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第8話 ARK SOULS
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廊下を妹と肩を並べて歩いていると、見知った顔の奴が前から歩いてくるのが分かった。
そいつと俺は目が合うとお互いすぐに臨戦態勢に移行した。腰を低くして、相手の目を見据える。そいつは右眼を左手で覆い隠し、
「怠惰の使徒じゃないか。よもやこんなところで邂逅するとは......奇遇だな」
と静かに呟いた。
「《箱船の調停者》.........っ!」
俺は親を殺された仇を見るような目付きで箱船の調停者を睨み付け、親を殺された敵に向けたような口調でその真名を呼ぶ。そして、ゆっくりと口を開いた。
「.....貴様、ここで何をしている?」
「私か?我が孤独なる領域に舞い戻ろうとしているところだが」
「そうか。つまり雌雄を決する時は今ではないということだな...」
「そういうことになるな。はっはっはっ.......ところで」
彼女は自らの右眼を覆い隠した左手を俺の妹に向け直した。
「そこの小娘は何者だ?」
俺は臨戦態勢を解いて七罪を親指で指さす。
「ああ、こいつは俺の妹だ」
「そうか妹か。........って、ほぇ...?ごめん私の耳がおかしいのかな......。えっと、ベルフェゴールお前今なんて言ったんだ?」
「くっくっく......。俺に二度も言わせるとはな。まぁいいだろう。こいつは俺の妹だ」
「妹...?お前自分には妹がいないから欲しい
と何回も言っていたじゃないか!わ、私に嘘をついていたのか!?」
「決して嘘ではない。昨日できたばっかの出来たてほやほやの妹だ」
「いや言い方!初めまして妹の七罪です。兄がいつもお世話になっております」
「あ、えと、その、初めまして永淵路愛と申します。えっとお兄さんとはいつもお世話にさせて貰ってます...。あれ?なんか違うな……。お兄さんをお世話させてもらってます。......ん?...これも違う.........」
「いや普通に喋ろうとして無理しなくていいからね路愛。お世話させてもらってますは何か変な意味になってるし」
永淵路愛。
高校一年生の時に同じクラスだった同級生だ。
家が教会で小さい頃カナダにいたという帰国子女。母はカナダ人らしい。漫画やゲーム、アニメの趣味が似通っているのとぼっち仲間だったこと、あとお互いオシャレネームだったこともあり、一年の時はよくこうやって人目のない所で厨二病ごっこ、通称〈聖戦〉をしたり、漫画やアニメの話をしたりで楽しんでいた。
因みに同じ教室では全く会話することはなかった。ほら、他のやつに見られるの恥ずいじゃん?
こいつは友達、というか同志かな。路愛は俺の厨二病趣味を一回も否定したことがないし、俺も路愛の趣味を否定したことは一回もない。
言うまでもないと思うが、こいつに親は殺されてない。
「そ、そうか。ではこの口調で語らせて頂こう。して、妹が昨日できたというのは昨日生まれたとは異義ということで合ってるか?」
「昨日生まれてこの姿は怖いだろ。義理の妹だよ。家庭事情で何やかんやあってな」
「な、なんだと...?義理の妹......?そんなものフィクションの中だけの産物だと思っていたがな。お前のパラノイアが生み出した擬似生命体なのではないか?」
「発音良すぎかよ。現実は小説よりも奇なりって言葉あるだろ?」
「まったく納得出来ない。そんなことが有っていいのか...?ナツミとやら、洗脳の類を施されてる訳ではあるまいな?」
「いやいやされてないですよ!お兄さんの信頼度どうなってるんですか!列記とした妹ですよ」
「ふむ。しかし洗脳されたとしても洗脳されたと気づけない場合がほとんとだと言う。そいつには気を付けることだな、小娘。そいつは言うなれば妹溺愛者、いわゆるリトルシスターコンプレックス、通称シスコンだ。今までは妹のいないシスコンだったが今は妹のいるシスコンと化してしまったそいつに何をされるか分からないぞ」
「安心しろ、路愛。既にこいつと俺は相思相愛の仲だ。許嫁といっても過言ではない」
「なっ.........」
路愛は漫画とかでよく見る全力で驚いたような姿勢になる。上半身を仰け反らしたような格好だ。
「だからいつお兄さんと私が相思相愛になったと言ってるんですか!馬鹿なんですか!?」
「お前が俺に大好きって言ってたじゃないか......」
「いやあれはあなたを幸せにするために言っただけで」
