あのエピローグのつづきから〜勇者殺しの勇者は如何に勇者を殺すのか〜

shirose

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第一章　勇者殺しの勇者

第16話　彼らとの道中

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　騒動が収まり、中央広場から王都正門までの道中を俺達はパトリツィア達と共に歩いていた。
　ノウトはレンと暇潰しがてら他愛ない会話をしていた。

「ここから魔人領とやらにはどうやって行くんだろうな」

「うーん、エクステンダーとか？」

「エクス………、何だって？」

「いや、……….ごめん、分かんない。忘れてくれ」

「普通、車とかじゃないのか？」

「車ってエクステンダーのことだろ？」

「いやなんか違う気がする。しかもそれさっき言ってたやつだよな」

「うん………何か名前だけはわかるんだけど、どういう用途で使うかが、それがすぐに分からなくなるんだ」

　ノウトは同じように車を思い出そうとする。車、くるま……。クルマ……ってなんだ？

「あれ……？えっと………ごめん、やめようこの話は」

「……そうだね。頭がおかしくなりそうだ」

　消された記憶を思い出そうとすると頭が酷く痛くなる。不思議な感覚だ。そこにあるのに手を伸ばすと消える、みたいな。
　この時既に何を思い出そうとしていたかも忘れていた。

「ノウト」

ダーシュが俺の方を見ていつも通りぼそっと喋る。

「王が記憶を戻せる術を持ってるなら脅して戻せって言えばいいと俺は思う」

「……非人道的過ぎるだろ」

「こっちから記憶を奪ったんだ。取り戻す為には何やったって誰も怒んないだろ」

「でも、なんかだめだよ。それは。ルール違反というか」

「まぁ、そんなことしねぇけど」

　実際それはひとつの手とは言えなくもないが、この世にはやっていい事と悪いことがあって、それはやっちゃいけない事だ。ライン超えってやつ。

「魔皇ってのにも会ってみたい」

「そうだな」

　ヴェロアとは今日一日会えないと彼女が言っていた。自分で何とかしないと。何とかってなんだよ。
　どこかでリアと二人になりたいと思う自分がいることに軽く驚く。

　ノウトのしようとしてることを分かってて尚、泳がせておくなんてどっかおかしいとしか思えない。
　でも、彼女が味方になってくれれば、とも思ってしまう。
　不死身の治癒者であるリアがこっちについてくれれば勇者の皆殺しは容易になるだろう。
　でもリアはノウトがレンを殺そうとした時その手を止めた。
　『私も混ぜて』という言葉とその行動が余り理にかなってないような気もする。

　リアの方を見遣るとニコ達女性陣と共に歩きながら談笑していた。
　何やら楽しそうだ。一瞬見ただけなのに目が合ってしまった。彼女はこっちを見て微笑んでみせるが、ノウトはそれをなんとなしに無視して目線を逸らす。

「気があるんですか？」

「え？」

　そこで突然、カミルが話しかけて来た。濃緑色のローブを着た男だ。昨日よりは見た目が少し変わってはいるけど相変わらずそのローブは欠かせないらしい。

「だから、彼女のこと気になってるんですか？」

「いやいやいや。気？　そんなのないよ」

「その慌て具合、図星ですね」

「慌ててはないだろ。至って普通」

「そんなわけないです。パティはそちらには渡しませんよ」

「パ、パティ？　いや、俺はリアを見てて……」

「あぁ、やっぱりリアさんに気があったんですね」

「うっ……」

「ノウト君。僕はこう思うんですよね」

　カミルはハニカミながらウィンクして、

「思いは口にしないと、気付いた時にはもう遅いですよ」

「……うっさいよ」

「それはそれとして、シャルロットちゃん可愛いですよね。欲しいです」

「……おいダーシュこいつ串刺しにしてくれ」

「任せろ」

　ダーシュは間を置くことなく空中に刃を出現させてカミルの周囲を刃で取り囲む。

「ちょちょちょ」

「死ねロリコンドM野郎」

　ジルがどこから聞きつけたのか彼を罵倒する。

「控えめに言って死んだらいいと思うよ」

　何故かレンが便乗して死を促してきた。目に殺意が篭ってる。正直怖い。

「ちょっと！　何やってるんです！？」

　パトリツィアが彼らに気づき、慌てた様子で尋ねる。

「カミルの死刑を執行しようかと」

「駄目に決まっているでしょう！　何考えてるんです！」

「馬鹿ダーシュ何やってんのよ全く」

「ノウト、お前のせいだぞ」

「え、いや俺……？」

　思わぬ矛先がノウトに向く。
　人のことはあまり言えないがそっちのパーティも中々に問題児を抱えてるな。
　ロリコンドMより勇者を殺そうとしてる自分はマシ……なわけないか。

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