皇帝にプロポーズされても断り続ける最強オメガ

第二章 死がふたりを分かつとも

第62話 愛し合いさえすれば二人は

　王族の縁戚にあたるほどの大貴族ならば、アルファの女性を妻にして、純血統の跡継ぎを得ると同時に、番のオメガは側室にする。

　生まれた子供は庶子しょしではあるが、財産分与の権利も多少は与えられる。
　それが、クルム国の法に基づく婚姻だ。

　にもかかわらず、ユーリスは、

「私はサリオンと結婚した。法がそれを許さないなら、私は妻は娶らない」

　とまで、言ってくれた。


　クルムのアルファとオメガが番になる時も、失う時も、その意味合いが他国とは一線を画している。

　感情が深く関与する。


　番を失くしたクルムのオメガは、生殖機能を損傷するほど、心身ともに傷を受ける。
　月に一度の発情期は継続するため、アルファやベータに強姦されても、合意の上で性交しても、子供を宿すことはない。

　故国クルムでは、番を持たなかったレナは今、テオクウィントス帝国の上流階層の跡継ぎを、産むための道具であり、公的な男娼だ。

　常に妊娠できる身体にするため、強制的にフェロモンを発する身体になる経口薬を、毎朝服用するよう義務づけられる。
　レナに子供を産ませたい、上流階層のアルファやベータの性奴隷になっている。


　だからレナは、アルベルト以外の客を取る際、密かに避妊薬を用いている。
　レナはアルベルト以外の子供を宿すことすら、心の底から嫌悪し、頑なに拒み続けている。

　他国のアルファがレナに恋して性交しても、レナの方にはその気がない。
　しかも避妊薬を用いるレナに射精をしても、子を宿すのは不可能だ。

　けれど、アルベルトがレナと愛し合えば、彼の世継ぎをもうけることはレナにはできる。