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序章 きみが灰になったとしても
第32話 今日と明日を駆け抜けて
しおりを挟む「そこ、岩あるから気をつけて」
「はい。ありがとうございます」
「待って。そこ通ると荷物のでかいダーシュは見つかっちゃうからさ。こっち通ろう」
「そうですね。その方が得策です」
ノウトたちは昨日までに引き続き、連邦王国の首都に向かって歩みを進めていた。
でも、昨日とは違うことがひとつある。それは、もちろん、彼らのことだ。
レンは誰にでも優しいけど、フウカに対しての気遣いはなんだか別のものに見えてしまう。
……なんか、あれだな。
いろいろ意味が違って見えるというか。昨日までとは違う人たちに見えるというか。
血夜族同士で通じ合うところがあるのだろう。でもだからってこの間会ったばかりなのに、もう……その、接吻するとか早くないかな…。どうなんだろう、その辺。
「どうかいたしましたか、姫」
「へっ!?」
ラウラは飛び跳ねるようにダーシュに振り返った。
「いや!? なんでも!? ないけど!?」
ラウラは明らかに普通ではない。ノウトも昨日は悶々としていて、すぐには寝付けなかった。なんたって、件のフウカやレンがそこに寝ているのだ。
いや、別に二人はくっついて寝てるわけじゃなくて、それなりに距離を離して寝ているけど、それもまた意味ありげに見えてしまった。
「うぅ~~…」
ラウラはぱたぱたと手で顔を扇いでいる。そんなラウラを見ていると、不意に目が合ってしまった。
「……なに?」
「いや、べつに」
「あっそ」
ラウラはノウトを追い越して、先に進んでいく。ダーシュはみんなの反応を見て首を傾げていた。
深呼吸だ。特段、このことは今は気にすべきことではない。それよりも、今回やるべきことを念頭に置け。連邦の都市に侵入して大地掌握匣を奪い返す。成すべきことはそれだけだ。
進んでいくにつれて、木々が増えてきた。鬱蒼とした中を進むと、少し開けたところに出た。木漏れ日が地面を照らしている。ここならオークや連邦の魔人たちに見つかることはないだろう。
その日は小高い山の麓で野宿をすることになった。ちょっとした洞穴があって、その中であったら火を炊いても周囲に気取られる必要はないということで、久々にみんなで火を囲んだ。
「……おいしい。なにこれ」ラウラが木で出来たボールを両手で持って言った。
「ははは」レンが爽やかに笑う。「これだけは自信あるんだ、俺」
なんと、この日はレンがみんなに料理を振舞ったのだ。
食材は携帯食糧を少し加工したものやレンが個人で持っていたものを使っていたけれど、本当に食材がそれなのかと言うくらい美味しかった。
「レンが料理上手いのは知ってたけど、これほどとは」
「好きなんだ、料理するの」
「本当に美味しいです」フウカがほくほくと緩んだ顔をした。「毎日作って欲しいくらいですね」
その言葉が、変な意味に聞こえてしまって、ノウトはラウラの方を無意識に見てしまった。
どうしてだろうか。目が合ってしまった。一瞬で顔を逸らす。
なんだろう。やましいことなんて何もないのに、少しだけ気まずい。
「無事にこの作戦が成功したら、毎日つくってもいいかもね」
「やった」なぜかラウラが嬉しそうにガッツポーズをした。
「ダーシュ、どうかな」レンがダーシュを見た。
「普通だな」ダーシュは匙を片手に真顔で言う。
「そういや、ダーシュも料理上手いよな」
「少し味を参考にしてるんだけど。似てるかな」
「ちょっとダーシュの方が味が濃い気がする」ラウラは
「俺とこいつ、どちらの方が美味しいですか?」ダーシュがラウラに問う。
「レンかな」
ラウラが即答したものだから、ダーシュは頭から倒れた。そして、地面に爪を立てて小さな声でレンを呪う声を囁く。
