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第一章 OBEY
第十二話 異様な光景
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久藤は十手を持った下引き達に下知をした。
彼等は目顔で上役の本間に伺いを立てている。
本間は無言で顎でしゃくり、『言う通りにしろ』と、指示をした。
日頃から小生意気な蔦屋に縄をかけられないのは、癪に障って忌々しい。
しかし、水戸藩附家老家の若殿様の命とあらば、従わざるを得ないだろう。
蔦屋は捕縛の縄を解かれると、久藤の方へと肩を突かれて投げ出された。たたらを踏んでよろめく蔦屋を、久藤が胸で受け止める。
「……大丈夫ですか? 千尋さん」
縄目の跡が赤く残った手首をそっと持ち上げ、若君は気遣わしげに問いかけた。
「千尋さんに、こんなにきつく縄をしたのは誰だ、一体!」
役人達をぐるりと見渡し、切れ長の目で威嚇する。
与力の本間も 下引き達も、ギクリと肩を波打たせたが、蔦屋が声高に叱責する。
「もう、よせ。佑輔! 子供のくせに出しゃばりすぎだと、いつも言っているだろう!」
「千尋さん」
「本間の旦那も、さっさと俺をしょっぴいてくれ」
一瞬しょげて眉を下げた仔犬のような若君が、腹立たしげに背中を向けた蔦屋の後を、慌てて追って走り出す。
そんな二人に与力と下引き達が続くという、一種異様な光景を、沖田はなす術もなく見つめていた。
彼等は目顔で上役の本間に伺いを立てている。
本間は無言で顎でしゃくり、『言う通りにしろ』と、指示をした。
日頃から小生意気な蔦屋に縄をかけられないのは、癪に障って忌々しい。
しかし、水戸藩附家老家の若殿様の命とあらば、従わざるを得ないだろう。
蔦屋は捕縛の縄を解かれると、久藤の方へと肩を突かれて投げ出された。たたらを踏んでよろめく蔦屋を、久藤が胸で受け止める。
「……大丈夫ですか? 千尋さん」
縄目の跡が赤く残った手首をそっと持ち上げ、若君は気遣わしげに問いかけた。
「千尋さんに、こんなにきつく縄をしたのは誰だ、一体!」
役人達をぐるりと見渡し、切れ長の目で威嚇する。
与力の本間も 下引き達も、ギクリと肩を波打たせたが、蔦屋が声高に叱責する。
「もう、よせ。佑輔! 子供のくせに出しゃばりすぎだと、いつも言っているだろう!」
「千尋さん」
「本間の旦那も、さっさと俺をしょっぴいてくれ」
一瞬しょげて眉を下げた仔犬のような若君が、腹立たしげに背中を向けた蔦屋の後を、慌てて追って走り出す。
そんな二人に与力と下引き達が続くという、一種異様な光景を、沖田はなす術もなく見つめていた。
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