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第六章 暴かれる

第4話 赦し

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「そうだったのか……」

 ミハエルは腕を組みつつ、呟いた。

「これで全部わかったぜ。お前がそうまでして皇帝を拒む理由が」

 夕日を背にした女神像の長い影がサリオンの正面にかかっている。
 一陣の風が吹き抜けて、常緑樹の葉がすれる音がした。

「同志を惨殺する施政者の子供なんて産めるはずがないわけだ」
「ミハエル様」
「おいおい。ここでは俺がサリオン様と呼ぶべき場所だぞ」
「ミサは」
「王宮に上がる前までは、潜伏しているキリシタンと司祭で行われていた。俺も通っていたんだが、なにせここはアリ一匹見逃さないといった風体の警備兵があらゆる門を固めている。外に出るには皇帝の許しが必要だろうが、護衛と称して必ず兵をつけるだろう」
「ミサを受けたい」

 サリオンは悲痛な声音で訴えながら、その場にしゃがみ込んで言う。

「告解をして赦しを請いたい」
「サリオン。アルベルトと寝たことがそれほどまでの罪なのか?」
「えっ?」

 声を一段低くしたミハエルに詰め寄られ、サリオンは泣きぬれた顔を僅かに上げた。

「イエス様は私に逆らってでも自分のするべきことをした人間ではなく、自分のするべきことをしないで私の言に従った者を罰するだろうと、仰っておられる」

 ミハエルは大きく伸びをした。

「心から慕い合う者が結ばれることをイエス様は祝福なされる。イエス様の怒りを恐れて、自分を曲げる者こそイエス様は罰するはずだ」

 肩越しに振り返り、ミハエルは微笑んだ。

「……イエス様の怒りを恐れて」
「告解なんてする必要があるかどうかを考えろ。イエス様はお前がしたことを怒ってなんておられない」

 散策路を戻るミハエルの背中が大きく見えた。
 サリオンはマリア像に見立てた女神へと目を移す。
 伏し目がちに俯き、ドレープが優美に重なるドレスをまとい、両腕を左右に開いた女神像は聖母マリアを 彷彿ほうふつとさせる造りだからだ。

 
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