「ちょっ、ごめんダーシュ。冗談だから。どっちも美味しいよ。あー、もうさっき乾いたばっかの服ばっちくしちゃって」ラウラがダーシュの服についた泥を手で払う。
「どっちも美味しいと思うよ」
「うん。俺も」ノウトは頷いて、少しだけ後悔した。どっちつかずの回答が一番困ると誰かから聞いたからだ。
「レン」ダーシュはレンを睨んだ。「勝負だ」
「料理勝負?」
「言わずもがなだろう。どうだ。やるのか、やらないのか」
「もちろん。いいよ」
レンは相も変わらず邪気のない顔で微笑んだ。
「ただ、今日はもう食べたからさ。またいつかやろう」
ダーシュは腕組みをして、それから口を開いた。
「では、帝都に帰ってきた時だ。その時、お前に敗北の味を教えてやる」
ダーシュが得意げにそんなことを言ったものだから、ラウラとノウトは顔を合わせて吹き出してしまった。
それから、ラウラがこっそり持ってきていた酒をみんなで酔わない程度に飲んで、落ち着き始めたら、それぞれ明日への準備を始めた。
ラウラは横になっていて、ダーシュは片膝になって剣の手入れをしている。レンが〈闇衣〉を濡れた布切れで拭っている。フウカは目を瞑って、岩に背を預けていた。眠っているのか、それとも耳を済ませているのか。
突然、ぱっとラウラが立ち上がった。それと同時にフウカが目を開いた。
「何か、気配がする」ラウラが辺りを見回した。
「動物?」とノウトは訊いた。
「分からない。でも、……変な声が聞こえる」
「少し、遠いですね」フウカが目を瞑って言った。
そうは言っても、辺りは夜の帳が落ちていて、完全に真っ暗だ。ノウトは夜目が利く訳では無いから、見えはしない。ただ、闇の中では視覚以外の感覚が鋭敏になる。
遠くだ。
距離を置いたところから、声が聞こえる。
「オークに見つかったのか?」ダーシュが剣を抜いた。
「違う。……これは、オークの声じゃない」レンが答えた。
何かが歩いている、というよりは何かが引きずられているような音がする。
「ウゥ………あぁ………ぁ………うウゥ……」というような、……これは、声なのだろうか。
何者かが、木々の向こうにいる。星明かりに照らされた、一瞬だけ姿が見えた。
最初に思ったのは怪我をしているのか、ということだった。反射的に助けようと自らの身体が動くが、どうやら怪我をしているわけではないみたいだ。
よく見えないけれど、こちらを見ている……ような気がする。
ここは連邦王国の領土。敵地だ。友好的ではないのは確か。こちらから動くか。分からない。ラウラたちは様子を伺っている。お互いが牽制していると、また違う方からも声が聞こえた。
「おオ………ァあ………」
後ろだ。真後ろの、ほんの十五メートル先にいる。前方にいた、さっきのものと同じような声だ。それに、引きずるような音も、同じ。どうすべきか。躊躇するべきではない。ただ、ここは敵地で、よく言えばアウェイであって、無謀な行動は控えるべきだ。相手が何者か見極める必要がある。
だが、観察しているうちに、そうも言っていられなくなった。
「……うぅ………ぃあ…………」「あぁ……うぅぅ………アあ……」「…あァぁ………おお………ううぅ………」「………あぁ……ァ……」
あちこちから声が聞こえる。三人か、五人。いや、もっといそうだ。少なくとも十人以上。今のところはものすごく近くにはいない。具体的には前後左右、五~七メートル以内にはいないみたいだ。
ふと、影が動いたような気がした。暗いのに影というのもよく分からないけれど、影のように輪郭が分かった。人に近い。
血夜族や猫耳族、またオークやゴブリンではない。おそらく、魔人族か森人族。でも、ただの人ではなさそうだ。
「あぁ……うぅ……」「ぅぅ……」「おあ……あァ……」
声が近づいてくる。でも、駆けてくる様子はない。ゆっくりとこちらに歩いてきているんだ。
