皇帝にプロポーズされても断り続ける最強オメガ

手塚エマ

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第一章 必ず勝てる賭け

第16話 奴隷でいいのに

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 生まれながらに強大な帝国の頂点に立ち続けている男に対して、少しは部下の気持ちや立場も考慮しろと望むのは、無理なのか。
 酷なのか。
 人生で一度も殴られたことがない者に、一方的に殴られ蹴られ、踏みにじられる屈辱を想像しろと、迫ったところで、当然無理があるように。

 ここまで相容れないなら、アルベルトからは離れたい。

 無駄に恨みを買いたくない。

 子供が産めるオメガの若い男のように、何とかして王侯貴族や皇帝の寵妃の座に収まって、贅沢がしたい、ちやほやされたいなどとは思っていない。


 自分はこの国の片隅で奴隷としての奉仕をし、人知れず朽ち果てたいだけ。
 それなのに、どうしてその唯一の願いだけは叶えてくれないのだろうと、サリオンは苛立った。


 皇帝と護衛兵の、茶番のような応酬に白け切り、憮然としているサリオンに、アルベルトが肩に両手をかけてきた。

「すまなかった……。俺の考えが浅はかだった。今夜はこのまま引き上げる。だが、お前を置いては帰れない。俺と一緒に馬車に乗ってくれ。どうせ館は王宮の目の前だ。途中でお前を降ろしてやる」

 そっぽを向いたままだったサリオンは、なだめすかすように諭されて、アルベルトを横目で窺い見た。
 男らしい眉を悩ましげに曇らせて、亜麻色の澄んだ瞳に悔恨の念をにじませながら、真摯に許しを求めている。

 こういう時には己の権威を封印し、力でこちらを思い通りにしようとしないアルベルトにサリオンは、結局、屈服せざるを得なくなる。


 そういう所も、この男は本当に たちが悪いと思ってしまう。

 憎らしいのに責め切れず、こちらが折れて諦めて、短く嘆息するしかない。

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