283 / 297
第五章 皇帝の寵姫として
第69話 恋人のための
しおりを挟む
作業員を帰らせた後、湯あみ場で汗と埃を洗い流すと、身体を拭く布を腰に巻き、寝室へと移動した。
今朝もアルベルトを公務に向かわせるのに四苦八苦したせいか、気づかなかったが、棚の中の半数以上が絹の貫頭衣になっていた。
サリオンは丸襟にサファイヤやルビー、紫色のアメジストといった宝石を縫い付けた絹の貫頭衣を取り出した。
太もも丈で決して短くはないそれに袖を通すと、金糸で刺繍がほどこされた帯を締める。
また、絹の貫頭衣とおなじように、ふんだんに用意された宝石類にも初めて気づいた。
首には雫型のダイヤモンドをひとつだけ。
耳飾りはルビーをあわせた。
指には金にブドウ模様が彫られた指輪と艶消しの指輪をふたつ。
手首には金製の輪を数個重ね、手を動かすと、しゃらりという微かな音が聞こえるようにも設えた。
そしてサンダルは結合部分に大きなダイヤがひとつだけ。
身支度が整えば、今度は化粧だ。
鏡台には化粧道具が一式入った箱がある。
王宮に上がっても、一度も使ったことはない。
それの蓋を開けたサリオンは、まずは白粉を薄くはたいて下地を作る。
明るい金髪で色が白く、瞳の色の薄茶色の自分に派手な化粧は下品になるだけ。
まぶたにはきらきらとした金粉が混ざった茶色をのせる。
細い木炭で目の際を書いて、目の印象を強めると、薄桃色の粉で頬を色づかせ、口紅は頬に合わせてごく薄い桃色を選んでつけた。
これで今夜の支度はできた。仕上がった。
おそらく今度のヒートの最終日になる今日という日にふさわしく。
今朝もアルベルトを公務に向かわせるのに四苦八苦したせいか、気づかなかったが、棚の中の半数以上が絹の貫頭衣になっていた。
サリオンは丸襟にサファイヤやルビー、紫色のアメジストといった宝石を縫い付けた絹の貫頭衣を取り出した。
太もも丈で決して短くはないそれに袖を通すと、金糸で刺繍がほどこされた帯を締める。
また、絹の貫頭衣とおなじように、ふんだんに用意された宝石類にも初めて気づいた。
首には雫型のダイヤモンドをひとつだけ。
耳飾りはルビーをあわせた。
指には金にブドウ模様が彫られた指輪と艶消しの指輪をふたつ。
手首には金製の輪を数個重ね、手を動かすと、しゃらりという微かな音が聞こえるようにも設えた。
そしてサンダルは結合部分に大きなダイヤがひとつだけ。
身支度が整えば、今度は化粧だ。
鏡台には化粧道具が一式入った箱がある。
王宮に上がっても、一度も使ったことはない。
それの蓋を開けたサリオンは、まずは白粉を薄くはたいて下地を作る。
明るい金髪で色が白く、瞳の色の薄茶色の自分に派手な化粧は下品になるだけ。
まぶたにはきらきらとした金粉が混ざった茶色をのせる。
細い木炭で目の際を書いて、目の印象を強めると、薄桃色の粉で頬を色づかせ、口紅は頬に合わせてごく薄い桃色を選んでつけた。
これで今夜の支度はできた。仕上がった。
おそらく今度のヒートの最終日になる今日という日にふさわしく。
0
お気に入りに追加
336
あなたにおすすめの小説

国王の嫁って意外と面倒ですね。
榎本 ぬこ
BL
一国の王であり、最愛のリヴィウスと結婚したΩのレイ。
愛しい人のためなら例え側妃の方から疎まれようと頑張ると決めていたのですが、そろそろ我慢の限界です。
他に自分だけを愛してくれる人を見つけようと思います。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

被虐趣味のオメガはドSなアルファ様にいじめられたい。
かとらり。
BL
セシリオ・ド・ジューンはこの国で一番尊いとされる公爵家の末っ子だ。
オメガなのもあり、蝶よ花よと育てられ、何不自由なく育ったセシリオには悩みがあった。
それは……重度の被虐趣味だ。
虐げられたい、手ひどく抱かれたい…そう思うのに、自分の身分が高いのといつのまにかついてしまった高潔なイメージのせいで、被虐心を満たすことができない。
だれか、だれか僕を虐げてくれるドSはいないの…?
そう悩んでいたある日、セシリオは学舎の隅で見つけてしまった。
ご主人様と呼ぶべき、最高のドSを…
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる