君を想う、あの日の桜の下で

Allen

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5. 帰還

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 激しく雨が降る中、俺は馬に乗りながらルシフェルさんに抱かれ城に帰った。大勢の兵隊が俺を迎える。

 「おっ、お帰りなさいませ!雨が降ってきたので心配していました」
 「ディ、ディオス様!ルシフェル様、お帰りなさい。お早く中にずぶ濡れではありませんか!」

 兵隊は俺が雨で濡れていることを心配した。そう、この人達はまだ知らないんだから…

 「あれ?陛下とマレア様は?」
 「えっ?他の人達は─」

 あぁ、みんな分かり始めたようだ。俺が馬からおりたら確実にわかる。俺はルシフェルさんに手伝ってもらいながら馬からおりた。その瞬間兵隊がざわめきだす。

 「どっ、どうしたのですか!?その服についてるのは…まさか!」
 「ディオス様!陛下と…陛下とマレア様はっ!!」
 「ディオス様!お答えください!」
 「…」

 俺の周りをメイドや兵士、声を聞き付けた貴族が集まってきた。メイドは俺のずぶ濡れの体に大きなタオルをかけてくれたがもうお礼を言うのも顔を上げみんなを見ることも出来ない。ただあの光景が頭の中でぐるぐると回り、エレボスの言葉が頭に甦る。
 

   我が儘なディオス、お前が殺したんだ
 

 あぁ、もう、もう嫌だ。誰か、頼むよ。ソルどうか…

 「ディオス様の両親がお亡くなりになられました」

 ソルが俺の肩に手を置き、言った。兵士はざわざわとどよめく。ソルに置かれた手がどんどんと重くなるように感じる。まるでお前が殺したんだっとソルが言うように…やめてくれ。やめてくれよ…
 「陛下とマレアは残念ながらエレボスに殺されました。このディオス様を庇って…」
 「嘘だ、陛下が?マレア様も?」
 「陛下がエレボスに?そんなはず無い!」
 「ディオス様を庇って?まさか…」
 ルシフェルさんがソルに続きみんなに言った。この俺を庇って死んだって?俺が全て悪いような…いや、俺が全て悪いんだ。俺が…そうだ
 
 
    俺が二人を殺したんだ……
 
 
 あそこに行きたいって言ったのも俺。雨が降るから帰ろうって言われたけど二人を止めたのも俺。そして、お父様とお母様の言うことを聞かなかったのも…俺だ。そうだよ、俺は我が儘な…ヒト 

 「ディオス様!本当に陛下が?」
 「マレア様は何処に!?」
 「ディオス様!」
 「ディオス様!お答えください!!」

 みんなの目線が俺一点に集中する。あぁ、嫌だ。答えたくない。俺が二人を殺したなんて…そんなの…嫌だよ。みんな、みんな、俺を見てる。もう…もう耐えきれない、嫌だ…嫌だ!! 
 
 「うあぁぁっ!!どけぇぇっ!!」
 「「ディオス様!!」」

 俺はみんなを押し退け城内へと駆け込んだ。誰もいない場所、今は誰とも話したくない、会いたくない、見つかりたくない!俺はひたすら走り、自分個人の部屋を目指して走った。
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