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第一章 勇者殺しの勇者
第11話 さぁ、話をしようか
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時刻は午前2時20分を回っていた。
夜は更け、二つの月が俺らを照らしていた。
金属のテーブルを間に置いた反対側に漆黒の角を生やした真っ白な少女が座っている。
ヴェロアと名乗る彼女は自らを魔皇と称し、俺に『勇者の全滅』を命令した。
『こっちも月が綺麗なのは同じだな、ノウト』
「同じ空の下に居るから当然だよ。……このタイミングで現れたってことは姿は見えなくとも、こっちの様子は確認出来てるってことなのか?」
ヴェロアが俺以外の人間に見えていないと知りつつも周りに誰も居ないので口頭で会話する。
見られた場合、完全に頭がおかしい人になるが、小声で話してれば大して目立たないだろう。
これは一対一で面と向かって話してくれる魔皇であるヴェロアに敬意を払うが故の行為だ。
『まぁ、そういうことになるな。……あっ、えっと。にゅ、入浴中は見てないから安心してくれ』
「そ、そう」
どうでもいいような、どうでもよくないような微妙な情報だ。
「色々と質問したい。こっちから質問攻めになると思うがいいか?」
『ああ。もちろん。何にでも答えるぞ』
俺はまず一つ気になっていたことを彼女に問うことにした。
「ヴェロアが死ぬと俺も死ぬっていうのはどういう意味なんだ」
『そのまんまの意味だな。こうやってお前の目の前に顕現できているのもそれと関係がある。これは眷属魔術と言うんだが……』
彼女は少し間を置いて、話し出す。
『要するにお前は私の眷属なんだ』
「眷属……。……俺らって、どんな間柄だったんだ?」
『わ、私の口からそれを言わせるのか、ノウト。お前も随分図々しくなったな。そんなお前が珍しいから咎めはしないが』
「なになになに。単純に部下だったとかじゃないのか?」
『まぁ、そうなんだが』
「そうなのかよ」
『私とお前は特別だったんだ。契りを交わした仲だからな。その契りを交わした間柄を魔眷属と呼ぶ。魔眷属の親となるものにはこうやって監視したり意思を通じ合ったり出来るわけだ』
「それでその副作用、というか代償に命の共有があるんだな」
『その通りだ。尤も、お前が死んでも私は死なないからその点、共有とは違うがな』
「それは分かってる。……信じるよ、ヴェロア。君のことを」
『やっとスタートラインに立てたな。また宜しく、ノウト』
屈託のない笑顔で笑う彼女と握手をする。その言葉使いからは想像出来ないほど小さく華奢な手だ。
「宜しく」
ヴェロアは幽霊みたいな認識だと思っていたが俺だけには触れられる様だ。それも眷属魔術とやらの効果だろう。
「えっと、敬語とかで話した方が話した方がいいのでしょうか、魔皇様」
『うっ……。そ、それじゃつまらないだろうが。今まで通り普通に話せ』
「わ、分かったよ、ヴェロア」
『う、うむ。それじゃ、勇者全滅を目指して、勇者の情報共有といくか』
「分かった。……いや、ちょっと待って」
『なんだ?』
「まだ聞きたいことが山ほどあるんだ」
『いいぞ。面倒くさくないこと以外何でも答える』
「さっきと変わってないか……? 聞きたいのは、どうして俺らは記憶を失ってるんだってことなんだけど」
『それは知らんな。私はもちろん、メフィも分からないだろう。何せこうやって人間領に訪れるのも初めてだからな』
「なるほど。その時々出てくるそのメフィってのは誰のことなんだ?」
『それをメフィが聞いたら凄く悲しむな』
「えっ!?」
『メフィは魔帝国マギカ魔術研究所所長で私の直属護衛兵、つまりお前と同じ魔皇軍四天王の一角だ』
