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第一章 必ず勝てる賭け
第2話 不在の皇位継承者
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「ダビデ提督も軍の総司令官になってからは、国の領土拡大に一番貢献している軍人だって聞いてるが、残虐非道な暴君だって噂じゃないか。気が短くて乱暴で、人を痛めつけて殺すのが、最高の娯楽だなんて言ってる男だ。オメガだって命令されれば、渋々寝るかもしれねぇが、恐くて受胎どころの話じゃねぇだろ」
「それはどうか、わからんぞ? 今はテオクウィントス帝国が、このまま滅びるかどうかの瀬戸際だ。なんといっても、この一年で、国中の女という女が死んじまった。乳飲み子までも、だ。今となってはテオクウィントス帝国で子を孕めるのは、オメガの若い男だけ。アルファの王族も貴族も軍人も、ベータの豪商達も、跡継ぎが作れねぇってんで、オメガの男を何とかして孕ませようとやっきになってる。見てくれのいい奴なんか、取り合いさ。これまでオメガの男に産ませた子供は、奴隷にしていた王族まで、生まれた子供は世継ぎにするとまで言い出したんだ。しかも、子供を生んだオメガの男もアルファ階級に格上げされるし、財産分与の権利まである正式な側室にしてもらえる。それが国策だとして、議会でも可決されたばかりだろう? 国が法律で保証してくれるってんなら、オメガの若い男達は目の色変えるだろう。たとえ相手が暴君の提督でもな。違うか? 兄ちゃん」
腰高の円卓を挟み、サリオンの正面にいた痩身の、老いた男が意味ありげに笑んでいる。
この老人も、この店で顔見知りになり、雑談ぐらいはする仲だ。
けれども、自分もその『オメガの若い男』だなどとは、明かさない。
貧民窟の立ち呑み屋で、明け方までくだをまく連中は、最下層階級のオメガかベータの貧民層のどちらかだ。
それでも見た目だけではサリオンは、ベータなのかオメガなのかはわからない。
テオクウィントス帝国のオメガは、成人しても小柄で華奢で中性的だ。
抜けるように肌が白く、瞳の色も髪も黒い。
一方のアルファやベータは、男も女も髪の色は金髪か、茶系か灰色アッシュ。
瞳の色も、薄茶や紫や青灰色など、多種多様なのだが、黒髪と黒い瞳の持ち主は、オメガだけ。
そのため、この国で生まれたオメガは一目瞭然。
階層を、偽ることは難しい。
「それはどうか、わからんぞ? 今はテオクウィントス帝国が、このまま滅びるかどうかの瀬戸際だ。なんといっても、この一年で、国中の女という女が死んじまった。乳飲み子までも、だ。今となってはテオクウィントス帝国で子を孕めるのは、オメガの若い男だけ。アルファの王族も貴族も軍人も、ベータの豪商達も、跡継ぎが作れねぇってんで、オメガの男を何とかして孕ませようとやっきになってる。見てくれのいい奴なんか、取り合いさ。これまでオメガの男に産ませた子供は、奴隷にしていた王族まで、生まれた子供は世継ぎにするとまで言い出したんだ。しかも、子供を生んだオメガの男もアルファ階級に格上げされるし、財産分与の権利まである正式な側室にしてもらえる。それが国策だとして、議会でも可決されたばかりだろう? 国が法律で保証してくれるってんなら、オメガの若い男達は目の色変えるだろう。たとえ相手が暴君の提督でもな。違うか? 兄ちゃん」
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けれども、自分もその『オメガの若い男』だなどとは、明かさない。
貧民窟の立ち呑み屋で、明け方までくだをまく連中は、最下層階級のオメガかベータの貧民層のどちらかだ。
それでも見た目だけではサリオンは、ベータなのかオメガなのかはわからない。
テオクウィントス帝国のオメガは、成人しても小柄で華奢で中性的だ。
抜けるように肌が白く、瞳の色も髪も黒い。
一方のアルファやベータは、男も女も髪の色は金髪か、茶系か灰色アッシュ。
瞳の色も、薄茶や紫や青灰色など、多種多様なのだが、黒髪と黒い瞳の持ち主は、オメガだけ。
そのため、この国で生まれたオメガは一目瞭然。
階層を、偽ることは難しい。
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