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第三章 争奪戦
第2話 優しいはずなのに冷たいひと
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廊下側から声をかけられ、腰を上げたサリオンは、既に落胆と罪悪感が入り混じる面持ちで返事をした。
レナの足を補助椅子に乗せ掛け、化粧道具を並べたテーブルに、絵筆を置く。
ドアを開き、使いの奴隷に差し出された巻き紙を預かると、サリオンは顔を曇らせ、ドアを閉じた。
「レナ。陛下からだ」
告げる前から手で顔を覆ったレナの前に、巻き紙の書簡を差し出したのだが、レナはそれを押し退ける。
「代わりに読んで」
と、口早に言いつけられて溜息をつきかけたのだが、 それを無理やり押し留める。
巻き紙の紐を解いて広げ、目を通す。
銅製のペン先で、羊皮紙に刻まれた書簡の文面は、いつも同じで簡潔だ。
「今夜は公務で、お見えになられないそうだ。陛下はとても残念だと、仰っていらっしゃる」
「……そう」
顔から手を外したレナは、力なく項垂れたあと、高い天井を仰ぎ見る。
手紙が届いた瞬間に、大方の予測はついていた。
それでも判決は死刑だったと、知らされた直後のようだった。
昨夜、アルベルトはダビデ提督の暴挙を止めるため、レナを寝所に置き去りにして飛び出した。そして、そのままレナの元には戻らずに、公娼を後にした。
アルベルトがレナに惚れ込んでいるのなら、ダビデの暴走を制した後、レナの寝所に戻ったはずだ。
昨夜は公娼で働く者達全員に、総花という祝儀をふるまってまで、買い占めた昼三の男娼だ。
夜が明けるまで、時間は充分あったのに、アルベルトは惜しげもなく帰ってしまった。
レナ自身、それなら自分は何のために買われたのだと、思ったはずだ。
しかも、いつものように公務を理由に出されたら、今夜は来ない皇帝を、責めることすらできなくなる。
レナは天井を振り仰いだまま、悲しげに息を吐き出した。
レナを放置したことを、書簡で詫びようとも釈明しようともしない相手に、更に傷をえぐられたように、レナの美しい顔が虚ろになる。
レナの足を補助椅子に乗せ掛け、化粧道具を並べたテーブルに、絵筆を置く。
ドアを開き、使いの奴隷に差し出された巻き紙を預かると、サリオンは顔を曇らせ、ドアを閉じた。
「レナ。陛下からだ」
告げる前から手で顔を覆ったレナの前に、巻き紙の書簡を差し出したのだが、レナはそれを押し退ける。
「代わりに読んで」
と、口早に言いつけられて溜息をつきかけたのだが、 それを無理やり押し留める。
巻き紙の紐を解いて広げ、目を通す。
銅製のペン先で、羊皮紙に刻まれた書簡の文面は、いつも同じで簡潔だ。
「今夜は公務で、お見えになられないそうだ。陛下はとても残念だと、仰っていらっしゃる」
「……そう」
顔から手を外したレナは、力なく項垂れたあと、高い天井を仰ぎ見る。
手紙が届いた瞬間に、大方の予測はついていた。
それでも判決は死刑だったと、知らされた直後のようだった。
昨夜、アルベルトはダビデ提督の暴挙を止めるため、レナを寝所に置き去りにして飛び出した。そして、そのままレナの元には戻らずに、公娼を後にした。
アルベルトがレナに惚れ込んでいるのなら、ダビデの暴走を制した後、レナの寝所に戻ったはずだ。
昨夜は公娼で働く者達全員に、総花という祝儀をふるまってまで、買い占めた昼三の男娼だ。
夜が明けるまで、時間は充分あったのに、アルベルトは惜しげもなく帰ってしまった。
レナ自身、それなら自分は何のために買われたのだと、思ったはずだ。
しかも、いつものように公務を理由に出されたら、今夜は来ない皇帝を、責めることすらできなくなる。
レナは天井を振り仰いだまま、悲しげに息を吐き出した。
レナを放置したことを、書簡で詫びようとも釈明しようともしない相手に、更に傷をえぐられたように、レナの美しい顔が虚ろになる。
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