「…んん!? 何それ初耳なんだけど俺、魔皇軍の四天王だったの!?」
魔術研究所やらなんやら気になることもあるがそれよりも四天王ってなんだか、痛々しいというか。
『そういえば言ってなかったな。四天王と自称しろ、と私は言っていたのだがお前含めて誰一人として四天王という単語を口頭で使わなかったな。四天王と言いつつも五人居たのが間違いだったか』
「そりゃそうだろ。五人なのに四天王って。しかもなんか、それ言うの恥ずいし」
『そ、そうか? めちゃくちゃかっこいいと思ってたんだが』
「感性が凄まじいな。その、メフィは魔術に長けてるって感じなのか」
『そうだ。というよりも魔術を解読、開発するのが彼女の専門だな。火力だったらかつての私の方が上だ』
「かつてのってことは今は違うのか?」
『今は、そうだな。一般魔人兵にも本気で来られたら対処出来ないだろう』
「そんなだったらすぐに勇者に殺されちゃうじゃないか!」
『その為にお前がいるんだろう』
「な、なるほど」
『かつての私だったらお前の仲間にいる勇者四人も一瞬で消し炭にすることが出来るんだが、前回はなんと目視しただけで私の魔術を封じて、自分のものにするというトンデモ勇者がいたのでな。そいつにあろう事か遁走を余儀なくされてしまった。だが今回はお前の手柄により早々に殺すことが出来た。もう勝ちは見えたも同然だな』
「もしかしてそれって……」
『ああ、お前が始まりの場所で殺した男だ』
「やっぱり……」
『あそこで殺すのはかなりハイリスクだったのだが、あの場で殺さなければ前回と同じ悲劇を繰り返すと思ったのでな』
「ずっと気になっていたんだけど、前回ってのは?」
『ああ。それも言ってなかったな。単刀直入に言うと、実は今回の第七次人魔大戦は二回目なんだよ』
「つまり……どういうことなんだ? まさか、過去に戻ったてことか?」
『そのまさかだ。魔皇城の地下に先祖代々から伝わってきたという神機、《輪廻六芒星魔術陣》というものがある。前回、第七次人魔大戦で窮地に追い込まれた私達はこれを使って大戦の起こる二日前に戻ったんだ。《輪廻六芒星魔術陣》は魔皇だけが使える代物で膨大な量の魔力と引き換えに勇者が召喚された二日前に戻ることが出来る、という神機だ』
「ふむふむ。……神機ってのは?」
『数千年前に魔神が造り出したという人智を超えた道具のことだ。ただの賢人が作ったという諸説もあるが。何を目的に作り出されたかは分かっていないんだ』
「なるほど。戻ったってことに関しては大体分かった。ありがとう、ヴェロア」
『お安い御用だ』
ヴェロアがニカッと笑う。
毎度思うが、こんな純情そうな笑顔で笑う少女が魔皇なんて厳つい名称で呼ばれているなんてそうそう信じられない。
「それで二日前に戻ったあとに何があったんだ?」
『その後、お前を始まりの場所、あの暗闇の部屋に瞬間転移魔術で飛ばした』
「内側から勇者を全滅させるために、か」
『そうだ。私がこう無力になって勇者を真っ向から迎え撃てば前回よりも悲惨な結果になるのは目に見えているからな』
「俺の重大度やばいな……」
他の勇者が魔皇の所に辿り着くまでに俺が何とかしないといけないのか。
「でも俺の《神技》、言っちゃなんだけど弱い、というか20人弱いる勇者たちを皆殺しに出来るほどの派手な能力じゃないんだけど。それに〈ステイタス〉もなんか表示がおかしいし』
『ふーむ。推測だが、それは記憶が消されたことに関係しているな』
「……そうなのか。こんなに弱いのに魔皇直属護衛兵なのか、とも思ったけど」
『いや、お前は強かったよ。お前が本気になったらかつての私も手こずっただろうな』
「それはなんだか……凄いな」
