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第四章 逆転
第24話 レナの返事
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「……レナは」
サリオンは下唇を震わせた。恐かったのだ、何もかも。
「俺が一人で部屋に入った瞬間、レナは何かを悟ったような顔をした」
アルベルトは伏し目がちになりながら、それでも腹から声を出す。
後ろ手に自分で閉じた扉に背中を預けて立つ彼は、憔悴していた。
床入り前には饗宴がある。
皇帝が待つ饗宴の間に先導するため、レナの部屋に入るのは、廻しの奴隷でなければならない。
「レナは出入り口の正面の肘掛け椅子に座っていた。俺を見て、腰を少し浮かせていた」
そしてすぐに座り直し、顔を背けていたと言う。
声もなく、瞬きだけを繰り返し、胸を上下に喘がせる。そんなレナが鮮明に脳裏に浮かんでいた。
「俺は、今夜サリオンを王宮に連れ帰る。半年生活を共にして、それでも世継ぎに恵まれなければ、レナを皇妃に迎えたい。その為にも後宮に入ってくれと頼んでみた」
「それでレナは……」
「わかりましたと、言ってくれたよ」
サリオンの、言葉尻を捕らえるようにして答えるアルベルトにも、 自責の色が濃く浮かぶ。
本来ならば、相手はたかが自国の公娼男娼だ。
皇帝が心を痛める責務はない。
それなのにという言葉の後に続く言葉を見出せず、サリオンは息を凝らして彼を見た。
開け放たれた窓から夜風が入り込む。
それは庭の樹木の香りをはらみ、サリオンの艶めく金髪を柔らかに撫で、金の燭台の炎を揺らした。
アルベルトは、テーブルに並べられた手つかずの料理とワインに視線を移すと溜息をつき、壁際で控える下男に全てを下げるように言う。
彼等は眉ひとつ動かすことなく粛々と任務を遂行した。
ワインの瓶を抱えた男が最後に部屋を出て行くと、部屋には誰もいなくなる。
アルベルトにより、二人きりにさせられた。
サリオンは下唇を震わせた。恐かったのだ、何もかも。
「俺が一人で部屋に入った瞬間、レナは何かを悟ったような顔をした」
アルベルトは伏し目がちになりながら、それでも腹から声を出す。
後ろ手に自分で閉じた扉に背中を預けて立つ彼は、憔悴していた。
床入り前には饗宴がある。
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「レナは出入り口の正面の肘掛け椅子に座っていた。俺を見て、腰を少し浮かせていた」
そしてすぐに座り直し、顔を背けていたと言う。
声もなく、瞬きだけを繰り返し、胸を上下に喘がせる。そんなレナが鮮明に脳裏に浮かんでいた。
「俺は、今夜サリオンを王宮に連れ帰る。半年生活を共にして、それでも世継ぎに恵まれなければ、レナを皇妃に迎えたい。その為にも後宮に入ってくれと頼んでみた」
「それでレナは……」
「わかりましたと、言ってくれたよ」
サリオンの、言葉尻を捕らえるようにして答えるアルベルトにも、 自責の色が濃く浮かぶ。
本来ならば、相手はたかが自国の公娼男娼だ。
皇帝が心を痛める責務はない。
それなのにという言葉の後に続く言葉を見出せず、サリオンは息を凝らして彼を見た。
開け放たれた窓から夜風が入り込む。
それは庭の樹木の香りをはらみ、サリオンの艶めく金髪を柔らかに撫で、金の燭台の炎を揺らした。
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彼等は眉ひとつ動かすことなく粛々と任務を遂行した。
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