「大好き.........!?あなた......!?.........幸せ......っ!?」
「ほら永淵先輩すっごい誤解してるじゃないですか!これ以上話がこじれるの嫌なのでお兄さんはもう口を開かないでください!!」
路愛は片眼を隠しながら再度話し始める。
「わ、我が魂の盟友よ......お前はいつか、私のか、か、傀儡にしてやるぞ......。《箱舟の調停者》たる私が〈終焉を告げる終戦〉の刻を迎えたその時に必ずな......ッ!」
「くっくっく。そんなに悠長にしていていいのか?その時には、俺は更に強大な力を手に入れているぞ?」
「...べ、別に力を手に入れたって......いいもん.....」
「もん?」
「.....もう帰る」
路愛が背を向けてすたすたと歩いていく。
「お、おいどうしたんだ。キャラ崩壊してるぞ」
俺はその背に向けて手を伸ばしたが、既に廊下の角を曲がり、その背中は見えなくなってしまった。
「突然あいつどうしたんだ?」
「メンタルに限界が来たんでしょうね...」
「なるほど。妹が出来たことでぼっちから脱却した俺にショックを受けたって訳か」
「......お兄さん、妹以外のことにも目を向けてみてはいかがでしょうか?」
「いや俺これでも観察眼には自信があるんだけど」
「知ってますけど......まぁ、いいです。意外と隅に置けない人なんですから」
キーンコーンカーンコーン。
昼休みの終焉を告げるラッパ......じゃなくてチャイムが学校全体に鳴り響いた。
「送って貰ったら間に合わないのでここでお別れですね」
「いやまだ間に合う...っ。もっとお前と一緒にいたいから送ってくよ」
俺は七罪の手を引いて、廊下を早足で駆けた。
「え、えぇ!?......お兄さん、シスコンですね、ほんと」
「まぁな」
「いやそんな自信ありげに言われましても」
七罪が小さく溜息を吐く。
にしても路愛のやつ、何か涙目だったな。今日漫画の話出来なかったからかな。多分そうだ、そうに違いない。
仕方ない、また今度会ったらちゃんと話すか。
握りしめた七罪の手は柔らかく、温かった。
妹、めっちゃ可愛い。
そいつと俺は目が合うとお互いすぐに臨戦態勢に移行した。腰を低くして、相手の目を見据える。そいつは右眼を左手で覆い隠し、
「怠惰の使徒じゃないか。よもやこんなところで邂逅するとは......奇遇だな」
と静かに呟いた。
「《箱船の調停者》.........っ!」
俺は親を殺された仇を見るような目付きで箱船の調停者を睨み付け、親を殺された敵に向けたような口調でその真名を呼ぶ。そして、ゆっくりと口を開いた。
「.....貴様、ここで何をしている?」
「私か?我が孤独なる領域に舞い戻ろうとしているところだが」
「そうか。つまり雌雄を決する時は今ではないということだな...」
「そういうことになるな。はっはっはっ.......ところで」
彼女は自らの右眼を覆い隠した左手を俺の妹に向け直した。
「そこの小娘は何者だ?」
俺は臨戦態勢を解いて七罪を親指で指さす。
「ああ、こいつは俺の妹だ」
「そうか妹か。........って、ほぇ...?ごめん私の耳がおかしいのかな......。えっと、ベルフェゴールお前今なんて言ったんだ?」
「くっくっく......。俺に二度も言わせるとはな。まぁいいだろう。こいつは俺の妹だ」
「妹...?お前自分には妹がいないから欲しい
と何回も言っていたじゃないか!わ、私に嘘をついていたのか!?」
「決して嘘ではない。昨日できたばっかの出来たてほやほやの妹だ」
「いや言い方!初めまして妹の七罪です。兄がいつもお世話になっております」
「あ、えと、その、初めまして永淵路愛と申します。えっとお兄さんとはいつもお世話にさせて貰ってます...。あれ?なんか違うな……。お兄さんをお世話させてもらってます。......ん?...これも違う.........」
「いや普通に喋ろうとして無理しなくていいからね路愛。お世話させてもらってますは何か変な意味になってるし」
永淵路愛。
高校一年生の時に同じクラスだった同級生だ。
家が教会で小さい頃カナダにいたという帰国子女。母はカナダ人らしい。漫画やゲーム、アニメの趣味が似通っているのとぼっち仲間だったこと、あとお互いオシャレネームだったこともあり、一年の時はよくこうやって人目のない所で厨二病ごっこ、通称〈聖戦〉をしたり、漫画やアニメの話をしたりで楽しんでいた。
因みに同じ教室では全く会話することはなかった。ほら、他のやつに見られるの恥ずいじゃん?
こいつは友達、というか同志かな。路愛は俺の厨二病趣味を一回も否定したことがないし、俺も路愛の趣味を否定したことは一回もない。
言うまでもないと思うが、こいつに親は殺されてない。
「そ、そうか。ではこの口調で語らせて頂こう。して、妹が昨日できたというのは昨日生まれたとは異義ということで合ってるか?」
「昨日生まれてこの姿は怖いだろ。義理の妹だよ。家庭事情で何やかんやあってな」
「な、なんだと...?義理の妹......?そんなものフィクションの中だけの産物だと思っていたがな。お前のパラノイアが生み出した擬似生命体なのではないか?」
「発音良すぎかよ。現実は小説よりも奇なりって言葉あるだろ?」
「まったく納得出来ない。そんなことが有っていいのか...?ナツミとやら、洗脳の類を施されてる訳ではあるまいな?」
「いやいやされてないですよ!お兄さんの信頼度どうなってるんですか!列記とした妹ですよ」
「ふむ。しかし洗脳されたとしても洗脳されたと気づけない場合がほとんとだと言う。そいつには気を付けることだな、小娘。そいつは言うなれば妹溺愛者、いわゆるリトルシスターコンプレックス、通称シスコンだ。今までは妹のいないシスコンだったが今は妹のいるシスコンと化してしまったそいつに何をされるか分からないぞ」
「安心しろ、路愛。既にこいつと俺は相思相愛の仲だ。許嫁といっても過言ではない」
「なっ.........」
路愛は漫画とかでよく見る全力で驚いたような姿勢になる。上半身を仰け反らしたような格好だ。
「だからいつお兄さんと私が相思相愛になったと言ってるんですか!馬鹿なんですか!?」
「お前が俺に大好きって言ってたじゃないか......」
「いやあれはあなたを幸せにするために言っただけで」
「大好き.........!?あなた......!?.........幸せ......っ!?」
「ほら永淵先輩すっごい誤解してるじゃないですか!これ以上話がこじれるの嫌なのでお兄さんはもう口を開かないでください!!」
路愛は片眼を隠しながら再度話し始める。
「わ、我が魂の盟友よ......お前はいつか、私のか、か、傀儡にしてやるぞ......。《箱舟の調停者》たる私が〈終焉を告げる終戦〉の刻を迎えたその時に必ずな......ッ!」
「くっくっく。そんなに悠長にしていていいのか?その時には、俺は更に強大な力を手に入れているぞ?」
「...べ、別に力を手に入れたって......いいもん.....」
「もん?」
「.....もう帰る」
路愛が背を向けてすたすたと歩いていく。
「お、おいどうしたんだ。キャラ崩壊してるぞ」
俺はその背に向けて手を伸ばしたが、既に廊下の角を曲がり、その背中は見えなくなってしまった。
「突然あいつどうしたんだ?」
「メンタルに限界が来たんでしょうね...」
「なるほど。妹が出来たことでぼっちから脱却した俺にショックを受けたって訳か」
「......お兄さん、妹以外のことにも目を向けてみてはいかがでしょうか?」
「いや俺これでも観察眼には自信があるんだけど」
「知ってますけど......まぁ、いいです。意外と隅に置けない人なんですから」
キーンコーンカーンコーン。
昼休みの終焉を告げるラッパ......じゃなくてチャイムが学校全体に鳴り響いた。
「送って貰ったら間に合わないのでここでお別れですね」
「いやまだ間に合う...っ。もっとお前と一緒にいたいから送ってくよ」
俺は七罪の手を引いて、廊下を早足で駆けた。
「え、えぇ!?......お兄さん、シスコンですね、ほんと」
「まぁな」
「いやそんな自信ありげに言われましても」
七罪が小さく溜息を吐く。
にしても路愛のやつ、何か涙目だったな。今日漫画の話出来なかったからかな。多分そうだ、そうに違いない。
仕方ない、また今度会ったらちゃんと話すか。
握りしめた七罪の手は柔らかく、温かった。
妹、めっちゃ可愛い。
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