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第二章 死がふたりを分かつとも

第34話 この際だから

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「この際だから、言っておく!」

 アルベルトの鋭い語勢が天井の高い廊下に響き渡り、こだました。

「この先も俺はレナを買う。だが、それはお前がレナの側付きだからだ。宴席で俺やレナの世話を焼く、お前に会いたい。それだけだ!」
「……アルベルト」
「確実にお前に会えるのは、買ったレナを はべらせた饗宴の席しか、俺にはないんだ。……他には、俺は……」

 弾かれたように振り向いたサリオンを、アルベルトが刺すような目で直視する。胸を上下に喘がせて、拳を握り締めていた。


「だからレナとは寝ていない。一度もだ。レナの居室に移った後は、寝室にレナを休ませて、俺は居間で本を読んだり、仮眠を取って帰っている。ここに来るのはレナと寝る為じゃないんだからな。レナはお前に黙っていたかもしれないが」
「それは……」

 思わずサリオンは口ごもり、瞳を激しく戦慄かせた。その言葉尻を奪うように、アルベルトが追及の矢を放つ。

「……知っていたのか?」
「いえ、……あの、それは」


 一晩レナを買い占めるくせに、饗宴の間からレナの居室に移った後は、一時間足らずで帰ってしまう。それでも公娼にある内風呂で、体を清めて去るからには、するべきことはしているのだと思っていた。

 けれど、アルベルトがレナを買うようになってから、程なくレナに泣きつかれた。


 レナがどんなに誘っても、アルベルトがレナには指一本触れようとしないこと。

 ベッドに入ろうとすらしないこと。

 俺が買った時ぐらい、ゆっくり朝まで一人寝をすればいい。そうでなくてもお前達は一年中休みなく、客を取らされているのだから、の一点張りで、口づけすらも交わさない。

 
 来館すればレナを買い占めるアルベルトだが、当然ながら来館しない夜もある。
 皇帝としての公務を優先せざるを得ない時は、アルベルトは律儀にも従者を寄越し、レナにその旨を通達する。


 そんな夜は、レナもアルベルト以外の客を取る。

 ダビデのように、『フル』理由が有り余るほどの、ろくでもない客ではないのなら、フル権限があるとはいえ、体が空いているのなら、買われてしまう身の上だ。
 だからこそ、一人寝ができる時にはゆっくりしろと、アルベルトはレナを気遣うような 体裁ていさいで、床入りしない理由にしているようだった。

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