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第一章 勇者殺しの勇者
第27話 メモランダムと第一中間地点到着
しおりを挟む『《触れたものを消す能力》。この能力もノウトは危険視していたな。こいつにラウラが殺されたとノウトは言っていた』
(ミカエルが俺の仲間を……?)
そりゃそうだ。これは言うならば殺し合い。戦争だ。否応なしに死人は出る。殺されそうになったから殺す。正当な理由だ。
『当然過去に戻ったのだから今もラウラはピンピンしているが』
(それは、よかった)
いまいちミカエルと対立する状況を想像出来ない。
でも、その情報が存在しているということは前回の戦いではノウトとミカエルが戦ってノウトがミカエルを殺した、ということになる。
『そして《炎を操る能力》。これに関しては何やらもう周知のようだから省こう。で次が───』
(死者を操るってやつ?)
『そうだ。そいつのことはなんて言っていたか。死んだ〈炎〉の勇者と《瞬間移動出来る能力》の奴の死体を操作して戦ったとか言ってたな』
(ふむふむ。どんな見た目だったかとか俺は何か言ってたか?)
『確か茶髪の女の子だと言っていたはずだ』
(茶髪の女の子……?)
誰だろう。勇者の顔をそれぞれ思い浮かべて思い出そうとする。
しかし該当する人物が特定出来ない。
白髪や赤髪とか特徴的な髪色だとわかりやすいのだが茶髪の女性と言われても普遍的過ぎてぱっと出てこない。
アイナ、エヴァ、ジル、ヴェッタ辺りはどんな髪色だったか正確に覚えていない。黒髪だったような茶髪だったような。
(ごめん、その子はわかんないな)
『それは仕方ない。次行こう。《瞬間移動出来る能力》。こやつの能力で勇者のパーティ全員が突然目の前に現れたとノウトは言っていた』
(早急に見つけ出さないとヴェロアの身が危ないな)
『こやつは黒髪の女の子でツーサイドアップだったと言っていたな』
(いやさっきから身体的特徴が髪型しかないじゃないか! 服とか顔とかそんなこと言ってなかったのか?)
『言っとらんかったな。ノウトも必死だったんだ。相手の身体的特徴を覚えているほど余裕があったとも思えんしな』
(くそぉ……。前の俺なにやってんだよ)
『まぁそう言うな。それでそのツーサイドアップの女の子は分かるか』
(……えっと、ゴメン、ツーサイドアップってどんな髪型?)
『うーんと……後ろ髪があるツインテール、みたいな感じか? さすがにツインテールは分かるな?』
後ろ髪があるツインテール。───ツインテール……?
(アイナだ……!)
初めて彼女に会った時その髪型の名称で悩んだ末、結局分からなかったのを思い出した。
『おっ、思い当たる節があったか』
(でも、……髪型なんて当てにならないよな。その都度変えてるかもしれないし)
『当てにならないことはないはずだ。何せ同じ時間軸を辿ってるのだからな。その子がこの世界線でも同じ髪型である可能性は十分高いだろう』
(確かに……)
『まずはそのアイナって子を説得せねばならないわけだな。出来そうか?』
(当然。任せてくれ)
ノウトは心の中できっぱりと言い放つ。
その時顔を見上げて隣座っているヴェロアと目を合わせる。
彼女は笑っていた。刻々とヴェロアの死は近付きつつあるというのにどこか彼女は余裕そうな表情だ。それだけノウトに信頼を置いている、ということなのだろう。
この人の期待に応えなくちゃ、だめなんだ。
出来るか出来ないかじゃない。
やるんだ。
「勇者様方~! そろそろフリュードに着くので身支度の方を宜しくお願いします!」
そう言われてパーティの面々がみんなはっと瞼を開ける。窓の外を見遣ると既に街の中に入っているのが分かった。
ノウトはさっきまで記入を続けていたスクロールを丸めてリュックにしまい込む。
「ついたね」
眠ったコリーに肩を預けられたレンがノウトを見て呟く。
「ああ」
まずはリアにヴェロアから貰った情報を提供しないとな。どこかで二人にならないといけない。
リアにもヴェロアが見えたらいいのに。
不可能だと分かっていてもそう思ってしまう。
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