115 / 297
第三章 争奪戦
第24話 レナの身代わり
しおりを挟む
一晩に複数の客がついた場合、直近の客の退室時間は次の客には知らされない。
房事において伽とぎが短い、長いは、考えようでは早漏早漏等々の隠語にもなる。
客の名誉を損なう意味合いに変容する。
そのため、前の客が帰った時刻は、次の客にはわからせないよう配慮する。
サリオンのように、昼三男娼の側付きは、前の客が床入りしてから退室するまで、次の客の宴席の相手をする。
その間、レナに臨時についた年長の下男が、クリストファーの退室時間に居室を訪れ、顧客を見送り、正面玄関の見番役に退室時間を報告する。
その一方で、年少の下男達は次の客を迎えるために、ベッドのリネンを取り換えたり、レナの入浴や化粧や身支度などの世話をする。
床引けした客も公娼内の浴場を用いて帰るが、下男が案内するのは客専用の浴場だ。
客は退室時間を迎えた時点で、買った男娼との接触は、冷徹なまでに奪われる。
次客を迎える準備が整うと、その旨を年長の下男が饗宴の間まで告げに来る。
後は同じ手順のくり返しだ。
饗宴が終了したら、側付きが客を部屋まで 誘って、男娼は客と床入りする。
「レナ様には、そのまま居室で待機して頂くよう伝えてくれ。デザートが運ばれて来たら、改めて呼びに行かせると」
「わかりました」
互いに囁き合った後、聡明さを匂わせる彼は従順に退室した。
サリオンは、広間に飾られた大理石の彫像の陰に回り込み、緩みかけた腰帯を締め直しながら歯噛みする。
結び目も簡単には解ほどけないほど硬くした。
イアコブがクリストファーより身分も高く、家柄も申し分ない上層階級の貴族でも、品があるとは限らない。
こんな下衆なアルファには、少しでもレナを近づけたくない。
自分が代わりを引き受ける。
サリオンは深呼吸して二、三度肩を上下させ、『廻し』の仮面を装備した。
下世話で悪趣味な客の饗宴が終了するまで、イアコブとの息詰まる攻防戦が待っている。
彫像の陰から出た時には、サリオンは柔和な微笑みを満面にたたえ、腰高テーブルの上に置かれた銀の水差しを胸に抱える。
中にはワインが並々補充されている。
房事において伽とぎが短い、長いは、考えようでは早漏早漏等々の隠語にもなる。
客の名誉を損なう意味合いに変容する。
そのため、前の客が帰った時刻は、次の客にはわからせないよう配慮する。
サリオンのように、昼三男娼の側付きは、前の客が床入りしてから退室するまで、次の客の宴席の相手をする。
その間、レナに臨時についた年長の下男が、クリストファーの退室時間に居室を訪れ、顧客を見送り、正面玄関の見番役に退室時間を報告する。
その一方で、年少の下男達は次の客を迎えるために、ベッドのリネンを取り換えたり、レナの入浴や化粧や身支度などの世話をする。
床引けした客も公娼内の浴場を用いて帰るが、下男が案内するのは客専用の浴場だ。
客は退室時間を迎えた時点で、買った男娼との接触は、冷徹なまでに奪われる。
次客を迎える準備が整うと、その旨を年長の下男が饗宴の間まで告げに来る。
後は同じ手順のくり返しだ。
饗宴が終了したら、側付きが客を部屋まで 誘って、男娼は客と床入りする。
「レナ様には、そのまま居室で待機して頂くよう伝えてくれ。デザートが運ばれて来たら、改めて呼びに行かせると」
「わかりました」
互いに囁き合った後、聡明さを匂わせる彼は従順に退室した。
サリオンは、広間に飾られた大理石の彫像の陰に回り込み、緩みかけた腰帯を締め直しながら歯噛みする。
結び目も簡単には解ほどけないほど硬くした。
イアコブがクリストファーより身分も高く、家柄も申し分ない上層階級の貴族でも、品があるとは限らない。
こんな下衆なアルファには、少しでもレナを近づけたくない。
自分が代わりを引き受ける。
サリオンは深呼吸して二、三度肩を上下させ、『廻し』の仮面を装備した。
下世話で悪趣味な客の饗宴が終了するまで、イアコブとの息詰まる攻防戦が待っている。
彫像の陰から出た時には、サリオンは柔和な微笑みを満面にたたえ、腰高テーブルの上に置かれた銀の水差しを胸に抱える。
中にはワインが並々補充されている。
0
お気に入りに追加
336
あなたにおすすめの小説
白銀の城の俺と僕
片海 鏡
BL
絶海の孤島。水の医神エンディリアムを祀る医療神殿ルエンカーナ。島全体が白銀の建物の集合体《神殿》によって形作られ、彼らの高度かつ不可思議な医療技術による治療を願う者達が日々海を渡ってやって来る。白銀の髪と紺色の目を持って生まれた子供は聖徒として神殿に召し上げられる。オメガの青年エンティーは不遇を受けながらも懸命に神殿で働いていた。ある出来事をきっかけに島を統治する皇族のαの青年シャングアと共に日々を過ごし始める。 *独自の設定ありのオメガバースです。恋愛ありきのエンティーとシャングアの成長物語です。下の話(セクハラ的なもの)は話しますが、性行為の様なものは一切ありません。マイペースな更新です。*