「どうする?」レンが口を開いた。
「無闇に人殺しはしたくないけど」ラウラは自らの鼻っ柱を擦った。「そもそもあれは人なの?」
「人ではなさそうだけど。フウカ、何か知ってるか?」ノウトが聞いた。
「恐らくですけど……」フウカは短剣を逆手に握った。「あれらは、ゾンビです」
「……ゾンビ?」
「またの名をアンデッド。一度だけファガラントの地下街で見たことがあります。先程から聞こえる声がそれに近いと推測しました」
「それって、倒していいやつなの?」
「敵意があるならば、倒すしかありませんよ」ラウラの問いにダーシュが答えた。
「来たよ」レンが鞘から剣を抜く。
五メートル先に、ゾンビがいる。前方に三人。真後ろに二人だ。
やけに身体を上下さして歩いている。片足を引きずっているようだ。突然、そのうちの一人が勢いよく飛び交ってきた。
「せっ……!」
ダーシュは踊りかかるように踏み込んで、剣を一閃させた。ダーシュは今回の遠征で得物である大剣を持ってこなかった。長旅であれを使用するのは得策とは言えないとの判断だろう。
ダーシュの直剣がゾンビの首をやすやすとはね飛ばした。
ゾンビの胴体は倒れ込み、生首がこちらに転がってきた。「うわっ」とノウトが小さな悲鳴をあげる。
男のようだ。頬が痩せこけていて、まさに骨と皮の状態。伸び放題の頭は髪の毛とは思えないくらいゴワゴワとしている。
「なっ……!?」
切り落とされたはずの生首の眼球が、口が、まだ動いている。一瞬、血夜族を想起させたが、血夜族と違って再生はしないみたいだ。
ラウラが生首を蹴り飛ばした。「気持ち悪いにもほどがあるでしょ!」
「まだ来るぞ!」とノウトが注意を促した。
右後ろからゾンビが両手を前に突き出して突っ込んできた。
レンがその手を斬り落として、切り返しで首を斬り上げる。
フウカが逆手に短剣を持っている。
よく見ると、両手にそれぞれ短剣を持っていた。姿勢を低くして、踊りかかってくるゾンビを切り伏せる。疾い。また、小さく詠唱をしているようにも見える。あれは、風魔法か。短剣に魔法付与して切れ味を増している。常人では到底出来ない芸当だ。
ノウトは向かってくるゾンビを殺陣を使って受け止めてから、押し倒した。手が、手が、手が。やばい。ぬめっとした感触が延々と残ってる。
なんとか邪念を頭から振り払って、後ろから倒れたゾンビに睡眠針を突き刺した。一瞬、効果はないんじゃないかと思ったが、その考えは杞憂だったみたいだ。睡眠針を刺されたゾンビは動かなくなった。
アヤメを使うか悩んだけれど、使うのはやめておいた。
剣を汚したくないというのもあったし、アヤメの切れ味では殺してしまうだろうから。
ノウトは相手がゾンビでも殺すのは嫌なようだ。我ながらどうなのかとは思うが、これが自分だと肯定して前に進むしかない。
「さながら、動く屍体だな」剣で切り裂きながら、ダーシュが呟いた。まさにその通りだとノウトは思った。
そこからは乱戦だ。
襲いかかってくるゾンビを五人は迎え撃った。相手の攻撃は単調だから苦戦することはないけれど、何より数が多い。
脳が指令を出しているのか、首を失った胴体は動かなくなるけれど、頭部の方は元気なままだ。ゾンビの頭は声を発することは出来ないが、顎を上下させて移動するなんてことは余裕でやってのける。
ノウトは一度、ゾンビ頭に噛まれそうになった。いや、正確に言えば噛まれかけたところをラウラに助けて貰った。
暗いせいか、ゾンビとの戦いは果てしなく長く感じた。
終わりかと思ったらどこからか「うぅ……あぁ………」と聞こえてきたり、足元で頭部が蠢きあったりしていた。
結局、東の空が白み始めるまで乱戦が続いた。この乱戦で付近に暮らすオークに気付かれなかったのは不幸中の幸いだろう。
「なんとか」レンはバイザーの下で苦笑いした。「凌げたみたいだね」
