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第一章 勇者殺しの勇者
第4話 取り留めのない明日に向かって
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「……どうして俺なんだ?」
「それも、秘密」
ノウトの心臓は次第に高鳴り始めていた。
可憐な少女にパーティを組むように提案されたからではない。
リアは俺が異質な存在であることに気づいてしまったのではないか、ノウトはそう考えたのだ。
どこでだ? いつ?
ステイタスの件も、俺にしか見えないヴェロアも他の人物に悟られないように気を付けていたのに。
「秘密秘密って。何か教えてくれてもいいんじゃないか?」
「じゃあ訂正。面白そうだから、にするね」
「面白そうだからって……理由になってないぞ」
こいつ。本当に気付いているのかも知れない。
得体の知れない者同士で何も予備知識がないままにノウトを指名した。
明らかに異常だ。
少なくとも自分自身では仕草や動作に違和感はないように行動していたし、余り目立たないようにもしていた。
「いいの。わたしがあなたと組みたいって言ってるだけだから。それだけ。次、君だよ」
かなり調子を狂わされた。
未だ内心動揺を抑えきれてない。
落ち着け、ノウト。俺なら、出来る。
「俺はノウトだ。能力はもちろん言えない。それとリアと組むかはまだ決めてない」
さらっと自己紹介を終える。
リアの方をちらっと見ると目が合い、明らかに不満げな顔をしていた。
次に自己紹介をするように隣の爽やかな青髪の青年に促す。
「じゃあ次、俺だね。名前はローレンス・レーヴェレンツ。長ったらしいからレンって呼んで欲しい。あと」
彼は一呼吸置いて話を続ける。
「俺も彼と組みたいって思う」
ローレンス、もといレンはその手を俺の方へ向けていた。
「はぁ!? なんでだよ!」
「面白そうだから?」
「語尾が上がってんだよ」
「いいじゃん。楽しくなりそうだよ。ねっ」
そう言って彼はリアと目配せする。
リアは腕を組んでうんうんと頷く。いや、うんうんじゃないんだよ。
レンとならまだしも何か嫌な予感がするリアとはあまり組みたくはない。
「それに気が合いそうだと思ったんだ」
「………」
根拠が曖昧すぎる。まさか、こいつも……?
いや、考え過ぎか。疑心暗鬼になりすぎてるかもしれない。バレて何が起こるかもヴェロアは言ってなかったし。
今は考えても無駄だな。
「次、どうぞ」
レンが次の人に自己紹介を促すと、
「私はシャルロット」
話を始めた彼女はどう見ても場違いと言い様がないほどに幼い容姿だった。身長は130センチくらいだろう。
腰までありそうな長い金色の髪に赤いカチューシャが特徴的な少女。まさに生ける人形のようだった。
「舐めないで欲しいんだけど、私これでも18だから」
その言葉にここにいる全員が驚いた。ミカエルに至っては「え……僕より年上……?」と呟く程だった。
「そういうことだから宜しく」
そして彼女は思い出したかのように次の言葉を繋いだ。
「あと私もそこの人と組みたいわ」と、その指はまたしても俺を指差していた。
「だからなんでだ!?」
「面白そうだから……ってのは冗談として。あなたと言うよりそこの彼女とあなたと組みたいわ。私と同じことを考えているようだから」
シャルロットは意味深なことを残して自己紹介を終えた。俺とリアがシャルロットと同じことを……? 何か共通点があったのか?
「次は私ですね。私はカザミ・フウカです。フウカって呼んでもらえると有難いです」
自己紹介を始めたその彼女は黒髪のポニーテール、そして綺麗な顔立ちで……とそこまでは至って普通、というかそれ以上なのだが、その服装が異様だった。
正直初めて見た時からその服についてツッコミたくて堪らなかった。
そして名前も今までのやつとはどこか違和感があった。
「なんであなた、そんなぴっちりした変な服着てるの……?」
恐る恐るシャルロットがフウカに質問する。
そう、彼女の服装は身体のラインが異様なほど強調された服とも下着とも言えない格好をしているのだ。服か下着かで言えば下着と言っても遜色ないだろう。
「こ、これは決して変な服などではありませんよ! これは忍びの装束で! しのびは……にっ……──。………あ、あれ…? ごめんなさい、何かを言おうとしたんですけど……忘れてしまいました」
「そ、そう。風邪引かないようにね」
「ありがとうございます」
口調がキツめだったシャルロットが彼女の体調を気にする。確かに寒そうな格好ではあるけど。
それに素直に応じるフウカがなんだが可愛く見えた。
「…………」
次の順番が回ってきたのに黒髪ぼさぼさ頭の男はぼーっとその場に突っ立っていた。
「あなたの番ですよ」
フウカが促してようやく彼がぼそぼそと話を始めた。
「ダーシュ・ヴァーグナー」
「……えっそれだけですか? まだ何かこう、ありますよね?」
「うるさい全身黒タイツ」
彼がぎりぎり聞こえるような声量でぼそっと呟く。
「今馬鹿にしませんでした!? 聞こえましたよ!! 私ももうそろそろ着替えたくなってきたんですけど!」
ダーシュはぼさぼさな髪の向こうから微かにのぞかせる鋭い眼光でフウカを睨んでいた。なんだか恐ろしいやつだ。
「次は私ですね」
そう話し始めた彼女は明らかに勇者といった容姿ではなくまるでお姫様のようだった。
桃色のドレスに金髪ツインテール。極めつけは頭にちょこんと乗っているティアラ。
彼女は左手を顔の近くに持って話を続ける。どうやら〈ステイタス〉を見ているようだ。
「名前はパトリツィア・ジクリンデ=ソウド=イグナイスト。気軽にパティとお呼びください」
「お姫様みたいだね~」
自己紹介を聞くのに飽きてエヴァとミカエルと談笑していたカンナが彼女の容姿と話し方に感想を述べる。
「そうだったのかも知れませんね。……それもこれも記憶が無いせいで」
「ごめんね。そんなつもりじゃなくって」
「いえ、いいんです。魔皇を倒せばいいんでしょう? 任せてください。それにはかなり自信があります」
「おお~! 頑張って!」
カンナは応援するように親指を上げてパティに向けた。
「次、いいですよ」
パティが次を促す。
「私はジル。宜しく。あと私は五人でも四人でもいいから」
話し始めた彼女は無表情で感情が読み取りづらい。
そして彼女も四人パーティを自分で申し出る。四人であるメリットってなんだ。少数精鋭……? いや人数は多い方が有利に決まっている。
「何でだ?」
ダーシュが単刀直入に質問をする。
するとジルは目を細くしてダーシュを睨み、
「は? 何でもいいでしょ」
「そうか」
ジルが汚物を見るかのような表情で返事を返したのにダーシュは全く物怖じしなかった。
この二人、強い。いろんな意味で。
「次はボクだね。やっほーニコだよ。ニコって呼んでね」
容姿と声は可憐な少女なだけにボクという一人称にはかなり違和感を感じた。
「因みにボクは〈氷〉の勇者。覚えて帰ってね」
ニコが右手の人差し指を天に向かって指すとぱらぱらと雪の結晶が落ちてきて、それが太陽の光を反射して幻想的な風景と化した。
心做しか肌寒くなった気がする。
これが勇者の力か。その場に居た全員が驚いた。
その能力にももちろん驚いてはいたが、その能力の告白にも驚いていた。
能力の開示には現時点ではほぼ意味がない。それを言うのはパーティを完全に決めてから仲間内だけに話せばいいだろう。
「次どうぞー」
ニコが雪の結晶を作りながら自己紹介を進める。
「はい。僕はカミル・ドラシルです。以後お見知りおきを」
カミルは羽根つきの帽子を被っており濃緑色のローブを着ていた。
身長はレンより少し高く、170cm後半くらいだろう。
「えっそれだけー?」
ニコが他に何かを喋るように催促する。
「そうですね。それでは僕はあなたとパーティを組みたいです」
