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第三章 争奪戦
第43話 客たちの逃げ口上
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言葉が堰き止められているために、涙が代わりに出そうになり、奥歯をギュッと食いしばる。
思わず顔を背けると、気遣わしげにアルベルトが、ますます顔を寄せてきた。
噴水とベンチしかない公園を、輪のように囲む雑木林が夜風に煽られ、軽い葉音を立て始めた。
「……だって、六日も来なかったくせに」
やっと口にできたのは、恨みがましい愚痴だった。
「だから公務が詰まっていると、毎晩使者をやっただろう?」
「そんな客の逃げ口上だろ! そんなのは、嫌っていうほど聞いてるんだよ、俺達は!」
サリオンは語気を荒立てた。
「そのうち、そのうちとか言いながら、結局来なくなるんだよ!」
かつては自分も男娼だった。
売られていた。
馴染みの客に手紙を書いて送っても、断る理由に男が『仕事』を使い出したら「もう行かない」「お前に飽きた」の意味だと思えと、年季の入った男娼達から教わった。
上っ面の情夫の言葉をそのまま受け取り、信じて待っているような初心な輩は『あいつは馬鹿』だと、笑われた。
レナも同じ思いだったに違いない。
だから日に日に自暴自棄になっていた。
熱が冷めたら男達は、贔屓にしていた男娼と、最初は手紙で距離を置く。
そして手紙も間遠になり、やがてぷつりと途絶えるのだ。
期待するだけ無駄だと教えてくれたのは、年上の男娼だけでなく、情を交わした男達だ。
「他の男はそうだとしても、俺は違う」
「そんなこと言って、あんたの方こそ後宮で遊んでたんじゃないのかよ! 高い金払ってこっちに来ても、レナには触れない。他のオメガの指名もなしじゃあ、来た意味なんかないからな!」
一度口火を切ってしまうと止まらなかった。
どうして六日も放っておいたと、不埒な男の襟首を、掴んで前後に揺さぶりたかった。
厚みのある胸板を、拳で叩いて責め立てたくなる。
「なんだ。どうした? ヤキモチか?」
思わず顔を背けると、気遣わしげにアルベルトが、ますます顔を寄せてきた。
噴水とベンチしかない公園を、輪のように囲む雑木林が夜風に煽られ、軽い葉音を立て始めた。
「……だって、六日も来なかったくせに」
やっと口にできたのは、恨みがましい愚痴だった。
「だから公務が詰まっていると、毎晩使者をやっただろう?」
「そんな客の逃げ口上だろ! そんなのは、嫌っていうほど聞いてるんだよ、俺達は!」
サリオンは語気を荒立てた。
「そのうち、そのうちとか言いながら、結局来なくなるんだよ!」
かつては自分も男娼だった。
売られていた。
馴染みの客に手紙を書いて送っても、断る理由に男が『仕事』を使い出したら「もう行かない」「お前に飽きた」の意味だと思えと、年季の入った男娼達から教わった。
上っ面の情夫の言葉をそのまま受け取り、信じて待っているような初心な輩は『あいつは馬鹿』だと、笑われた。
レナも同じ思いだったに違いない。
だから日に日に自暴自棄になっていた。
熱が冷めたら男達は、贔屓にしていた男娼と、最初は手紙で距離を置く。
そして手紙も間遠になり、やがてぷつりと途絶えるのだ。
期待するだけ無駄だと教えてくれたのは、年上の男娼だけでなく、情を交わした男達だ。
「他の男はそうだとしても、俺は違う」
「そんなこと言って、あんたの方こそ後宮で遊んでたんじゃないのかよ! 高い金払ってこっちに来ても、レナには触れない。他のオメガの指名もなしじゃあ、来た意味なんかないからな!」
一度口火を切ってしまうと止まらなかった。
どうして六日も放っておいたと、不埒な男の襟首を、掴んで前後に揺さぶりたかった。
厚みのある胸板を、拳で叩いて責め立てたくなる。
「なんだ。どうした? ヤキモチか?」
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