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6. 月光
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『月光』
「うっ…うわぁぁ!日が暮れてる…!?」
どうやら俺はあれから数時間も眠ってしまっていたらしい。目を覚ますとあたりはすっかり暗くなって、星と月が輝き始めた時間だった。慌てて身体を起こし、隣を見る。案の定、そこにはもう龍の姿は無かった。まぁ、体調も良くなって俺がぐっすり眠っている間に何処か行ってしまったんだろう。翼も足の傷跡も完治してから飛んでしまったのかは最終的には分からなくなってしまった。せめてもう一目だけでも見たかったけど、龍となれども物語の鶴のように恩を返すようなことはしない、動物とはやっぱりそんなものかと思った。でも決して後悔と言う文字は浮かばなかった。月光に照らされた隣の草はちょっとだけ凹んでいるのを見て、嬉しかった。
「じゃ、帰ろかな。今日はどうせ夕食は抜きだろうな~」
俺は立ち上がり、体に付いた砂をポンポンと払った。なんて言い訳をしようかと内心ワクワクして家の方向に足を進めた時、ある声が俺を呼んだ。
「待て。あんた、これ忘れてるよ」
「え?」
声を掛けられ咄嗟に振り向くとそこには黒い少し長い髪を束ねた身軽な男の人がたっていた。破れかけているボロボロのマントを来ていて、いかにも現役の暗殺者みたいだった。男の手中には俺が持ってきていたカバンがあった。俺はカバンを取りに行きたいが、男の妙な雰囲気といい、近付くのを躊躇っていた。だってこの森で、ましてこの時間に人に会うのはほぼ無いから。
「ほら、取りに来ないのか?」
男は片手で俺のカバンを持ち上げながら言った。案の定、腰には短剣らしきものを付けている。俺には武器もないし、魔法で守れるものの、その力が無い。
「失礼ですが、どちら様で?」
「え、あぁ~これはこれは失礼。俺の名前はブルとでも呼んでくれ。君、そこの貴族様かい?こんな森にこんな時間で一体何してたんだ?」
「少し昼寝が長くなってしまいました。まさか、この森で人に会うなんて初めてで驚きました。貴方は一体何を?」
「ちょーと探し物があってね、それで可愛い君に1つ聞きたいんだ」
そういうと、俺にゆっくりと近付いてきた。目の前には背の高い男が立ちはだかったが、そっと屈み相手の紫色の鋭い目が俺を見つめた。取れと言わんばかりにカバンを俺の前につき出し、俺はそれを取ろうとした直前に上に上げられ取ることを拒否された。え、意味が分からない。俺は男の話し方と行動にイライラしながら、男を睨みつける。
「言ったろ?1つ聞きたいんだ」
「何をです?」
「ここにトカゲのような生物を見なかったか?大きさはこのくらいだ」
内心驚いたのを慌てて隠して、目の前で男が手で大きさを示したのを見た。うさぎより一回り大きいサイズ。確かにそうだったけども、俺が助けましたと言う訳が無い。面倒事に巻き込まれるのは目に見えてわかる。それにここで殺されたら俺の夢はなくなってしまう。まして、こんな奴に。
「うっ…うわぁぁ!日が暮れてる…!?」
どうやら俺はあれから数時間も眠ってしまっていたらしい。目を覚ますとあたりはすっかり暗くなって、星と月が輝き始めた時間だった。慌てて身体を起こし、隣を見る。案の定、そこにはもう龍の姿は無かった。まぁ、体調も良くなって俺がぐっすり眠っている間に何処か行ってしまったんだろう。翼も足の傷跡も完治してから飛んでしまったのかは最終的には分からなくなってしまった。せめてもう一目だけでも見たかったけど、龍となれども物語の鶴のように恩を返すようなことはしない、動物とはやっぱりそんなものかと思った。でも決して後悔と言う文字は浮かばなかった。月光に照らされた隣の草はちょっとだけ凹んでいるのを見て、嬉しかった。
「じゃ、帰ろかな。今日はどうせ夕食は抜きだろうな~」
俺は立ち上がり、体に付いた砂をポンポンと払った。なんて言い訳をしようかと内心ワクワクして家の方向に足を進めた時、ある声が俺を呼んだ。
「待て。あんた、これ忘れてるよ」
「え?」
声を掛けられ咄嗟に振り向くとそこには黒い少し長い髪を束ねた身軽な男の人がたっていた。破れかけているボロボロのマントを来ていて、いかにも現役の暗殺者みたいだった。男の手中には俺が持ってきていたカバンがあった。俺はカバンを取りに行きたいが、男の妙な雰囲気といい、近付くのを躊躇っていた。だってこの森で、ましてこの時間に人に会うのはほぼ無いから。
「ほら、取りに来ないのか?」
男は片手で俺のカバンを持ち上げながら言った。案の定、腰には短剣らしきものを付けている。俺には武器もないし、魔法で守れるものの、その力が無い。
「失礼ですが、どちら様で?」
「え、あぁ~これはこれは失礼。俺の名前はブルとでも呼んでくれ。君、そこの貴族様かい?こんな森にこんな時間で一体何してたんだ?」
「少し昼寝が長くなってしまいました。まさか、この森で人に会うなんて初めてで驚きました。貴方は一体何を?」
「ちょーと探し物があってね、それで可愛い君に1つ聞きたいんだ」
そういうと、俺にゆっくりと近付いてきた。目の前には背の高い男が立ちはだかったが、そっと屈み相手の紫色の鋭い目が俺を見つめた。取れと言わんばかりにカバンを俺の前につき出し、俺はそれを取ろうとした直前に上に上げられ取ることを拒否された。え、意味が分からない。俺は男の話し方と行動にイライラしながら、男を睨みつける。
「言ったろ?1つ聞きたいんだ」
「何をです?」
「ここにトカゲのような生物を見なかったか?大きさはこのくらいだ」
内心驚いたのを慌てて隠して、目の前で男が手で大きさを示したのを見た。うさぎより一回り大きいサイズ。確かにそうだったけども、俺が助けましたと言う訳が無い。面倒事に巻き込まれるのは目に見えてわかる。それにここで殺されたら俺の夢はなくなってしまう。まして、こんな奴に。
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