「え、えぇ!? ボクはいいけどさぁ。でもでもボクお姫様とも組みたいなぁ」
ニコはそう言って目線をカミルからパトリツィアに移す。
「えっ!? わ、私ですか? そもそもまだ姫だと決まったわけじゃ」
「それじゃあ、私も姫と組みたいわ」
冷たい少女、ジルもそれに続いていった。
「俺も姫と組みたい」
そう続いていったのは意外にもぼさぼさ頭の男、ダーシュだった。
「姫~。いいでしょ~?」
「しょ、しょうがないですね。いいですよ、パーティ組みましょうか」
「やった~! ふふ~ん」
ニコは嬉しそうに姫……じゃなくてパトリツィアの片腕を掴み踊り出す。
「ちょっ、ちょっと!」
パトリツィアは困った風をしているが何やら嬉しそうだ。
「いや~平和だね。ノウトくん」
「ああ、そうだな」
リアが話し掛けてきたので適当に流す。
「それでパーティの件なんだけどもう向こうも決まったみたいだしこっちも決定でいいよね」
「……ぐっ」
「いいよね」
「しょうがないな」
「やった」
リアは無邪気な笑顔を見せてみせた。
そこには何か企みがあるようには到底思えなかった。
俺は深く考えることを放棄した。
そこで一つあることを忘れているのに気付いた。
「私が残っちゃいましたね……」
そう、フウカが未だどのパーティにも加入していなかったのだ。
あと一人枠があるのはミカエル、カンナ、スクード、エヴァのパーティ。それにノウト、リア、レン、シャルロットのパーティだ。
そのどちらにフウカが入るかで四人のパーティが決まってしまう。
「フウカちゃん」
ミカエルが真面目な面持ちで語り掛ける。
「僕達はいいから、そっちに入ってあげて」
スクードはどこか不満そうな顔をしていたがしょうがない、といった面持ちでもあった。
「い、いいんですか?」
「うん、大丈夫。こっちはこの四人で頑張るよ。それに勝つ気しかしないしね」
「分かりました。そっちも頑張ってくださいね」
「おうとも!」
フウカはこちらに向き直る。
「そちらのパーティに、入れさせてください!」
「もちろん」
最初に応えたのはレンだった。
「よろしくね!」とリアが笑い、
「別に構わないわよ」とシャルロットが無愛想に言う。
「がんばろう」
俺は声を振り絞り、これから仲間になるであろうみんなの期待に応えようとした。
「楽しくなりそうですね」
そして、フウカは楽しそうに微笑んだ。
「それも、秘密」
ノウトの心臓は次第に高鳴り始めていた。
可憐な少女にパーティを組むように提案されたからではない。
リアは俺が異質な存在であることに気づいてしまったのではないか、ノウトはそう考えたのだ。
どこでだ? いつ?
ステイタスの件も、俺にしか見えないヴェロアも他の人物に悟られないように気を付けていたのに。
「秘密秘密って。何か教えてくれてもいいんじゃないか?」
「じゃあ訂正。面白そうだから、にするね」
「面白そうだからって……理由になってないぞ」
こいつ。本当に気付いているのかも知れない。
得体の知れない者同士で何も予備知識がないままにノウトを指名した。
明らかに異常だ。
少なくとも自分自身では仕草や動作に違和感はないように行動していたし、余り目立たないようにもしていた。
「いいの。わたしがあなたと組みたいって言ってるだけだから。それだけ。次、君だよ」
かなり調子を狂わされた。
未だ内心動揺を抑えきれてない。
落ち着け、ノウト。俺なら、出来る。
「俺はノウトだ。能力はもちろん言えない。それとリアと組むかはまだ決めてない」
さらっと自己紹介を終える。
リアの方をちらっと見ると目が合い、明らかに不満げな顔をしていた。
次に自己紹介をするように隣の爽やかな青髪の青年に促す。
「じゃあ次、俺だね。名前はローレンス・レーヴェレンツ。長ったらしいからレンって呼んで欲しい。あと」
彼は一呼吸置いて話を続ける。
「俺も彼と組みたいって思う」
ローレンス、もといレンはその手を俺の方へ向けていた。
「はぁ!? なんでだよ!」
「面白そうだから?」
「語尾が上がってんだよ」
「いいじゃん。楽しくなりそうだよ。ねっ」
そう言って彼はリアと目配せする。
リアは腕を組んでうんうんと頷く。いや、うんうんじゃないんだよ。
レンとならまだしも何か嫌な予感がするリアとはあまり組みたくはない。
「それに気が合いそうだと思ったんだ」
「………」
根拠が曖昧すぎる。まさか、こいつも……?