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
頑張って番を見つけるから友達でいさせてね
貴志葵
BL
大学生の優斗は二十歳を迎えてもまだαでもβでもΩでもない「未分化」のままだった。
しかし、ある日突然Ωと診断されてしまう。
ショックを受けつつも、Ωが平穏な生活を送るにはαと番うのが良いという情報を頼りに、優斗は番を探すことにする。
──番、と聞いて真っ先に思い浮かんだのは親友でαの霧矢だが、彼はΩが苦手で、好みのタイプは美人な女性α。うん、俺と真逆のタイプですね。
合コンや街コンなど色々試してみるが、男のΩには悲しいくらいに需要が無かった。しかも、長い間未分化だった優斗はΩ特有の儚げな可憐さもない……。
Ωになってしまった優斗を何かと気にかけてくれる霧矢と今まで通り『普通の友達』で居る為にも「早くαを探さなきゃ」と優斗は焦っていた。
【塩対応だけど受にはお砂糖多めのイケメンα大学生×ロマンチストで純情なそこそこ顔のΩ大学生】
※攻は過去に複数の女性と関係を持っています
※受が攻以外の男性と軽い性的接触をするシーンがあります(本番無し・合意)

国王の嫁って意外と面倒ですね。
榎本 ぬこ
BL
一国の王であり、最愛のリヴィウスと結婚したΩのレイ。
愛しい人のためなら例え側妃の方から疎まれようと頑張ると決めていたのですが、そろそろ我慢の限界です。
他に自分だけを愛してくれる人を見つけようと思います。

被虐趣味のオメガはドSなアルファ様にいじめられたい。
かとらり。
BL
セシリオ・ド・ジューンはこの国で一番尊いとされる公爵家の末っ子だ。
オメガなのもあり、蝶よ花よと育てられ、何不自由なく育ったセシリオには悩みがあった。
それは……重度の被虐趣味だ。
虐げられたい、手ひどく抱かれたい…そう思うのに、自分の身分が高いのといつのまにかついてしまった高潔なイメージのせいで、被虐心を満たすことができない。
だれか、だれか僕を虐げてくれるドSはいないの…?
そう悩んでいたある日、セシリオは学舎の隅で見つけてしまった。
ご主人様と呼ぶべき、最高のドSを…
イケメン幼馴染に執着されるSub
ひな
BL
normalだと思ってた俺がまさかの…
支配されたくない 俺がSubなんかじゃない
逃げたい 愛されたくない
こんなの俺じゃない。
(作品名が長いのでイケしゅーって略していただいてOKです。)

目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる