巻き戻った王子は幸せを掴む【三章完結】

そろふぃ

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一章 過去と今

3話

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あの日以降数度レイドルトは訪れるようになった。フランをじっと観察するように見てはお茶をさっさと飲んで帰っていく。最近はきていないがあの目線は居心地が悪くなって気が休まらないので少し困っている。最近のルーティーンのようなお茶をしているとアリアが一冊の本を差し出してきた。

「?」

「最近、流行っている小説です。よければ読んでみませんか?」

「、、、、うん」

勧められた小説は勇者が魔王を倒す話だった。
前は本なんて全く読まなかったが日がな一日ぼーっとするよりは本を読んでた方が楽しいかもしれないと思い、アリアからのおすすめの本を読むようになった。
最初こそ読むのに時間がかかっていたが、最近は本を読むのに慣れていき、1日で数冊読めるぐらいになっていた。

「、、、アリア」

「はい」

「次の本が読みたい」

「ふふ、すぐお持ちしますね」

「、、、」

アリアの入れた美味しい紅茶を飲みながらアリアを待つことにした。最近は他の王子たちも訪ねることなく平和に暮らしている。問題があるとすれば明日から隣国のものたちが来るということぐらいだ。パーティーや結婚式などには少しだけ出席すればいいからそれ以外は部屋でおとなしくすればいいだろう。

そこで俺は考えるのをやめてアリアが新しく持ってきた本に目を移した。


いつもは静かな王宮は今日は忙しそうにみんなが動き回っていた。
俺は特に何もすることはない。迎えは第一王女がするし、その他の人の相手は皇太子である第一王子がするし、第三で嫌われている俺は特にすることはない。だからいつものように俺は本を読んでいた。あの日の食事会以降自分の部屋でしか食事はしていないし、迷惑はかけていないし今のままならあの時のようなことは起こらないだろう。

ひと段落ついたのかアリアがいつものようにお茶を持ってきた。

「王子すいません今日はお茶菓子をお作りできませんでしたので昨日と同じお茶菓子になってしまうのですが、、、」

「、、、いいよ。今日は忙しそうだから、、、。お茶だって毎日じゃなくても、、、」

「いいえ、王子はお茶を持って来ませんとお食事以外で飲み物を飲もうと思わないではありませんか。最近暖かくなってきましたし水分はちゃんと取らないとダメですよ」

「わ、わかった」

「はい」

最近、アリアがよくわからない。でも悪い気はしない。なぜか心がぽかぽかする。
そうやってアリアが部屋を掃除する間お茶を飲みながら本を読んでいた。そろそろ日が暮れ始めた頃、誰かが訪れてきた。弱々しくトントンと叩かれた扉に最初は気のせいだとも思ったが2度あれば気のせいじゃない。アリアに視線を向けるとわかったように扉に近づいていった。

「どちら様ですか?」

扉越しに尋ねると、幼い声が聞こえた。

「!あ、あの、み、道に迷ってしまって、、、」

そんな幼い女の子の声が聞こえてアリアはゆっくりと扉を開けた。そこには5、6歳ほどの女の子がいた。

「あの、あの、お兄様と来たんだけど、その、道に迷っちゃって、あの、、、」

おそらく隣国の使者とともにきた子供だろう。子供は泣きそうになりながらも一生懸命伝えようとしていた。

「、、、アリア、使者たちのところへ連れて行ってあげて」

「あ、はい。わかり「クウゥ」ました、、、」

可愛らしい音がして発信源を見るとお腹を押さえながら赤くなっている女の子がいた。
お腹を押さえた後もまたお腹が鳴ってそろそろ泣きそうな感じだった。

「、、、アリア、お茶を」

「!はい、よければこちらでお菓子でもどうですか?」

「!い、いいの?」

「えぇ、フラン王子がお許しになさいましたので一緒にお茶をしましょうか」

「うん!」

嬉しそうに笑う女の子が部屋に入ってきて対面の席へ座った。今日のお茶菓子が子供の好きそうな甘いチョコレートケーキなのも良かったのかもしれない。
とても嬉しそうに食べていた。

「お兄ちゃんありがと!」

「、、、別に、、、」

子供の純粋な目で見られるとどう反応していいか分からない。

「お兄ちゃんなんのご本読んでるの?」

「、、、アルヘイヤの冒険」

「!私それ知ってるよ!あのねお母様がね、読んでくれたの!面白いよね」

「うん、、、」

女の子は嬉しそうに笑って、なぜか俺の膝の上に座って一緒に本を読むようになっていた。

読み終わる頃には外が暗くなっていてそろそろ夕食の時間になる。

「アリア、使者のところへ」

「はい、お嬢様、お兄様のところへいきましょうか」

「、、、お兄ちゃんは?」

「フラン王子は、、、」

「私、お兄ちゃんと一緒に行くの!」



なぜこうなるのだろうか、、、。久しぶりに俺は部屋から出て片手には女の子が嬉しそうに手を繋いでいる。すれ違ったものたちはまるで幽霊でも見たかのような顔をしていた。そしてその後ろではアリアが嬉しそうにニコニコとしていた。

「はぁ、、、」

「?お兄ちゃん、どうかした?」

「なんでもない、、、」

「?」

使者たちがいるであろう客間に向かうと何やら少し騒がしかった。

「何かあったんでしょうか、、、」

アリアが不思議そうに呟くのが聞こえた。何か厄介ごとに巻き込まれる前に俺はさっさと女の子を預けて部屋に戻りたかった。何か焦ったようにしているうちの1人がこちらを見て驚いた顔をした。

そのうち、隣国特有の黒い肌の男性がやってきた。
俺は思いもよらない人物につい体を固くした。彼こそが隣国から婚姻のためにやってきたベイル王子だからだ。そして前回俺が殺しかけてしまった人物でもある。そんな男性が近づいてくるのだからどう反応すればいいのかわからない。

「お兄様!」

「ミレイ!どこに行っていたんだ!来るのは許したが、侍女と離れるなと言っただろう!」

「うっ、、、だ、だって、、、」


「たく、、、失礼しました。私はシルベニア国第一王子ベイル・フォン・シルベニアです。妹を保護してくれたのですね?ありがとうございます」

優しそうに言う彼はまるで前回とは別人だ。初めてあった頃から俺を見る目は蔑んだ目をしていた気がする。

「、、、、、」

「、、、あの?」

「!、、、い、いや、大丈夫、、、です」

「よければお名前を教えてもらえますか?」

「、、、、えっ、、、と」

名前を言えばこの優しい目は蔑んだ目に変わるのだろうか。最近はアリアの優しい目にしか見られていなかったから少し躊躇いが出てしまう。
そしてそんなことを考えてしまう自分に驚きを隠せない。どうせわかることだ、、、。今更何をきにすることがある。

「俺は、、「フラン!」、、、」

名を言う前に陛下たちが来る。その目にはありありと怒りが滲み出ている。

「フラン?まさか第三王子の、、、?」

「ベイル王子、すいません。フランが何か粗相でも?」

俺が第三王子とわかると周りの嫌な雰囲気になる。そうだ、、、もともとこのような空気が俺に相応しい。アリアの優しさに甘えてしまったんだ。

「お兄ちゃんはご本を読んでくれたんだよ?」

「「「「、、、、は?」」」」

暗い雰囲気になりかけた時、可愛いらしい声で爆弾が投下される。
ミレイの言葉に陛下たちは目を丸くし驚いている。

「本?フランが本?本よめたのか?」

それは流石に読めるだろう。俺は文字も読めないと思われていたのか?

「それとね一緒にお茶もしたの!チョコレートケーキ!おいしかった」

「本当ですか?すいません。粗相はなかったですか?」

「別に、相手をしてたのはアリアだから、、、」

「?違うよ。本はお兄ちゃんのお膝の上で見たもん」

「、、、、」

陛下たちの視線が突き刺さる。本当にこの場から去りたい。

「本当にすいません。何かお礼を、、、」

「結構、、、です。俺はこれで、、、」

そう言ってフランは踵を返して部屋に戻ろうとするが服が掴まれた感覚に足を止めた。

「お兄ちゃん!一緒に食事をしましょ!」

「、、、、」

「こら!ミレイ!」

「やだ!お兄ちゃんと一緒に食事をするの!!」

足にしがみつかれどう接すればいいかわからず固まっているとベイル王子が近くまでやってくる。

「ミレイ!やめなさい!」

そう言って手を伸ばしてくる姿が、未来の記憶と重なる。自分より大柄な男が俺を嬲る記憶が、、、。

「!?、、、さ、触るな!!」

「!」

「あ、、、」

俺の大きな声に驚いたのか捕まっていたミレイは手を離しベイル王子も驚いた顔をしている。周りのものはやっぱりかと言う顔をしてこちらを睨んでいた。

「あ、、、ぅ、、、」

怖くなって自分の部屋に向かって走った。後ろでアリアの俺を呼ぶ声がしたけど俺は無視して走った。

部屋に入って部屋の隅に丸まって震える体を押さえ込んだ。涙が出るわけではない、今更怖いなんて思わない。心ではそう思っていても体の震えが止まらないのだ。

震えが止まってほしくて体を強く抱きしめると腕を掴んでいた手に誰かの手が触れた。
驚いて顔をあげると優しく微笑むアリアがいた。

「王子、、、フラン様、そのように爪を立ててしまうと傷がついてしまいます。先に謝罪をしますね。失礼します」

そう言ってアリアは震えるフランをだきしまた。記憶にないその行為に驚いて震えるが止まってしまった。

「ア、リア?」

「はい、フラン様」

「これ、何?」

「、、、これは抱き締めているんですよ?嫌でしたか?」

「、、、い、やじゃない、、、」

「それはよかったです。少し失礼しますね」

そういってアリアは俺の体を持ち上げた。

「、、、重くないの?」

「重くないですねぇ。フラン様はもう少し食事を召し上がったほうがいいと思います。同年齢の方と比べると少し小さいですから」

「そう、、、」

アリアはそのまま俺を抱き締めてベットに腰掛けた。背中をリズムよくポンポンと優しく叩くその仕草が何かわからなかったがなぜかとても眠くなった。

さっきまで渦巻いていた気持ちがどこかにすーっと消えていくような感覚がして。
そしていつの間にか意識は深く沈んでいた。
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