いや、考え過ぎか。疑心暗鬼になりすぎてるかもしれない。バレて何が起こるかもヴェロアは言ってなかったし。
今は考えても無駄だな。
「次、どうぞ」
レンが次の人に自己紹介を促すと、
「私はシャルロット」
話を始めた彼女はどう見ても場違いと言い様がないほどに幼い容姿だった。身長は130センチくらいだろう。
腰までありそうな長い金色の髪に赤いカチューシャが特徴的な少女。まさに生ける人形のようだった。
「舐めないで欲しいんだけど、私これでも18だから」
その言葉にここにいる全員が驚いた。ミカエルに至っては「え……僕より年上……?」と呟く程だった。
「そういうことだから宜しく」
そして彼女は思い出したかのように次の言葉を繋いだ。
「あと私もそこの人と組みたいわ」と、その指はまたしても俺を指差していた。
「だからなんでだ!?」
「面白そうだから……ってのは冗談として。あなたと言うよりそこの彼女とあなたと組みたいわ。私と同じことを考えているようだから」
シャルロットは意味深なことを残して自己紹介を終えた。俺とリアがシャルロットと同じことを……? 何か共通点があったのか?
「次は私ですね。私はカザミ・フウカです。フウカって呼んでもらえると有難いです」
自己紹介を始めたその彼女は黒髪のポニーテール、そして綺麗な顔立ちで……とそこまでは至って普通、というかそれ以上なのだが、その服装が異様だった。
正直初めて見た時からその服についてツッコミたくて堪らなかった。
そして名前も今までのやつとはどこか違和感があった。
「なんであなた、そんなぴっちりした変な服着てるの……?」
恐る恐るシャルロットがフウカに質問する。
そう、彼女の服装は身体のラインが異様なほど強調された服とも下着とも言えない格好をしているのだ。服か下着かで言えば下着と言っても遜色ないだろう。
「こ、これは決して変な服などではありませんよ! これは忍びの装束で! しのびは……にっ……──。………あ、あれ…? ごめんなさい、何かを言おうとしたんですけど……忘れてしまいました」
「そ、そう。風邪引かないようにね」
「ありがとうございます」
口調がキツめだったシャルロットが彼女の体調を気にする。確かに寒そうな格好ではあるけど。
それに素直に応じるフウカがなんだが可愛く見えた。
「…………」
次の順番が回ってきたのに黒髪ぼさぼさ頭の男はぼーっとその場に突っ立っていた。
「あなたの番ですよ」
フウカが促してようやく彼がぼそぼそと話を始めた。
「ダーシュ・ヴァーグナー」
「……えっそれだけですか? まだ何かこう、ありますよね?」
「うるさい全身黒タイツ」
彼がぎりぎり聞こえるような声量でぼそっと呟く。
「今馬鹿にしませんでした!? 聞こえましたよ!! 私ももうそろそろ着替えたくなってきたんですけど!」
ダーシュはぼさぼさな髪の向こうから微かにのぞかせる鋭い眼光でフウカを睨んでいた。なんだか恐ろしいやつだ。
「次は私ですね」
そう話し始めた彼女は明らかに勇者といった容姿ではなくまるでお姫様のようだった。
桃色のドレスに金髪ツインテール。極めつけは頭にちょこんと乗っているティアラ。
彼女は左手を顔の近くに持って話を続ける。どうやら〈ステイタス〉を見ているようだ。
「名前はパトリツィア・ジクリンデ=ソウド=イグナイスト。気軽にパティとお呼びください」
「お姫様みたいだね~」
自己紹介を聞くのに飽きてエヴァとミカエルと談笑していたカンナが彼女の容姿と話し方に感想を述べる。
「そうだったのかも知れませんね。……それもこれも記憶が無いせいで」
「ごめんね。そんなつもりじゃなくって」
「いえ、いいんです。魔皇を倒せばいいんでしょう? 任せてください。それにはかなり自信があります」
「おお~! 頑張って!」
カンナは応援するように親指を上げてパティに向けた。
「次、いいですよ」
パティが次を促す。
「私はジル。宜しく。あと私は五人でも四人でもいいから」
話し始めた彼女は無表情で感情が読み取りづらい。
