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「じゃ、注射するから動くなよ~」
「痛っ」
「…よしよし!終わった!少し薬が多すぎたかな…まあ、大丈夫だろう。俺の作った一番目のお客さんだね。俺も嬉しいよ」
「よ、良かったです…!」
「ハハッ。じゃ、最後にあれと箱の中身を入れ替えましょうか」
「あぁ」

  男はそういうと、父は大きな箱の扉を開けた。中には汚れた白い布に覆われた何かがあった。それを重そうにあの二人がベットにまで運んだ。ボロい布のはしから人の髪のようなものが見えたが、俺にはよく分からなかった。もしかしたら久しぶりに街にも行けるかもしれない。行ければもう何年ぶりだろう…。楽しみだ。

「準備は整いました。あとは身体が弱い為、隔離していたなどと言えば大丈夫でしょう。しかし、すぐに燃やして下さい。式は形だけあるようにして顔は覆ってくださいね」
「あぁ、お互いに利益が生まれて嬉しいよ。この事は決して口外しないように」
「お互い様ですよ。じゃ、君、この箱の中に入ってくれるかな?」
「ここに…?」
「そう」
「さぁ、入りなさい」

  二人の口元が微妙に笑った。でも、何か様子がおかしい。ゾッと背筋が凍るような笑み。何故か動けずにいると、男がガッと強引に肩を掴み言った。

「さぁ、早く入って?大丈夫だから、ね?」
「は、はい……」
「そこで動くなよ」

   あまりの恐怖に俺は何も言えなかった。今までに感じたことの無い威圧感にあの奇妙な目付き。言われるがままに俺は白いものが入っていた箱に入った。その瞬間、すぐさま箱の扉が閉められ、あたりは暗闇に包まれた。しかし、箱に僅かに空いていた小さな一つの穴から二人を見ようとした。

「では、私はこれで。明日か明後日くらいに見つけてくださいね。式は早めに」
「分かってる」
「この事国にバレたらお互い大変な事になるでしょうが、まぁ、バレないとは思います。残念ながらこれで会うのも最後です」
「あぁ…、じゃ」

   そう言うと二人は硬く握手をした。その後、あの男は持っていたカバンから何か少し細長い取り出し、魔法で火を付ける。二人は口を覆って、黒い煙が立つのを見ていた。
   そして男は箱に入っている俺に近づき、俺が見ていた穴に何やらあの黒い煙を入れた。唯一の光が遮られ、俺は小さな箱の中でどんどんと入ってくる二人が口を覆っていた不思議な甘い煙に逃げることが出来ず咄嗟に暴れたが、どうすることも出来ない。吸っただけで急に体が動かなくなり、ドサッと倒れ込んだ。暗闇の中、頭が揺れ、俺の目はすぐに閉じていった。

「おやすみ…」

  もう二人の不吉な笑い声に俺は気付くはずもなかった。
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