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第三章 争奪戦
第47話 命の息吹
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「どんなにお前に会いたかったか……」
切なげに語尾を消え入らせ、髪にもキスを落とされた。
サリオンは漫然として顔を上げ、あがめ仰ぐように彼を見た。
視界には、見つめ返して眉根を寄せるアルベルトしか入らない。他には何も映らない。
「愛している」
アルベルトの厳かな声音の独白に、胸の芯までズシリと重く貫かれ、サリオンは涙の粒が光る睫毛を震わせる。
会う度うんざりするほど好きだと言われ、惚れたと聞かされ続けたはずなのに、心に深く染み入った。
「サリオン……」
と、あやすような声がした。アルベルトの太い指に、ぎこちなく顎に触れられる。
指先からは、微かなためらいが伝わった。
拒絶を恐れる躊躇ではなく、侵し難い聖域に踏み込もうとする前の、一瞬の逡巡のようなもの。
アルベルトはサリオンの目頭から顎まで流れた涙の筋を指の腹で拭ったあと、その指でサリオンの顎を掬すくうようにして上向ける。伏し目になった男の顔が斜めに傾き、近づいた。
サリオンは先に目を閉じた。
掴まれた肩を強張らせたまま目を閉じて、彼にゆだねる。その先を。
最初に唇に触れたのは、アルベルトのあまやかな息だった。
乾いた唇が触れた時、自分の唇もまた乾き切っていたことに気がついた。
サリオンは、寄る辺ない手をアルベルトの逞しい胸に当て、少年のような口づけを享受する。
程なく大きな掌で、頭の後ろを包み込まれ、愛おしむように撫でられた。
合わせる角度を変えるたび、唇の重なりも深まった。
発熱したような唇が艶めかしく蠢いて、サリオンの唇を食むようにして舐めて吸う。アルベルトの舌先が歯に当たり、歯列をそろりとなぞられる。
サリオンは鼻にかかった声を出し、頭を左右にふり向ける。
指の先まで痺れていた。
アルベルトの命の 息吹が身体中を駆け巡り、自分自身の輪郭が、ほどけてなくなるかのようだ。
切なげに語尾を消え入らせ、髪にもキスを落とされた。
サリオンは漫然として顔を上げ、あがめ仰ぐように彼を見た。
視界には、見つめ返して眉根を寄せるアルベルトしか入らない。他には何も映らない。
「愛している」
アルベルトの厳かな声音の独白に、胸の芯までズシリと重く貫かれ、サリオンは涙の粒が光る睫毛を震わせる。
会う度うんざりするほど好きだと言われ、惚れたと聞かされ続けたはずなのに、心に深く染み入った。
「サリオン……」
と、あやすような声がした。アルベルトの太い指に、ぎこちなく顎に触れられる。
指先からは、微かなためらいが伝わった。
拒絶を恐れる躊躇ではなく、侵し難い聖域に踏み込もうとする前の、一瞬の逡巡のようなもの。
アルベルトはサリオンの目頭から顎まで流れた涙の筋を指の腹で拭ったあと、その指でサリオンの顎を掬すくうようにして上向ける。伏し目になった男の顔が斜めに傾き、近づいた。
サリオンは先に目を閉じた。
掴まれた肩を強張らせたまま目を閉じて、彼にゆだねる。その先を。
最初に唇に触れたのは、アルベルトのあまやかな息だった。
乾いた唇が触れた時、自分の唇もまた乾き切っていたことに気がついた。
サリオンは、寄る辺ない手をアルベルトの逞しい胸に当て、少年のような口づけを享受する。
程なく大きな掌で、頭の後ろを包み込まれ、愛おしむように撫でられた。
合わせる角度を変えるたび、唇の重なりも深まった。
発熱したような唇が艶めかしく蠢いて、サリオンの唇を食むようにして舐めて吸う。アルベルトの舌先が歯に当たり、歯列をそろりとなぞられる。
サリオンは鼻にかかった声を出し、頭を左右にふり向ける。
指の先まで痺れていた。
アルベルトの命の 息吹が身体中を駆け巡り、自分自身の輪郭が、ほどけてなくなるかのようだ。
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