「もうあの声は聞きたくないな」ダーシュは黒ずんだ肉片やら血やら何やらを全身に浴びて凄まじいことになっていた。
「睡眠時間、全部ゾンビに奪われたな」ノウトが小さく笑う。
「そうだね」レンが笑い返してくれた。
「そんなことより」そう言ってしまえるラウラは強い。ダーシュまでとは言わないが、彼女も返り血やら返り肉片で身体中が汚れているのに、ケロッとしている。「あたしたちはゾンビに意図的に狙われたわけ?」
「ゾンビは意思なく動く死体です。あてもなくさまよっていたところ、私たちを見つけて本能的に襲ったといったところでしょう」
「じゃあ、あたしたちただ運が悪かったってこと?」
「端的に言えばそういうことになりますね」
「なにそれ、最悪」
ラウラが地面に転がる跡形もなくなったゾンビを睨みつける。
「フウカはゾンビについてどのくらい知ってたんだい?」
「見たことはありましたが、こんなに多くのゾンビは初めて見ました。多くはファガラントの牢獄に幽閉されていると聞きましたが」
フウカの言葉に、ノウトは頭を悩ませた。何か普通ではないことが、この大陸で起きつつある。
「少なくとも、連邦側で何かしらの動きがあったって思った方がいいな」
「うん」ラウラが頷く。「何かしらが分からないけどね」
「今回ばかりは情報がないことの劣勢さがよく実感できたよ」レンが袖を拭った。
ノウトたちはその後、水浴びをしたのちに再出発した。いつもより休憩を多く取りつつ、ノルマをこなすように前へと進んでいく。
丘を何度か越えて、小さな谷を渡った時だった。
「ゾンビやら諸々で時間は想定よりもかかってしまいましたが、無事着けましたね」
どれくらい進んだのだろうか、フウカが突然立ち止まって、そう告げた。ノウトは辺りを見渡した。フウカの背、その先に小さな洞穴が見えた。
「そこがファガラントへの抜け道?」
「はい」フウカが頷いた。「私が偵察する際にいつも使っている坑道です」
「ここってさ」レンがフウカを見た。「連邦側の人にはバレてないのかい?」
「下層部の者には通じていると思います」
「下層部……身分の低い者たちのことか」ダーシュが腕を組む。
「ええ。奴隷街や貧民窟とも揶揄されています」
「それって、あたしたち通って大丈夫なの?」
「直接そこを通るわけではないのでご安心を。この通路の更に地下に彼らの暮らす地区がありますので」
「まさに抜け道だな」
「はい」フウカが振り返った。「では、日も高いですし行きましょうか」
皆が頷いて、洞窟の中へと歩いていくフウカの背を追った。入り口は半径二メートルくらいの楕円に近い。巨人族なんかは絶対に通れないだろう。横穴だけど、ゆっくりと下に向かって勾配があるのが分かる。
横幅は三メートルくらいで少しの余裕はある。ノウトたちは万が一の為に一列で歩いた。前からフウカ、ノウト、レン、ラウラ、ダーシュの順番だ。
ある程度進むと、光も通さないくらい暗くなってきた。先頭に立つフウカがランタンを取り出して、それに火をつけた。
「小型の〈光〉の神機持ってるけど、ランタンでいいのか?」
「はい。ここでは神機の使用は控えてください」
フウカがはっきりとそう言ったから、ノウトは少しだけ驚いてしまった。そして、一秒くらい間を開けてから、口を開く。
「どうして?」
「ここは魔素が交錯して安定してませんから、神機が暴走する可能性が高いです」
「まさか……」ノウトが手で口を覆った。「ここって、アンダーグラウンドなのか?」
アンダーグラウンドというのは凶魔が産まれる地下迷宮のことだ。そこでは魔法の源である魔素が混沌としており、神機を使用すれば、想像以上の力が溢れ出すと文献で読んだことがある。
「地下という意味ではそうですが、直接の意味では違います。ここはただの坑道」
フウカは振り返らずに答えた。
