か国で起きた場合に監察館に行けば転移陣が置いてあり、どちらの国にもすぐにいくことができるのだ。そこからの連絡もなく、かといって誰かが転移してくることはない。詰まるところ、隣国で争いが起こっており、援助を求めることもできずに劣勢なのか、疫病が発生しすでに皆こと切れてしまっているのか、考えられることは悪いことばかりだ。

「フラン」

「!兄様」

「今日からよろしくね」

「う、うん(それはこっちがいうことなんじゃ、、、)」

「フランとは一緒にお仕事をしたことがないからね。少し緊張するよ」

「兄様でも緊張したりするの?」

「もちろん、俺も人の子、恐れるものもあれば緊張だってするよ。ただ、皇太子である以上、それを表には出していないだけだよ」

「そう、なんだ」

昔から兄様のすることはなんでも完璧にそつなくこなしていた。勉学も強さも社交性もなんでも完璧にこなしていて、国民からは神に愛されしものとさえ言われるほどに、兄様には弱点がなかった。常に優しい目をむけ、どんな悪辣な人間にも手を差し伸べる優しさを持ち、強さも戦闘に特化したルディアンを圧倒するほどだ。そんな兄様も緊張をし恐れるものがあるだなんてフランは持ったく思わなかった。

「それに、遠い国にこんな言葉があるんだ」

「?」

「『失敗は成功のもと』私はこの言葉を聞いた時確かにそうだと思った。私だって幼い頃は失敗をし、そして失敗したからこそ気づけたことも多くある。多くの失敗を重ね、多くの気づきを得る。これほど素晴らしいことはない」

「うん」

「フランだってまだ新しいことばかりなんだ。失敗を恐れては行けないよ」

「うん!」

優しく微笑まれ、緊張気味でやってきたフランの緊張を溶かしてくれた。
準備が整ったのか城門にはいくつかの馬車と荷物を押している荷車があった。
護衛騎士達の中にはルディアン達もいて少し照れているようだった。

「じゃあ行こうかフラン」

「うん」

そしてフラン達はガンディラスへと向かった。
   
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