そして彼女も四人パーティを自分で申し出る。四人であるメリットってなんだ。少数精鋭……? いや人数は多い方が有利に決まっている。
「何でだ?」
ダーシュが単刀直入に質問をする。
するとジルは目を細くしてダーシュを睨み、
「は? 何でもいいでしょ」
「そうか」
ジルが汚物を見るかのような表情で返事を返したのにダーシュは全く物怖じしなかった。
この二人、強い。いろんな意味で。
「次はボクだね。やっほーニコだよ。ニコって呼んでね」
容姿と声は可憐な少女なだけにボクという一人称にはかなり違和感を感じた。
「因みにボクは〈氷〉の勇者。覚えて帰ってね」
ニコが右手の人差し指を天に向かって指すとぱらぱらと雪の結晶が落ちてきて、それが太陽の光を反射して幻想的な風景と化した。
心做しか肌寒くなった気がする。
これが勇者の力か。その場に居た全員が驚いた。
その能力にももちろん驚いてはいたが、その能力の告白にも驚いていた。
能力の開示には現時点ではほぼ意味がない。それを言うのはパーティを完全に決めてから仲間内だけに話せばいいだろう。
「次どうぞー」
ニコが雪の結晶を作りながら自己紹介を進める。
「はい。僕はカミル・ドラシルです。以後お見知りおきを」
カミルは羽根つきの帽子を被っており濃緑色のローブを着ていた。
身長はレンより少し高く、170cm後半くらいだろう。
「えっそれだけー?」
ニコが他に何かを喋るように催促する。
「そうですね。それでは僕はあなたとパーティを組みたいです」
「え、えぇ!? ボクはいいけどさぁ。でもでもボクお姫様とも組みたいなぁ」
ニコはそう言って目線をカミルからパトリツィアに移す。
「えっ!? わ、私ですか? そもそもまだ姫だと決まったわけじゃ」
「それじゃあ、私も姫と組みたいわ」
冷たい少女、ジルもそれに続いていった。
「俺も姫と組みたい」
そう続いていったのは意外にもぼさぼさ頭の男、ダーシュだった。
「姫~。いいでしょ~?」
「しょ、しょうがないですね。いいですよ、パーティ組みましょうか」
「やった~! ふふ~ん」
ニコは嬉しそうに姫……じゃなくてパトリツィアの片腕を掴み踊り出す。
「ちょっ、ちょっと!」
パトリツィアは困った風をしているが何やら嬉しそうだ。
「いや~平和だね。ノウトくん」
「ああ、そうだな」
リアが話し掛けてきたので適当に流す。
「それでパーティの件なんだけどもう向こうも決まったみたいだしこっちも決定でいいよね」
「……ぐっ」
「いいよね」
「しょうがないな」
「やった」
リアは無邪気な笑顔を見せてみせた。
そこには何か企みがあるようには到底思えなかった。
俺は深く考えることを放棄した。
そこで一つあることを忘れているのに気付いた。
「私が残っちゃいましたね……」
そう、フウカが未だどのパーティにも加入していなかったのだ。
あと一人枠があるのはミカエル、カンナ、スクード、エヴァのパーティ。それにノウト、リア、レン、シャルロットのパーティだ。
そのどちらにフウカが入るかで四人のパーティが決まってしまう。
「フウカちゃん」
ミカエルが真面目な面持ちで語り掛ける。
「僕達はいいから、そっちに入ってあげて」
スクードはどこか不満そうな顔をしていたがしょうがない、といった面持ちでもあった。
「い、いいんですか?」
「うん、大丈夫。こっちはこの四人で頑張るよ。それに勝つ気しかしないしね」
「分かりました。そっちも頑張ってくださいね」
「おうとも!」
フウカはこちらに向き直る。
「そちらのパーティに、入れさせてください!」
「もちろん」
最初に応えたのはレンだった。
「よろしくね!」とリアが笑い、
「別に構わないわよ」とシャルロットが無愛想に言う。
「がんばろう」
俺は声を振り絞り、これから仲間になるであろうみんなの期待に応えようとした。
「楽しくなりそうですね」
そして、フウカは楽しそうに微笑んだ。
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