「ただ、近年凶魔が発生する領域が増えていると聞いたことがあります。ここも、例外ではありません」
「じゃあここで凶魔と出くわす可能性もあるってこと?」ラウラの声が後ろから聞こえる。
「はい。その蓋然性ももちろんありますね」
「心配には及びませんよ、姫。俺が護りますから」ダーシュの頼もしい声が反響する。
「この狭い中で出たらちょっと厄介な気はするけど。ま、大丈夫かな」
地下の坑道をひたすら進む。ひんやりと涼しくて気持ちいい。吐く息が白くなってきた。
「こうずっと暗いと」ノウトが口を開いた。「なぜか安心するな」
「どうして?」レンが少し驚いた口調で言った。
「血夜族でもないのに、おかしいよな。でも、どうしてか落ち着くんだ」
「猫耳族は夜目が利くからいいけど、徒人族のノウトは不安じゃないの?」
「ああ、みんながいるからかな」
「またそういう……」
「ノウトの十八番だね」
「前から思ってましたが、ノウトはおかしな人ですね」
「よく言われるよ」
先も見えない闇の中で、ノウトが小さく笑う。その時だった。
────ガコンッ。
何か音が聞こえた。重いものが動いたような、鈍い音だった。
「今のなんの音?」
「さぁ……」
「ちょっ!?」
──突然、ノウトは妙な浮遊感を覚えた。
「やば──」
違う。これは、本当に浮いてる。いや、落ちてるんだ。暗い。滑るように下へ下へと落ちていく。
「ノウト!!」
ラウラの声が遠のいていく。上を見ると、ノウトが落ちてきたところら扉が閉ざされたように闇に溶けてしまった。
落とし穴だ。罠に引っかかってしまったんだ。
くそ。まずい。落ちていくそれに抵抗しようと壁に手と足で引っ掛けようとするが、だめだ。重力には逆らえない。
殺陣があるから落下死はありえない。いつ着地する? 分からない。暗いし、何より自分の身体が邪魔で下を見れない。やばい。とにかく、殺陣だ。殺陣殺陣────
「べっ!?」
もふっ、と。
突然、柔らかい何かに包まれた。完全に落下したのだ。体感的には落ちていたのはせいぜい十秒くらいだろう。
「いつつ……」
もふもふ、もとい毛布の上でノウトは頭を振った。どうやら生きてるらしい。
『ふふふ。怪我はないかい?』
聞き覚えのある声だ。いや、聞き覚えしかない。ノウトは反射的に泣きそうになってしまった。会えるとは思ってなかったからだ。
そいつはノウトの膝の上に乗った。目が赤くて耳が長い。顔は猫のようだ。そして、身体も猫に近い。
「………っ」
『感動の再会だね』
「……ちょっと、乱暴じゃないか?」
『ごめんよ。こうするしかなかったんだ。ここがノウト以外の人に見つかると少し厄介でね』
ノウトは溢れ出る涙を袖で拭った。フィーユたちのことが頭に浮かんで仕方がなかった。
「ミカエル……よかった。また会えて」
『僕も会えて嬉しいよ』
「いやぁ、大丈夫っすか?」
奥の方から声が聞こえた。男の声だ。若いことだけはわかる。
「あんただけをこっちに落とすの大変だったんすよ? でも、成功したみたいで何よりっす」
そいつは頭にツノが生えていた。魔人だ。身長はノウトと同じくらい。ツノを避けるようにバンダナを被っていて、作業着のようなつなぎを着ている。そして、極めつけに片手にはスパナを持っていた。
「立てます?」
手を差し出されたから、ノウトはミカエルを肩に乗せてからそれを掴んで、立ち上がった。
「少し荒っぽい歓迎になっちゃいましたけど、これしか道がなかったんで許して欲しいっす」
「お前は……」
ノウトが動揺を隠せないまま問うと、目の前の男はにっ、と笑ってから片手のスパナを肩に掲げた。
「初めまして、ノウトサン。俺はスクード。スクード・ゼーベックって言います」
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