『他人事みたいに言うな。お前のことだ。自信を持て』
「ありがとう。でも記憶が無くなって弱くなったんだろ? どうしたらいいんだ?」
『ああ、それなら問題ない。メフィがお前の記憶を戻せる筈だ』
「って、えぇ!? そんなこと可能なのか!?」
『私は余り詳しくはないが一応、事前にお前とメフィで手筈を整えていたようだからな。封魔結界を越えたらメフィと落ち合え。場所はそうだな……』
ヴェロアが腕を組んで考える。
『うーん……。後々伝えよう。あいつらと相談して決めておく。お前には伝えられるわけだしな』
「分かった」
『今回はノウトがいるから封魔結界付近の罠は解除しておかないといけないな……』
ヴェロア何やらぶつぶつと独り言を言っていた。
「魔皇様も大変だな」
『ノウトも頑張ってくれよ。お前にかかってるんだからな』
「分かってる。そう言えばメフィや他の魔皇直属護衛兵、四天王のみんなで勇者を迎え撃てないのか?」
『可能ではあるな。ただ出来るだけ封魔結界を通ってこっち側に来る前に母体数を減らしておいて欲しいってのが正直な所だ』
「ふむふむ。……了解した」
『状況を整理したところ、前回の大戦では私が10人、ロストガンが5人、ノウトが4人、ラウラが1人の勇者を殺したってところだったな。メフィとユークが殺した数は正確ではないが、おそらく1~3人くらいだろう』
「なるほど。つまり、前回ヴェロアが担当した10人と俺が殺したっていう4人、合わせて合計14人の勇者を殺せれば安泰ってわけか」
『極端な話だが、そういう事だな。すでに一人を殺しているから単純計算であと13人だな』
「そう聞くと案外いけそうかも……」
『そうか! そう言って貰えて嬉しいぞ』
───ただ一つだけ問題がある。これが最大の難所だ。これを越えずに勇者全滅の命令を達成することは出来ない。
『お前が懸念してるのは、殺すことへの罪悪感。良心の呵責。そうだろう?』
そんな俺をヴェロアは厳粛な表情で見つめてくるのだった。
夜は更け、二つの月が俺らを照らしていた。
金属のテーブルを間に置いた反対側に漆黒の角を生やした真っ白な少女が座っている。
ヴェロアと名乗る彼女は自らを魔皇と称し、俺に『勇者の全滅』を命令した。
『こっちも月が綺麗なのは同じだな、ノウト』
「同じ空の下に居るから当然だよ。……このタイミングで現れたってことは姿は見えなくとも、こっちの様子は確認出来てるってことなのか?」
ヴェロアが俺以外の人間に見えていないと知りつつも周りに誰も居ないので口頭で会話する。
見られた場合、完全に頭がおかしい人になるが、小声で話してれば大して目立たないだろう。
これは一対一で面と向かって話してくれる魔皇であるヴェロアに敬意を払うが故の行為だ。
『まぁ、そういうことになるな。……あっ、えっと。にゅ、入浴中は見てないから安心してくれ』
「そ、そう」
どうでもいいような、どうでもよくないような微妙な情報だ。
「色々と質問したい。こっちから質問攻めになると思うがいいか?」
『ああ。もちろん。何にでも答えるぞ』
俺はまず一つ気になっていたことを彼女に問うことにした。
「ヴェロアが死ぬと俺も死ぬっていうのはどういう意味なんだ」
『そのまんまの意味だな。こうやってお前の目の前に顕現できているのもそれと関係がある。これは眷属魔術と言うんだが……』
彼女は少し間を置いて、話し出す。
『要するにお前は私の眷属なんだ』
「眷属……。……俺らって、どんな間柄だったんだ?」
『わ、私の口からそれを言わせるのか、ノウト。お前も随分図々しくなったな。そんなお前が珍しいから咎めはしないが』
「なになになに。単純に部下だったとかじゃないのか?」
『まぁ、そうなんだが』
「そうなのかよ」
