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1. 救いの手を
しおりを挟む「何度言ったら分かるんだっ!!」
《バシッ》
「うっ、ご、ごめんなさい…」
「こんなのが長男だとこの家は何と恥ずかしいッ、字が書けないってそんなことがあるかっ!!」
《バンッバシバシッ》
父は躊躇わずに俺を殴った。母はこちらを見ても助けもしない。弟ができて、俺が字が読めないと分かった途端、この家の誰もが弟の方に目を向けた。俺はこの家の雑用として、屋根裏で過ごし、まるで奴隷扱いになってしまった。そうなるものこの家は一様有名な侯爵だった。これはあくまでも過去の話。この国の王が正式に決まった頃、国の政経が大きく変わり、裏工作を追求され名はネフェルティー侯爵というのは廃名された。元、侯爵になった訳だ。詳しくは知らないが余程の事をしたんだろう。犯したのはこの父ラヌークだ。
そして、俺が次のこの家の主になる、はずだった。俺が字が全く書けない事がわかる前は。俺自身それはよく分からなかった。読めるのに、人一倍暗記は得意だ。誰が言ったことでも読んだことでも一言一句間違わずに、一瞬にして覚えられる自身はあった。でも、ペンを握ればどうしても文字が書けない。その為に、この首都にある王族も通う学校に落ちたことが悪夢の始まりだった。徐々に、徐々に生活が酷くなっていく。
「何故だ?あれほど口では言えていたのに答えが書けず、ゼロだと!?侯爵家の長男であれば行くのは当たり前だッ!」
「うぐッ…ご、ごめんなさい」
「もういいッ、お前は家の掃除でもしていろ!せめて、ジェネラルの役にでも立てッ」
「わ、分かった」
「誰だタメ口でいいと言った?これからはお前は敬語で話せ。使用人にも誰でもだ、良いなッ?」
「は、はい…」
《ガチャン!!ガチャ》
「はぁ……」
俺は冷たい床に倒れ込んだ。ホコリ被った明かりのない屋根裏部屋。ほんの何日前までは食事も、部屋も、ベットもきちんとあったのに、今じゃ何一つない。
日が経つ事に更に酷くなり、たまに出てくるあまりのパンに水、草を少し引いて、上からボロボロの布をかける。よくよく考えてみれば俺は元から勉強だけを強いられてきた。各時間などないと言われていたけど、記憶は良くて俺のことなんて誰も見ていなかった。
弟のジェネラルができていて、俺は少し嫉妬した。母はいつもジェネラルの隣で頭を撫でて、父は満面の笑みを見せていた。俺は影から見るのが当たり前だ。出てこれば、お前は勉強しなさい、と言うだけ。それでも食事や部屋はせめても豪華だった。だからせめて俺にも振り向いて貰おうと本を読みまくり、全て暗記した。先生の話も何時なんだって聞いていた。休みなんかなくたって、振り向いてもらえるなら…。でも、だからこそ字が書けないなんて言えなかった。俺でもどうして書けないか分かるはずもなかった。
「何で字が書けないんだよ……俺、どうすれば許してもらえるんだろう……」
その後は俺は必死にペンを握りしめ、一から字を練習した。先生はもう全て解雇され、俺はその分自由な時間が有り余る。それを全部文字に当てた。本を持ってきて、それを覚え、書くだけ、書くだけなのに。
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