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娘盛り
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だが、渉はきゅっと膝を抱え、はにかんだ。
それは「追っかけにヤキモチやかれてキレられる」と言われた側の、優越感の笑みなのか、それとも返事に窮した愛想笑いだったのか。
渉がもともと口数が、少ないことはわかっている。
それでも、こういう冷やかしに対してぐらいは、そうだねでもいい、ヤバいなでも何でもいいから、ちゃんと肯定して欲しい。
でなければ、そんなことは起こらないという、全否定の苦笑になる。
そうであるなら、千華の面子は丸つぶれ。
千華の胸に不安の暗雲が垂れ込めた。
千華の後から合流したメンバーも、全員年下。
どうやら今年の混同踊りは、自分が最年長だったらしい。
今夜の初顔合わせで千華も初めて知ったのだが、混合踊りの五組のうち、女衆の三人は高校生。
もう一人も大学生の十九歳。
なのに自分だけが飛び抜けて年上の二十四歳。
何だか尻の座りが悪くなり、千華は笑顔を強張らせた。
とはいえ、相方になった渉には、挨拶しようと自分で自分を叱咤する。
「こんなおばちゃんが相方で、なんかごめんね。よろしくね」
千華は円陣の、少し離れた位置にいる渉に対して身を乗り出させて、微笑んだ。
「あっ、いえ……、そんな。こちらこそ」
焦ったように体育座りを正座に変えて、渉もきちんと頭を下げる。
ちょっと声をかけたぐらいでこんなにも、いちいち緊張させるのは、お互い初めての混合踊りの相方が、年上だからかもしれない。
本当は渉も、もっと気さくに話が出来る同級生か、年下の可愛い女の子良かったと、思っているのではないのかと、千華は顔色を曇らせた。
それなら別に、渉じゃなくても良かったのに。
背格好も年齢も、吊り合いの取れる男衆は、区内に他に数名いる。
なのに保存会の会長は、どうしてわざわざ渉に頼んだりしたんだろう。
無意識に口にした『おばちゃんで、ごめんね』のフレーズが、頭の中でくり返されて嫌になる。
どうしてこんな卑屈な気持ちになるのか。
二十四なんて、自分より若い人に対しても、年上の人に対しても、へりくだらないといけないような中途半端な年齢だ。
若くもなければ大人だと、言い切れるほどの経験値もない。
それは「追っかけにヤキモチやかれてキレられる」と言われた側の、優越感の笑みなのか、それとも返事に窮した愛想笑いだったのか。
渉がもともと口数が、少ないことはわかっている。
それでも、こういう冷やかしに対してぐらいは、そうだねでもいい、ヤバいなでも何でもいいから、ちゃんと肯定して欲しい。
でなければ、そんなことは起こらないという、全否定の苦笑になる。
そうであるなら、千華の面子は丸つぶれ。
千華の胸に不安の暗雲が垂れ込めた。
千華の後から合流したメンバーも、全員年下。
どうやら今年の混同踊りは、自分が最年長だったらしい。
今夜の初顔合わせで千華も初めて知ったのだが、混合踊りの五組のうち、女衆の三人は高校生。
もう一人も大学生の十九歳。
なのに自分だけが飛び抜けて年上の二十四歳。
何だか尻の座りが悪くなり、千華は笑顔を強張らせた。
とはいえ、相方になった渉には、挨拶しようと自分で自分を叱咤する。
「こんなおばちゃんが相方で、なんかごめんね。よろしくね」
千華は円陣の、少し離れた位置にいる渉に対して身を乗り出させて、微笑んだ。
「あっ、いえ……、そんな。こちらこそ」
焦ったように体育座りを正座に変えて、渉もきちんと頭を下げる。
ちょっと声をかけたぐらいでこんなにも、いちいち緊張させるのは、お互い初めての混合踊りの相方が、年上だからかもしれない。
本当は渉も、もっと気さくに話が出来る同級生か、年下の可愛い女の子良かったと、思っているのではないのかと、千華は顔色を曇らせた。
それなら別に、渉じゃなくても良かったのに。
背格好も年齢も、吊り合いの取れる男衆は、区内に他に数名いる。
なのに保存会の会長は、どうしてわざわざ渉に頼んだりしたんだろう。
無意識に口にした『おばちゃんで、ごめんね』のフレーズが、頭の中でくり返されて嫌になる。
どうしてこんな卑屈な気持ちになるのか。
二十四なんて、自分より若い人に対しても、年上の人に対しても、へりくだらないといけないような中途半端な年齢だ。
若くもなければ大人だと、言い切れるほどの経験値もない。
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