『私とお前は特別だったんだ。契りを交わした仲だからな。その契りを交わした間柄を魔眷属と呼ぶ。魔眷属の親となるものにはこうやって監視したり意思を通じ合ったり出来るわけだ』
「それでその副作用、というか代償に命の共有があるんだな」
『その通りだ。尤も、お前が死んでも私は死なないからその点、共有とは違うがな』
「それは分かってる。……信じるよ、ヴェロア。君のことを」
『やっとスタートラインに立てたな。また宜しく、ノウト』
屈託のない笑顔で笑う彼女と握手をする。その言葉使いからは想像出来ないほど小さく華奢な手だ。
「宜しく」
ヴェロアは幽霊みたいな認識だと思っていたが俺だけには触れられる様だ。それも眷属魔術とやらの効果だろう。
「えっと、敬語とかで話した方が話した方がいいのでしょうか、魔皇様」
『うっ……。そ、それじゃつまらないだろうが。今まで通り普通に話せ』
「わ、分かったよ、ヴェロア」
『う、うむ。それじゃ、勇者全滅を目指して、勇者の情報共有といくか』
「分かった。……いや、ちょっと待って」
『なんだ?』
「まだ聞きたいことが山ほどあるんだ」
『いいぞ。面倒くさくないこと以外何でも答える』
「さっきと変わってないか……? 聞きたいのは、どうして俺らは記憶を失ってるんだってことなんだけど」
『それは知らんな。私はもちろん、メフィも分からないだろう。何せこうやって人間領に訪れるのも初めてだからな』
「なるほど。その時々出てくるそのメフィってのは誰のことなんだ?」
『それをメフィが聞いたら凄く悲しむな』
「えっ!?」
『メフィは魔帝国マギカ魔術研究所所長で私の直属護衛兵、つまりお前と同じ魔皇軍四天王の一角だ』
「…んん!? 何それ初耳なんだけど俺、魔皇軍の四天王だったの!?」
魔術研究所やらなんやら気になることもあるがそれよりも四天王ってなんだか、痛々しいというか。
『そういえば言ってなかったな。四天王と自称しろ、と私は言っていたのだがお前含めて誰一人として四天王という単語を口頭で使わなかったな。四天王と言いつつも五人居たのが間違いだったか』
「そりゃそうだろ。五人なのに四天王って。しかもなんか、それ言うの恥ずいし」
『そ、そうか? めちゃくちゃかっこいいと思ってたんだが』
「感性が凄まじいな。その、メフィは魔術に長けてるって感じなのか」
『そうだ。というよりも魔術を解読、開発するのが彼女の専門だな。火力だったらかつての私の方が上だ』
「かつてのってことは今は違うのか?」
『今は、そうだな。一般魔人兵にも本気で来られたら対処出来ないだろう』
「そんなだったらすぐに勇者に殺されちゃうじゃないか!」
『その為にお前がいるんだろう』
「な、なるほど」
『かつての私だったらお前の仲間にいる勇者四人も一瞬で消し炭にすることが出来るんだが、前回はなんと目視しただけで私の魔術を封じて、自分のものにするというトンデモ勇者がいたのでな。そいつにあろう事か遁走を余儀なくされてしまった。だが今回はお前の手柄により早々に殺すことが出来た。もう勝ちは見えたも同然だな』
「もしかしてそれって……」
『ああ、お前が始まりの場所で殺した男だ』
「やっぱり……」
『あそこで殺すのはかなりハイリスクだったのだが、あの場で殺さなければ前回と同じ悲劇を繰り返すと思ったのでな』
「ずっと気になっていたんだけど、前回ってのは?」
『ああ。それも言ってなかったな。単刀直入に言うと、実は今回の第七次人魔大戦は二回目なんだよ』
「つまり……どういうことなんだ? まさか、過去に戻ったてことか?」
