ぬしに会わねば真の闇

手塚エマ

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竹に雀は品よくとまる とめてとまらぬ恋の道

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 どの輪の中にも入れずに、身の置き所がないような心細さが根っこにあるから、どの年代の人達にも、媚びるようなことを言う。
 疎外感を和らげる。
 こんな気持ちになるぐらいなら、同年代の相方にして欲しかった。

 保存会の会長にも、そう言えば良かったと、今更ながら後悔した。


「じゃあ皆、集まったみたいだから、組みに分かれて稽古始めよか」

 保存会の演技指導部員も三名、演舞場にやって来た。
 そして、雑談していた千華達を立ち上がらせる。

 輪になっていた十名は、男女一組になって演舞場の四方に分かれ、少しだけ畏まった顔になる。
 指導部員も各組の、これまでの経験や能力に合わせて伝授する。

 千華も渉も、どちらからともなく目と目を交わして腰を上げ、演舞場の空いた場所ヘ移動した。
 指導者三名の中で、千華と渉を指導を受けるのは、おわらのベテラン、永井順子だ。

「千華ちゃんも渉君も、混合踊りは初めてなんだよね?」
 
 彼女も二十三で引退するまで、名手と謳われた踊り手だ。
 今は長唄の囃子方はやしがたとして、毎年おわらに参加する。
 今度は美声で、観客達を酔わせている。

「私は男衆の踊りも教えられるから、二人の指導は私がさせてもらうことになったのよ。本番までの二か月間、一緒に頑張っていきましょう」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「千華ちゃんも渉君も、混合踊りは初めてでも、二人とも毎年おわらは踊っているし。基本がしっかりしてるから、すぐに覚えられると思うから。大丈夫。五組の中で、いちばん良かったって言わせてやろうよ」
「ありがとうございます。頑張ります」

 他の四組は、どの演者も混合踊りを一度は踊ったことがある。
 全くの初心者は自分達だけだからなのか、永井は励ますように千華と渉の背中をばんと叩き、朗らかに笑いかけてきた。

 その時も返事をしたのは千華だけだ。
 渉は、やはり困ったような、弱ったような微笑で、ほんの少し頬を歪め、眉尻下げるに留まった。  

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