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第三章 争奪戦
第56話 レナの処分
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「陛下。宴席を御用意致しますので、南館へ御進み下さい。御案内致します」
アルベルトが、こんな卑しい好奇の視線に晒されるなんて許せない。
その原因の一端が、自分自身であるのであれば尚更だ。
サリオンはアルベルトを先導しようとしかけたが、それを制してアルベルトが言う。
「今夜は帰る」
激情を押し殺そうとするような、平坦すぎる声だった。
「陛下」
「俺が会いたかったのは、お前だけだ。レナじゃない」
目を尖らせて言い放ち、身を翻したアルベルトが、あっという間に遠ざかる。
正面玄関の両脇には、武装した門番が立っている。
そしてアルベルトの護衛兵も待っていた。
アルベルトは鎧をまとった屈強な護衛兵を従えつつ、石畳みの路地に繋がる階段を駆け下り、用意された馬車に乗り込む。
声も出せずに見送るしかないサリオンを、振り返ろうともしなかった。
ダビデに子供ができたとしても、レナとは寝ない。
アルベルトの真っ直ぐに伸びた背筋が無言で、お前だけだと語っていた。
棒杭のように突っ立って、走り去る馬車の音を聞いていると、いつのまにか館の主人が真横にいた。
「オリバーは、たった一回寝ただけで、提督の御子を孕んだのに、レナは一体、いつになったら陛下の御子を産めるんだ?」
ついにはレナを買うことすらもしないまま、帰ってしまったアルベルトに、館の主人は眉間に深い皺を寄せ、聞こえよがしに嘆息した。
側付きでもある廻しにも、責任があるとでも言いたげに、じろりと横目で睨んでくる。
「申し訳ございません……」
項垂れたサリオンは、小声で詫びた。
アルベルトはレナの寝所に入っても、一度も床入りしていない。
それを知るのは、レナと自分とアルベルトと、そしてアルベルトの側近中の側近に限られる。
公娼で、皇帝の子を授かるオメガはいないのだ。
「役立たずのオメガを昼三に据えて置いても仕方がない。このまま誰の子供も孕まなかったら、売り飛ばしてやるからな。レナにもそう言え。最高位の昼三で、ふんぞり返って贅沢三昧したければ、子供を孕んでオメガの勤めを、さっさと果たせ」
血走った目をしてサリオンの胸を数回指で叩いてから、館の主人が憤然として去って行く。
アルベルトが、こんな卑しい好奇の視線に晒されるなんて許せない。
その原因の一端が、自分自身であるのであれば尚更だ。
サリオンはアルベルトを先導しようとしかけたが、それを制してアルベルトが言う。
「今夜は帰る」
激情を押し殺そうとするような、平坦すぎる声だった。
「陛下」
「俺が会いたかったのは、お前だけだ。レナじゃない」
目を尖らせて言い放ち、身を翻したアルベルトが、あっという間に遠ざかる。
正面玄関の両脇には、武装した門番が立っている。
そしてアルベルトの護衛兵も待っていた。
アルベルトは鎧をまとった屈強な護衛兵を従えつつ、石畳みの路地に繋がる階段を駆け下り、用意された馬車に乗り込む。
声も出せずに見送るしかないサリオンを、振り返ろうともしなかった。
ダビデに子供ができたとしても、レナとは寝ない。
アルベルトの真っ直ぐに伸びた背筋が無言で、お前だけだと語っていた。
棒杭のように突っ立って、走り去る馬車の音を聞いていると、いつのまにか館の主人が真横にいた。
「オリバーは、たった一回寝ただけで、提督の御子を孕んだのに、レナは一体、いつになったら陛下の御子を産めるんだ?」
ついにはレナを買うことすらもしないまま、帰ってしまったアルベルトに、館の主人は眉間に深い皺を寄せ、聞こえよがしに嘆息した。
側付きでもある廻しにも、責任があるとでも言いたげに、じろりと横目で睨んでくる。
「申し訳ございません……」
項垂れたサリオンは、小声で詫びた。
アルベルトはレナの寝所に入っても、一度も床入りしていない。
それを知るのは、レナと自分とアルベルトと、そしてアルベルトの側近中の側近に限られる。
公娼で、皇帝の子を授かるオメガはいないのだ。
「役立たずのオメガを昼三に据えて置いても仕方がない。このまま誰の子供も孕まなかったら、売り飛ばしてやるからな。レナにもそう言え。最高位の昼三で、ふんぞり返って贅沢三昧したければ、子供を孕んでオメガの勤めを、さっさと果たせ」
血走った目をしてサリオンの胸を数回指で叩いてから、館の主人が憤然として去って行く。
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