260 / 297
第五章 皇帝の寵姫として
第46話 目を盗む
しおりを挟む
「どうもあの皇帝はお前のことになると正気を失うらしい」
夕食の卓にはミハエルを招き、レナが後宮に入ったいきさつを打ちあけた。
誰かに訴えずにはいられない。
そうでもなければレナのあの挑発的な眼差しが脳裏に蘇り、こみあげる腹立たしさで発狂しそうになる気がした。
レナを後宮に入れてやって欲しいと再三に渡り、訴えたのは自分自身だ。
それだけは認めている。
だが、あの顔つきのレナに対しての憐憫の情は無に等しい。
「後宮に入ったレナには自由に会える皇帝だからこそ、お前の不安をかりたてることになるってことに思いいたらないほど色ボケしてるのか」
ミハエルは猪の炭火焼きに優雅な所作でナイフを入れ、フォークで刺すと口に入れた。
「アルベルトは、これで俺が頼んだことはすべて叶えてくれた。レナの後宮入りも果たしてくれた。それなのに、こんなに動揺している自分が自分で嫌になる」
空にしたグラスに給仕がワインを注ぎ足した。
「おい。そんなに飲むと」
「飲まずにいられるか」
サリオンはワインを浴びるように飲みながら、茹でたエビの殻を剥く。
それを口に放り込むと、汚れた指先を洗うための水鉢を給仕の下男に差し出される。
薔薇の花びらを浮かべた水に指を洗うと、跪いた下男に絹の手拭きでぬぐわれる。
こんな驕慢な食事の作法にも、今夜は気遅れしなかった。
皇妃は自分だ。
それなのに。
「俺はレナに対してはアルベルトの言葉通りに受けとるべきだと思うけど」
ミハエルも最上級のワインをたしなんだ。
「公娼に残してきたレナの身を案じるより、目の届く場所に連れてきたほうが、結果的にはお前の負担は軽くなる。お前の目の届かないところでレナと寝たとしても、レナが皇帝の子供を孕めば言い訳も立たない訳だしな」
ベッドを別々にしている間、欲情したアルベルトがレナを抱かないとは限らない。
約束なんてものは信じない。
夕食の卓にはミハエルを招き、レナが後宮に入ったいきさつを打ちあけた。
誰かに訴えずにはいられない。
そうでもなければレナのあの挑発的な眼差しが脳裏に蘇り、こみあげる腹立たしさで発狂しそうになる気がした。
レナを後宮に入れてやって欲しいと再三に渡り、訴えたのは自分自身だ。
それだけは認めている。
だが、あの顔つきのレナに対しての憐憫の情は無に等しい。
「後宮に入ったレナには自由に会える皇帝だからこそ、お前の不安をかりたてることになるってことに思いいたらないほど色ボケしてるのか」
ミハエルは猪の炭火焼きに優雅な所作でナイフを入れ、フォークで刺すと口に入れた。
「アルベルトは、これで俺が頼んだことはすべて叶えてくれた。レナの後宮入りも果たしてくれた。それなのに、こんなに動揺している自分が自分で嫌になる」
空にしたグラスに給仕がワインを注ぎ足した。
「おい。そんなに飲むと」
「飲まずにいられるか」
サリオンはワインを浴びるように飲みながら、茹でたエビの殻を剥く。
それを口に放り込むと、汚れた指先を洗うための水鉢を給仕の下男に差し出される。
薔薇の花びらを浮かべた水に指を洗うと、跪いた下男に絹の手拭きでぬぐわれる。
こんな驕慢な食事の作法にも、今夜は気遅れしなかった。
皇妃は自分だ。
それなのに。
「俺はレナに対してはアルベルトの言葉通りに受けとるべきだと思うけど」
ミハエルも最上級のワインをたしなんだ。
「公娼に残してきたレナの身を案じるより、目の届く場所に連れてきたほうが、結果的にはお前の負担は軽くなる。お前の目の届かないところでレナと寝たとしても、レナが皇帝の子供を孕めば言い訳も立たない訳だしな」
ベッドを別々にしている間、欲情したアルベルトがレナを抱かないとは限らない。
約束なんてものは信じない。
0
お気に入りに追加
331
あなたにおすすめの小説
俺の番が変態で狂愛過ぎる
moca
BL
御曹司鬼畜ドSなα × 容姿平凡なツンデレ無意識ドMΩの鬼畜狂愛甘々調教オメガバースストーリー!!
ほぼエロです!!気をつけてください!!
※鬼畜・お漏らし・SM・首絞め・緊縛・拘束・寸止め・尿道責め・あなる責め・玩具・浣腸・スカ表現…等有かも!!
※オメガバース作品です!苦手な方ご注意下さい⚠️
初執筆なので、誤字脱字が多々だったり、色々話がおかしかったりと変かもしれません(><)温かい目で見守ってください◀
R18禁BLゲームの主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成りました⁉
あおい夜
BL
昨日、自分の部屋で眠ったあと目を覚ましたらR18禁BLゲーム“極道は、非情で温かく”の主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成っていた!
弟は兄に溺愛されている為、嫉妬の対象に成るはずが?
僕は性奴隷だけど、御主人様が好き
泡沫の泡
BL
鬼畜ヤンデレ美青年×奴隷色黒美少年。
BL×ファンタジー。
鬼畜、SM表現等のエロスあり。
奴隷として引き取られた少年は、宰相のひとり息子である美青年、ノアにペットとして飼われることとなった。
ひょんなことからノアを愛してしまう少年。
どんな辱めを受けても健気に尽くす少年は、ノアの心を開くことができるのか……
学級委員長だったのにクラスのおまんこ係にされて人権がなくなりました
ごみでこくん
BL
クラスに一人おまんこ係を置くことが法律で義務化された世界線。真面目でプライドの高い学級委員長の高瀬くんが転校生の丹羽くんによっておまんこ係堕ちさせられてエッチな目に遭う主人公総受けラブコメディです。(愛はめちゃくちゃある)
※主人公総受け
※常識改変
※♡喘ぎ、隠語、下品
※なんでも許せる方向け
pixivにて連載中。順次こちらに転載します。
pixivでは全11話(40万文字over)公開中。
表紙ロゴ:おいもさんよりいただきました。
βの僕、激強αのせいでΩにされた話
ずー子
BL
オメガバース。BL。主人公君はβ→Ω。
αに言い寄られるがβなので相手にせず、Ωの優等生に片想いをしている。それがαにバレて色々あってΩになっちゃう話です。
β(Ω)視点→α視点。アレな感じですが、ちゃんとラブラブエッチです。
他の小説サイトにも登録してます。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる