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第二章 死がふたりを分かつとも
第22話 代用品
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「いかがなされましたか? サリオン様」
ノックしたドアを開けたのは、オリバーの側付きだ。
面食らった様子の彼に事情を話し、密かにチップを掴ませた。渡したチップの効果もあったのか、すぐに入室の許可が下りた。
「おくつろぎのところ、お邪魔致しまして申し訳ございません。オリバー様」
居室のソファでくつろぐオリバーに一礼して部屋に入り、彼の足元に 跪く。
その頃には、サリオンの汗濡れた貫頭衣が、背中にぺったり貼りついて、こめかみからは雫のように汗の粒が滴った。
「……話は聞いたよ。一応ね」
しどけなく長椅子に寝そべって、ワイングラスを片手にしたまま、オリバーが冷然とした声で言う。
気の強そうな眉は険悪にひそめられ、アイラインで囲ったように、くっきりとした双眸で、サリオンを邪険に跳ねのける。
「提督の、たってのお望みで 侍らせて頂けるのなら、喜んで受けるけれど。格下の寝所持ちに逃げられたから行くだなんて、冗談じゃない。仕方がないからお前でいいやと、言われたようなものじゃないか」
オリバーは顎をつんと反らしてごね始めた。しかし、それもサリオンには想定内の反応だ。
オリバーにも、自分は最高位の昼三だという自負がある。最初から指名を受けてもいない客の所に、足を運べと言われるのは、屈辱的に感じるだろう。
しかも今まで一度もオリバーは、提督に指名されたことがない。
にも関わらず、こんな時だけ呼び出されるのは、不愉快だという気分になるのは当然だ。
ただし、それだけに今ここで面通しができるなら、提督に自分の存在を知らしめる、絶好の機会になり得ると、オリバーは計算しているはずだった。
「昼三の方々は皆様、控えの間に出ておいでになりませんから、提督はオリバー様のお美しさを肖像画でしか、ご御存知ないだけでございます。オリバー様に会われましたら、提督もレナ様やミハエル様など眼中になくなり、きっとお気持ちを鎮めて下さることでしょう」
歯の浮くような世辞を並べ、褒めちぎり、時にはレナへの誹謗中傷も織り込んだ。
また、オリバーにもかなりの額の賄賂を握らせ、やっとのことで承諾を得た。
オリバーや下男に渡した大金は、今夜アルベルトから館で働く者達全員に振る舞われた、総花で賄まかなった。
初めから受け取るつもりはなかった金だ。
惜しいという気は微塵もない。取り急ぎ、根回しは整ったという安堵の方が勝っていた。
サリオンは、ほっと一息ついた後、オリバーの居室を辞しながら、再び顔を険しくした。
とはいえ本番はこれからだ。
提督が、損か得かで動いてくれれば、収まりはつくだろう。
けれども、ここまで騒ぎを大きくしたら、自分をフッたミハエルに、何が何でも制裁を、加えようとするかもしれない。
そうなれば、身を 挺してでもミハエルを守り通すと、サリオンは廊下を進む歩みを速める。
それが廻しの務めだからだ。
ノックしたドアを開けたのは、オリバーの側付きだ。
面食らった様子の彼に事情を話し、密かにチップを掴ませた。渡したチップの効果もあったのか、すぐに入室の許可が下りた。
「おくつろぎのところ、お邪魔致しまして申し訳ございません。オリバー様」
居室のソファでくつろぐオリバーに一礼して部屋に入り、彼の足元に 跪く。
その頃には、サリオンの汗濡れた貫頭衣が、背中にぺったり貼りついて、こめかみからは雫のように汗の粒が滴った。
「……話は聞いたよ。一応ね」
しどけなく長椅子に寝そべって、ワイングラスを片手にしたまま、オリバーが冷然とした声で言う。
気の強そうな眉は険悪にひそめられ、アイラインで囲ったように、くっきりとした双眸で、サリオンを邪険に跳ねのける。
「提督の、たってのお望みで 侍らせて頂けるのなら、喜んで受けるけれど。格下の寝所持ちに逃げられたから行くだなんて、冗談じゃない。仕方がないからお前でいいやと、言われたようなものじゃないか」
オリバーは顎をつんと反らしてごね始めた。しかし、それもサリオンには想定内の反応だ。
オリバーにも、自分は最高位の昼三だという自負がある。最初から指名を受けてもいない客の所に、足を運べと言われるのは、屈辱的に感じるだろう。
しかも今まで一度もオリバーは、提督に指名されたことがない。
にも関わらず、こんな時だけ呼び出されるのは、不愉快だという気分になるのは当然だ。
ただし、それだけに今ここで面通しができるなら、提督に自分の存在を知らしめる、絶好の機会になり得ると、オリバーは計算しているはずだった。
「昼三の方々は皆様、控えの間に出ておいでになりませんから、提督はオリバー様のお美しさを肖像画でしか、ご御存知ないだけでございます。オリバー様に会われましたら、提督もレナ様やミハエル様など眼中になくなり、きっとお気持ちを鎮めて下さることでしょう」
歯の浮くような世辞を並べ、褒めちぎり、時にはレナへの誹謗中傷も織り込んだ。
また、オリバーにもかなりの額の賄賂を握らせ、やっとのことで承諾を得た。
オリバーや下男に渡した大金は、今夜アルベルトから館で働く者達全員に振る舞われた、総花で賄まかなった。
初めから受け取るつもりはなかった金だ。
惜しいという気は微塵もない。取り急ぎ、根回しは整ったという安堵の方が勝っていた。
サリオンは、ほっと一息ついた後、オリバーの居室を辞しながら、再び顔を険しくした。
とはいえ本番はこれからだ。
提督が、損か得かで動いてくれれば、収まりはつくだろう。
けれども、ここまで騒ぎを大きくしたら、自分をフッたミハエルに、何が何でも制裁を、加えようとするかもしれない。
そうなれば、身を 挺してでもミハエルを守り通すと、サリオンは廊下を進む歩みを速める。
それが廻しの務めだからだ。
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