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1.五年桜
しおりを挟む「お母様、お父様っ!早く早く~♪」
「そんなに急がなくても大丈夫だよ、ディオス」
「良かったわね♪」
俺はお母様とお母様と一緒に前の約束を果たすため三人で五年桜の元に向かっていた。俺はついにこの日が来たのでとてもウキウキしている。だって今日は本当に一日中お父様もいるし、今から行く場所はお母様のとぉーっても好きな場所。五年ごとに咲くあの桜も今年見られるらしい。もう、咲いてるのかな?まだ少し早いかな。でも、あそこに行くと元気が出るって言ってた。だから少しはお母様のあの咳も治るかな?
だんだん五年桜が近づくにつれ、俺達の集団は賑やかになっていった。俺達三人とお母様の義理の姉、ルシフェルさんとナイという一番お父様が信用している従者と、俺の従者のソル。そして少数の兵隊達が同行している。
しばらくして、ついに五年桜の場所に到着した。暖かい日差しとほんのり冷たい風が混ざりあってとても気持ちいい。桜は咲いていなかったなかったがいつ見ても立派な桜の木だ。それに個々からの景色も抜群で、俺達の城と街が見渡せる。
「本当にここは素敵だわ!」
「そうだな、マレア」
お母様とお父様は二人笑顔で話している。
「ディオスくん、この場所本当にいい場所だね」
「うん!」
「ディオス様、でも、どうしてこの場所に?」
「えっと・・・それは・・・」
まずい。ルシフェルさんとナイがここに来た理由を聞いてきた。普通に答えてもいいんだけどお母様の好きな場所で元気が出る場所だから風邪も治るかなって思ったから~って言うのはなんか恥ずかしいし、お母様に知られて俺に気を使わせちゃったら嫌だしな…えっと…
俺は咄嗟のことで何を言おうか迷ったそのとき
「確か、小さい時にここに来たことがあるからまた行きたいって思ったんですよね?」
「えっ?あっ、そうだ!そうそう」
そうだった。そうだった。完全にその理由忘れてた。ナイス、ソル!やっぱりいろいろ伝えといてよかった。自慢の従者。これはお礼言っとかないと…
俺はソルの服を引っ張って顔を近づけてもらい小さな声で言う。
「ありがとう」
「いえいえ、ディオス様。それよりここで楽しんで下さいね」
「うん!」
俺はそう言いお母様とお父様の元に駆け出した。
「お母様~!お父様~!」
走りながら叫ぶと二人は振り向いて手を振る。そして到着。
「はぁー疲れたっ!!」
「フフ、じゃあここにでも座る?」
お母様は二人ぐらい座れる桜の根っこの部分に腰かける。俺もその隣に座る。
「なんだかこうして見るとディオスも大きくなったなあ」
「そう?」
「ああ」
お父様は俺達を見て笑顔で言った。俺は大きくなったと言われて少し嬉しかった。
「お父様!俺、剣の稽古、騎士達に教えてもらったんだよ!真剣ももう使えるかも!だから自分用の剣が欲しいんだけど」
俺は腰につけているお母様からもらった短剣に手をやった。これをつけているとなんだか大人になった気分。だから真剣も─
「ディオス、剣と言うものはいざというときに自分を守る時の為だよ?いずれ、剣など持たない、必要ではない世界を作らないといけない。分かってるか?」
「うんうん、分かってる。でも、今は必要でしょ?それに剣の稽古楽しいし!」
「まぁな、今は自分を守れるようにしておいたほうがいい」
お父様はそう言った。確かに結構前にこの国ルイビルには妙な問題があった。昔話のような魔王と噂されているエレボスという魔王のこと。ルイビルの小さな村の人々を焼き殺したらしい。さらに今度は町の人が消えたり、行方不明になっているとか。でも、この国には代々王が龍の力を借りて作った魔法壁があって、魔物の侵入を防いでる。それなのに、魔物の王がルイビルに入れるのはありえない。
それには確かな情報は少ないらしい。詳しくは分からないが、まぁ、でも大丈夫。俺だって自分の身は自分で守れる!
「ゴホゴホ、あれ?なんだか雨が降りそうね」
咳払いしたあと、お母様が遠くの空を指差して言った。さっきまであんな暗い雲なんて見当たらなかったのに…
「本当だ…えっ?もう帰るの?」
「どうする?急に雨が降ってきたらみんな濡れて風邪を引いてしまうぞ?」
「ええー嫌だ嫌だ!もうちょっとここに居ようよ」
まさか、来てそうそう帰るなんてあり得ない。せっかくお父様も一緒だしお母様もいるんだからもう少しここに居たい。こうして話せるのも久しぶり。それにさっきまであんな黒い雲は無かった。だからあの雲もこっちに来ないだろう。いや、絶対来るな、来てほしくない!
「あなた、ディオスは久しぶりですもの。もう少しここにいましょ?」
「…分かった。じゃ、ディオスここでゆっくり過ごすか!」
「うん!…ってなっ、何?わぁぁぁ!!」
そう言うとお父様は急に俺を軽々しく持ち上げ肩に乗っけてくれた。肩車なんて久しぶりだ。高くて怖いけど、とてもいい景色!
「ディオス、よく見えるだろ?」
「うん!」
俺はお父様に肩車されながらお母様とお父様三人で五年桜から見える景色を眺めていた。
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