『そのまさかだ。魔皇城の地下に先祖代々から伝わってきたという神機、《輪廻六芒星魔術陣》というものがある。前回、第七次人魔大戦で窮地に追い込まれた私達はこれを使って大戦の起こる二日前に戻ったんだ。《輪廻六芒星魔術陣》は魔皇だけが使える代物で膨大な量の魔力と引き換えに勇者が召喚された二日前に戻ることが出来る、という神機だ』
「ふむふむ。……神機ってのは?」
『数千年前に魔神が造り出したという人智を超えた道具のことだ。ただの賢人が作ったという諸説もあるが。何を目的に作り出されたかは分かっていないんだ』
「なるほど。戻ったってことに関しては大体分かった。ありがとう、ヴェロア」
『お安い御用だ』
ヴェロアがニカッと笑う。
毎度思うが、こんな純情そうな笑顔で笑う少女が魔皇なんて厳つい名称で呼ばれているなんてそうそう信じられない。
「それで二日前に戻ったあとに何があったんだ?」
『その後、お前を始まりの場所、あの暗闇の部屋に瞬間転移魔術で飛ばした』
「内側から勇者を全滅させるために、か」
『そうだ。私がこう無力になって勇者を真っ向から迎え撃てば前回よりも悲惨な結果になるのは目に見えているからな』
「俺の重大度やばいな……」
他の勇者が魔皇の所に辿り着くまでに俺が何とかしないといけないのか。
「でも俺の《神技》、言っちゃなんだけど弱い、というか20人弱いる勇者たちを皆殺しに出来るほどの派手な能力じゃないんだけど。それに〈ステイタス〉もなんか表示がおかしいし』
『ふーむ。推測だが、それは記憶が消されたことに関係しているな』
「……そうなのか。こんなに弱いのに魔皇直属護衛兵なのか、とも思ったけど」
『いや、お前は強かったよ。お前が本気になったらかつての私も手こずっただろうな』
「それはなんだか……凄いな」
『他人事みたいに言うな。お前のことだ。自信を持て』
「ありがとう。でも記憶が無くなって弱くなったんだろ? どうしたらいいんだ?」
『ああ、それなら問題ない。メフィがお前の記憶を戻せる筈だ』
「って、えぇ!? そんなこと可能なのか!?」
『私は余り詳しくはないが一応、事前にお前とメフィで手筈を整えていたようだからな。封魔結界を越えたらメフィと落ち合え。場所はそうだな……』
ヴェロアが腕を組んで考える。
『うーん……。後々伝えよう。あいつらと相談して決めておく。お前には伝えられるわけだしな』
「分かった」
『今回はノウトがいるから封魔結界付近の罠は解除しておかないといけないな……』
ヴェロア何やらぶつぶつと独り言を言っていた。
「魔皇様も大変だな」
『ノウトも頑張ってくれよ。お前にかかってるんだからな』
「分かってる。そう言えばメフィや他の魔皇直属護衛兵、四天王のみんなで勇者を迎え撃てないのか?」
『可能ではあるな。ただ出来るだけ封魔結界を通ってこっち側に来る前に母体数を減らしておいて欲しいってのが正直な所だ』
「ふむふむ。……了解した」
『状況を整理したところ、前回の大戦では私が10人、ロストガンが5人、ノウトが4人、ラウラが1人の勇者を殺したってところだったな。メフィとユークが殺した数は正確ではないが、おそらく1~3人くらいだろう』
「なるほど。つまり、前回ヴェロアが担当した10人と俺が殺したっていう4人、合わせて合計14人の勇者を殺せれば安泰ってわけか」
『極端な話だが、そういう事だな。すでに一人を殺しているから単純計算であと13人だな』
「そう聞くと案外いけそうかも……」
『そうか! そう言って貰えて嬉しいぞ』
───ただ一つだけ問題がある。これが最大の難所だ。これを越えずに勇者全滅の命令を達成することは出来ない。
『お前が懸念してるのは、殺すことへの罪悪感。良心の呵責。そうだろう?』
そんな俺をヴェロアは厳粛な表情で見つめてくるのだった。
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