皇帝にプロポーズされても断り続ける最強オメガ

手塚エマ

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第三章 争奪戦

第3話 無言の非難

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 それでも、日が落ちれば公娼に客は来る。

 日頃レナを買いたくても、叶わずにいたアルファの王族や貴族等が、毎晩のようにレナを独占している皇帝が不在だと知ったなら、ここぞとばかりに指名するかもしれないのだ。

 放心して長椅子の背もたれに身を預け、何も言わないレナの足元に戻り、サリオンは、レナの爪染めの続きを始めた。
 小皿に入れた薄紅色の液体で絵筆を湿らせ、レナの足の爪に塗る。
 爪の染色が終わったら、足首に金の足輪飾りを何層にも重ねて付ける。足首の細さを強調し、男の劣情を煽る手管てくだのひとつだ。

 されるがままになっているレナに革のサンダルを履かせやり、サリオンは立ち上がる。


「レナ、髪をとかすから起きてくれ」


 レナを見下ろし、語気を強めて促した。
 だが、レナは視線すらも動かさない。虚空を見つめて呆けている。

 サリオンは仕方なくレナの腕を掴んで引き上げた。
 レナの体を反転させて、背中を向けさせ、長椅子の背もたれに胸を預ける形でレナを座らせる。
 まるで、あやつり人形だ。

 
 着替えは先に済ませている。客に侍はべる時に用いる、丈の短い薄絹の貫頭衣かんとうい貫頭衣だ。

 サリオンは、テーブルに置いた、底の深い陶製の器に水を差して手を洗い、化粧箱から象牙製の高価な櫛を取り出した。


 レナはもう、アルベルトにつれなくされても、廻しの奴隷に当たることはなくなった。
 こちらを責めても仕方がないと、諦めてしまっているらしい。

 その分、アルベルトへの思慕も未練も失望も、一人で抱えているようで、側で見ていて切なくなる。
 無言の非難を感じないではいられない。

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