5 / 8
5. 帰還
しおりを挟む激しく雨が降る中、俺は馬に乗りながらルシフェルさんに抱かれ城に帰った。大勢の兵隊が俺を迎える。
「おっ、お帰りなさいませ!雨が降ってきたので心配していました」
「ディ、ディオス様!ルシフェル様、お帰りなさい。お早く中にずぶ濡れではありませんか!」
兵隊は俺が雨で濡れていることを心配した。そう、この人達はまだ知らないんだから…
「あれ?陛下とマレア様は?」
「えっ?他の人達は─」
あぁ、みんな分かり始めたようだ。俺が馬からおりたら確実にわかる。俺はルシフェルさんに手伝ってもらいながら馬からおりた。その瞬間兵隊がざわめきだす。
「どっ、どうしたのですか!?その服についてるのは…まさか!」
「ディオス様!陛下と…陛下とマレア様はっ!!」
「ディオス様!お答えください!」
「…」
俺の周りをメイドや兵士、声を聞き付けた貴族が集まってきた。メイドは俺のずぶ濡れの体に大きなタオルをかけてくれたがもうお礼を言うのも顔を上げみんなを見ることも出来ない。ただあの光景が頭の中でぐるぐると回り、エレボスの言葉が頭に甦る。
我が儘なディオス、お前が殺したんだ
あぁ、もう、もう嫌だ。誰か、頼むよ。ソルどうか…
「ディオス様の両親がお亡くなりになられました」
ソルが俺の肩に手を置き、言った。兵士はざわざわとどよめく。ソルに置かれた手がどんどんと重くなるように感じる。まるでお前が殺したんだっとソルが言うように…やめてくれ。やめてくれよ…
「陛下とマレアは残念ながらエレボスに殺されました。このディオス様を庇って…」
「嘘だ、陛下が?マレア様も?」
「陛下がエレボスに?そんなはず無い!」
「ディオス様を庇って?まさか…」
ルシフェルさんがソルに続きみんなに言った。この俺を庇って死んだって?俺が全て悪いような…いや、俺が全て悪いんだ。俺が…そうだ
俺が二人を殺したんだ……
あそこに行きたいって言ったのも俺。雨が降るから帰ろうって言われたけど二人を止めたのも俺。そして、お父様とお母様の言うことを聞かなかったのも…俺だ。そうだよ、俺は我が儘な…ヒト
「ディオス様!本当に陛下が?」
「マレア様は何処に!?」
「ディオス様!」
「ディオス様!お答えください!!」
みんなの目線が俺一点に集中する。あぁ、嫌だ。答えたくない。俺が二人を殺したなんて…そんなの…嫌だよ。みんな、みんな、俺を見てる。もう…もう耐えきれない、嫌だ…嫌だ!!
「うあぁぁっ!!どけぇぇっ!!」
「「ディオス様!!」」
俺はみんなを押し退け城内へと駆け込んだ。誰もいない場所、今は誰とも話したくない、会いたくない、見つかりたくない!俺はひたすら走り、自分個人の部屋を目指して走った。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った
五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」
8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
旦那様には愛人がいますが気にしません。
りつ
恋愛
イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる